高市内閣の誕生から約1カ月、報道各社の世論調査での高い支持率を受けて、早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰され、野党の警戒感が高まっている。

次の衆院選に向けた野党間の候補者調整の必要性が指摘されるが、首相指名選挙でまとまれなかった立憲民主党と国民民主党の関係は修復できていない。両党に立ちはだかる不信感、そして今後の連携の可能性などについて取材を通じて迫った。

国民・玉木氏「100人近い擁立を」 

「参院選が終わった後に、51議席を目指すと言っている。100人近い擁立をしていかないと、51の目標にはなかなかたどりつかない。47都道府県全部に最低1人は立てる。その意味では47人は最低だ」

国民・玉木代表(18日)
国民・玉木代表(18日)
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18日の記者会見で、次の衆院選での候補者擁立について、こう語ったのは国民民主党の玉木代表だ。

FNNが10月25・26両日に実施した世論調査で、内閣支持率は75.4パーセント。高市首相就任後初めての調査で、石破内閣だった9月と比べ、内閣支持率が2倍に跳ね上がった。

こうした報道各社の高市内閣の高い支持率も念頭に、玉木氏は、「早期の解散・総選挙はありうるという前提で、候補者の擁立、そして現職も改めて地元固めをしっかりやっていかなければいけない。選挙に向けた取り組みは強化、加速化していきたい」と述べた。

立憲・野田氏「少なくとも200人近く」

一方、立憲民主党の野田代表も16日、長崎県島原市で記者団に対し、早期の解散・総選挙への警戒感を示した。

「常在戦場で行きたい。早い時期の解散を考える可能性も十分ある。緊張感を持っていなければいけない」

立憲・野田代表(長崎・島原市 16日)
立憲・野田代表(長崎・島原市 16日)

そして、次の衆院選で比較第1党を目指し、候補者擁立を急ぐ考えを強調した。

「少なくとも200人近くは自前で候補者を用意するとともに、他の友党と合わせて過半数に達する状況に持っていきたい。急ピッチでやっていきたい」

さらに野田氏は、「多党化が一定程度、定着してきている」と指摘し、「単独過半数を狙うよりは、比較第1党を取って『中道政権』を作るという具体的なイメージの方がよいのではないか」との認識も示した。

野田氏の念頭にある「中道政権」の軸になるのは、労働組合の中央組織・連合から共に支援を受ける立憲・国民両党に、自民党との連立政権を離脱した公明党を加えた3党だ。

国民・玉木氏 公明・斉藤氏 立憲・野田氏
国民・玉木氏 公明・斉藤氏 立憲・野田氏

立憲民主党の幹部は、「自民党と考え方が近い日本維新の会よりも、公明党を加えた3党を軸に中道政権を目指す方が構図として分かりやすいのではないか」と話す。

しかし、立憲・国民民主両党は、先の首相指名選挙をめぐるしこりが残っている。

国民・玉木氏は立憲と“決別宣言”か

立憲・維新・国民3党は10月15日、党首会談を開き、首相指名選挙での野党統一候補の擁立について協議。しかし、安全保障や原発などの政策に関する意見の隔たりは埋まらず、その後、維新は自民党との政策協議の進展を踏まえ、3党協議への参加打ち切りを伝えた。

立憲・維新・国民3党の党首会談(10月15日)
立憲・維新・国民3党の党首会談(10月15日)

これを受け、国民民主党の玉木氏は自身のSNSに、野党統一候補の擁立を目指した立憲との協議について、「今回、3党で『政権を担う』ことが可能なのか、真剣に考える機会を持つことができた」と投稿した。

そして、3日前に行われた3党の党首会談は「突っ込んだ議論も行い、充実した内容だった」とした上で、次のように続けた。

「同時に、今の立憲民主党と政権を共にすることはできないと確信する機会にもなった。立憲民主党には福祉政策などで優れた政策がある一方、安全保障やエネルギー政策など国家運営の基本に関わる基本政策について、埋めがたい違いがあることが改めて明らかになった」

玉木代表のSNS投稿(10月18日)
玉木代表のSNS投稿(10月18日)

さらに、「野党第一党にふさわしいリアリティーある政策へのアップデートを期待したが、『安保法制には違憲の部分がある』、『原発ゼロ』といった従来の基本政策を変えることはなかった」と振り返った。そして、玉木氏は次のように強調した。

「今後、立憲民主党とは、政策ごとの連携はあっても、政権構想を共にすることはないだろう」

国民民主党の幹部は「原発ゼロを目指す立憲とはエネルギー政策で相容れない。党の綱領を変えてもらわなければ、行動を共にすることはできない」と話す。

また、別の関係者は「首相指名選挙をめぐる3党協議をきっかけに立憲が分裂してほしかった。分裂してくれれば政界再編につながり、おのずと政権への道が見えてくる」と話す。

立憲・野田氏「永田町格言」で忠告

玉木氏の“決別宣言”とも取れる投稿から3日後の10月21日、国会では石破内閣の総辞職を受けて、衆参両院の本会議で首相指名選挙が行われた。そして、自民党の高市総裁が第104代首相に選出された。この後、野田氏は報道各社の取材に、こう語った。

第104代首相に選出された高市早苗氏(10月21日)
第104代首相に選出された高市早苗氏(10月21日)

「高市さんは、より自民党の中でも保守層を意識し、政権運営をすると思う。私は、むしろ中道を立ち位置として軸足を置いてやっていきたい」

「その違いが国会の論戦を通じて、しっかりと国民の前に示すことができるように厳しく対決していきたい」

また、野田氏は、玉木氏について「よく柔軟に対応する方なので何とも言えない」と評した上で、次のように述べた。

立憲・野田氏の玉木氏評は…
立憲・野田氏の玉木氏評は…

「我々の政策が非現実的だとは全く思っていない。あえて違いばかりを強調すると、そういうことになるかもしれないが、全力で支える覚悟を持って交渉した」

「永田町の格言で、『永田町の回転寿司は一度取り損なったら二度と回ってこない』という格言がある。そういうことにならないように気をつけてほしい」

立憲民主党の幹部は「玉木氏が本気になれば『玉木首相』が実現した可能性はある。首相になれば、主張してきた『年収の壁』の引き上げも実現できた。玉木氏には期待したが、首相を務める自信がなかったのではないか」と冷ややかな見方を示す。

また、別のベテラン議員は「7月の参院選での比例代表の得票数では、国民民主党が立憲民主党を上回った。そのため、立憲としては、玉木氏を野党統一候補に推す大義名分ができた。しかし、今後、それは難しくなるのではないか」と漏らす。

立憲・国民民主両党とも次の衆院選に向けて候補者擁立を急ぐ構えだが、選挙が終わった後に野党が再び過半数となった場合にどうなるのか。立憲が目指す中道政権の樹立に向けて「大同小異」でまとまることができるのか。その行方は依然見えてこない。

(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)

木村 大久
木村 大久

フジテレビ政治部(野党担当キャップ・防衛省担当)、元FNN北京支局