衆院に続き、参院でも少数与党となった国会では、7月の参院選で躍進を果たした参政党の動向に注目が集まっている。与野党各党は、次の衆院選も見据え、参政党に対する支持の動向にも神経をとがらせている。それは野党第1党である立憲民主党も例外ではない。立憲が参院選で厳しく対峙した自民党との距離感にも影響を与えているとの見方も出ている。立憲内から出ている「決められない政治」への懸念、そして参政党の伸長に対する危機感について、取材を通じて迫った。
躍進・参政党が88人靖国集団参拝 神谷代表「平和守る政治やりたい」
戦後80年の節目を迎えた終戦の日の8月15日、参政党は靖国神社に党として集団で参拝した。参院選で大幅に議席を伸ばし、所属の国会議員が18人となり、地方議員も合わせて88人が参加した。参拝後、記者団の取材に応じた神谷代表は、「戦後80年の節目であること、参院選で大きな期待をいただいたことから、そろって参拝しようと思った」と述べた上で、次のように平和への思いを語った。

「国のためにみんなを守るために戦い、尊い命を失った方々に感謝と追悼の気持ちを伝えた。二度と日本が戦争に巻き込まれないよう、戦争参加はさせないよう、平和を守る政治をやりたいという思いを伝えてきた」
そして、神谷氏は、靖国神社の参拝をしない石破首相に対し、「色々な外交上の問題を考えているのだと思うが、個人的な希望としては、ぜひ参拝してほしい」と求めた。
参院選は「敗北」 立憲で小沢一郎氏が執行部の責任問う
参政党は、参院選では全ての選挙区に候補者を擁立し、合わせて14議席を獲得した。比例代表での得票は、自民党、国民民主党に次ぐ約742万票に上った。
一方、立憲は改選前の22議席にとどまり、比例代表では約739万票の得票だった。前回3年前の参院選と比較すると、約62万票増やしたが、2024年の衆院選よりも400万票以上減らし、参政党に後塵を拝した。こうした参政党の躍進に対し、立憲内では危機感が高まっている。
「自公に代わる受け皿となりえなかった。敗北だ」
7月31日、野田代表と会談した党重鎮の小沢一郎衆院議員は記者会見を開き、参院選の結果についてこう振り返った。

小沢氏は参院選の総合選挙対策本部でナンバー2にあたる本部長代行の辞職願を提出したと明らかにし、「責任の一端を私も担っていると思うが、代表をはじめ執行部は大いなる責任がある」と語った。
さらに、次の衆院選での参政党や国民民主党の対応に言及し、次のように危機感をあらわにした。
「全選挙区で候補者を立ててくることは、ほぼ今の状況で判断すると間違いない。立憲民主党は選挙の強い人でも非常に難しくなる。極端に言えば全滅しかねない」
「なぜ核武装安上がり論を主張する人たちが」参戦党躍進に危機感示す野田氏
広島では原爆投下から80年となる6日、平和記念式典が開催され、石破首相のほか、与野党各党の党首らも出席した。その後、立憲の野田代表は記者団の取材に応じ、次のように語った。

「参院選中に核武装安上がり論のようなとんでもない発言が出てきた。今回の80年というのは非常にかみしめなければいけない」
そして、「平和教育を最も徹底してきているのは広島だ」とした上で、「これだけ平和教育をやってきたところでも、なぜ核武装安上がり論を主張するような人たちが評価をされるのか、国としてしっかり分析しなければいけないのではないか」と述べた。
参政党をめぐっては、参院選で「さや」の名前で立候補し、初当選を果たした塩入清香参院議員が選挙期間中に「核武装が最も安上がり」と発言して物議を醸した。一方で、比例代表では、被爆地となった広島県で、参政党が自民党に次ぐ票を獲得した。さらに、同じく被爆地の長崎県でも立憲の得票を上回った。
こうした風潮について、野田氏は、「右側のポピュリズムが強くなってきている。欧州でもそうではないか」と指摘し、次のように訴えた。
「危機感を持って、中道がもっと分厚い層になり、国として安定感が出てこなければいけない。その中核的な役割を果たすのが立憲民主党だ。しっかり自覚して頑張っていかなければいけないと改めて今思っている」
こうした野田氏の危機感が、自民党への歩み寄りとも見られる動きにつながっているとの指摘も出ている。
「対決より解決」国民民主のキャッチフレーズで自民との協議に意欲
「我々の政策を実現するためには、他党のスローガンを使っては恐縮だが、『対決より解決』のチャンスではないか」

広島での式典から2日後、野田氏は記者会見で、石破首相が立憲に接近しているように見えると問われると、国民民主党の玉木代表らが主張するキャッチフレーズを使ってこう語った。
背景には先の臨時国会で4日に開催された衆院予算委員会での野田氏と石破首相とのやりとりがある。質問に立った野田氏は石破首相に対し、「参院選で示された民意を踏まえ、これまで言ってきた政策を修正し、反省をして、与党と野党と協議をして、ある種、君主豹変してでも、比較第1党としての責任を果たしていくということがない限り、続投することは民意を無視した居座りにしか見えない」と訴えた。
そして、与野党で意見の隔たりが大きい企業・団体献金の扱いについて、「実務者だけに任せるのではなく、私と首相で膝を突き合わせて協議して合意していく作業をしていく気はないか」と提案した。これに対し、石破首相は、「そのようにさせていただきたい。第1党、第2党が党首同士で真摯な議論をすることに大きな意味がある」と応じた。
また、野田氏が消費税の減税やガソリン税の暫定税率廃止などについて、与党の対応を迫ったのに対し、石破首相は「問題点を共有したい」との考えを示した。
これについて会見で野田氏は、「今年に入って、首相とは8回論戦を交わしている。お互いの癖を知り尽くしてきた。もしかすると今回が集大成の予算委員会かもしれないと思ったので、思い切って協議できるテーマは何かを真剣に考えて主張した」とした上で、次のように語った。
「各論で言うとまだまだ違いがいっぱいあると思うが、膝を突き合わせて協議しようと、首相も覚悟を決めて応じてきたという実感は持った。問題はこれから各論だ」
野田氏は、参院選の公約でも掲げたガソリン税の暫定税率廃止や給付金、食料品の消費税ゼロなどについて、「どんな状況の中でも、実現するために最善の努力を尽くすことは必要だ」との考えを強調した。
こうした言動に対し、野田氏に近い関係者は次のような見方を示す。

「野田氏は参政党の躍進に強い危機感を持っている。衆参共に少数与党の中で、野党の出方次第では決められない政治が続く。そうなれば既存政党への失望が広がり、参政党に支持が集まる。それが日本にとって本当によいことなのかどうか。野党第1党として、責任ある態度で国民のために答えを出していかなければいけないと思っているのではないか」
一方、党内からは、「野田氏の態度は政治家としては素晴らしいと思う」とした上で、「自民党との対決姿勢を曖昧にしてしまう恐れがある。選挙対策上、不安だ。自民党と同一視され、破滅への道を進む可能性もある」と懸念する声もあがっている。
「破滅への道」ではなく、「決められる政治」に向けて、野田氏の難しい舵取りが迫られている。
(フジテレビ報道局政治部 野党担当キャップ 木村大久)