立憲民主党は7月の参院選を経て、党運営の要となる幹事長にベテランの安住淳氏を起用し、新たな執行部を発足させた。

退任した小川淳也氏はFNNの単独インタビューに応じ、幹事長就任から激動の1年を振り返り、他の野党との連携の難しさ、そして自民党との向き合い方への懸念を語った。さらに、執行部人事を前に、野田代表に直接、伝えた自らの思いの一端も明かした。

バラバラ野党に「悶絶した1年」 幹事長退任に「一兵卒として支えたい」

「少数与党かつ野党の足並みが揃えば楽だったが、野党の足並みが必ずしも揃わず、悶絶した1年だった」

FNNのインタビューで、他の野党との連携の難しさについて、こう語るのは立憲民主党の小川淳也前幹事長だ。

2024年9月立憲民主党の幹事長に就任した
2024年9月立憲民主党の幹事長に就任した
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2024年9月に就任した野田代表から幹事長に指名され、衆院、参院それぞれの選挙を戦い、目標として掲げた与党過半数割れは実現した。しかし、参院選では伸び悩み、党として「事実上の敗北と言わざるをえない」と総括し、党内からは小川氏ら執行部の刷新を求める声が上がった。

こうした声も踏まえ、立憲民主党は11日、両院議員総会を開き、新たな執行部を発足させた。幹事長には、与野党に幅広いパイプを持つ安住淳衆院予算委員長が就任し、代表代行や政調会長、新設された広報委員長には、それぞれ当選2回の若手議員が抜てきされた。

立憲民主党は幹部を大幅刷新した 9月11日
立憲民主党は幹部を大幅刷新した 9月11日

小川氏は新たな執行部の顔ぶれについて、「老・壮・青のバランスがよい」と指摘した上で、「経験と人脈において安住さんに勝る人はいない。新しい若い2人を抜てきしたことも適切な判断だった」との認識を示した。さらに、今回の執行部人事に先立ち、野田代表に対し、次のように伝えていたことを明かした。

野田氏は就任1年を前に「我々が与党になれるように、次の総選挙の暁には、まず比較第一党を目指す」と語った
野田氏は就任1年を前に「我々が与党になれるように、次の総選挙の暁には、まず比較第一党を目指す」と語った

「お盆前に、辞めたいとも続けたいとも一切言っていないが、『誰にも配慮も遠慮もいらないので、思い切ってやってください』ということだけは伝えた」

野田氏の返答について、「明らかにできない」とした上で、「あらゆることを総合的に判断されるという雰囲気を感じた」と当時を振り返った。

その小川氏に幹事長を退任して心残りはないかと尋ねると、「マネージャーとしての仕事に徹した。やるべきことはやらせていただき、心残りも悔いもない」と言い切った上で、次のように語った。

「本当によい経験、勉強をさせてもらった。課題もいっぱい抱えたが、かけがえのない1年だった。この経験を今後に生かすにあたって、まずは新体制下における党勢浮揚に、無役の一兵卒として、しっかり貢献して支えたい」

自公立3党が党首会談 「最大の路線闘争」 野党連携か自民との協調か

野田代表は19日、自民党総裁の石破首相、公明党の斉藤代表と国会内で会談し、「給付付き税額控除」の導入に向けた協議体を設置することを確認した。

「給付付き税額控除」は、消費税の負担を減らすため、高所得者以外を対象に現金給付と所得税の控除を行うもので、立憲民主党が参院選の公約に掲げ、幹事長間で、自民・公明両党と協議体を設置することで合意していた。

自民・公明・立憲のトップが会談した 9月19日
自民・公明・立憲のトップが会談した 9月19日

さらに、3党首はガソリン税の暫定税率の廃止に向けた協議を加速することも確認し、野田氏は自民党が早期に財源案を示すよう求めた。

また、会談では、企業・団体献金の規制強化についても意見が交わされ、野田氏は、これらの課題について、自民党の次の総裁にも引き継ぐよう確約を求め、石破首相も同意した。

こうした動きについて、小川氏は「政策実現に向けて努力することは大事なことだと思う」と述べた上で、次のような懸念を示した。

小川氏は野党連携か自民との協調かが岐路になると指摘した
小川氏は野党連携か自民との協調かが岐路になると指摘した

「これから野党連携を強めるのか、自民党との協調路線を取るのか、これは最大の岐路で、路線闘争だ。どちらを取ってもリスクがある。党としてのプレゼンスにつながるのか、それともかえって埋没感を高めてしまうのか、その分岐点に立っているという認識で見ている」

小川氏は「過去、自民党と連携して、党勢を伸ばして存在感を高めた政党はない」と指摘した上で、「アイデンティティーを確立してプレゼンスを高めるのは、どちらかというと、対決姿勢から生まれてくるのではないか」との見方を示した。

さらに、大連立については、「基本的にはない」と否定的な考えを示した。その理由について、参院選で躍進した参政党を念頭に次のように説明した。

「戦争、災害を除き、民主主義である以上、対立軸を用意しなければならない。立憲民主党は自民党に対する一方の軸だ。軸と軸が一緒になってしまうと、他に軸ができる。その軸はずらすべきではない」

首相指名選挙での「最大の反省点」 まずは野党統一候補の可能性模索を

立憲民主党は、衆院での与党過半数割れを受けて、「熟議と公開の国会」を掲げ、国会審議を活性化させ、政策活動費の廃止など一定の成果を上げた。小川氏はこうした成果に言及する一方で、次のように振り返った。

立憲民主党は「熟議と公開の国会」を掲げた 8月
立憲民主党は「熟議と公開の国会」を掲げた 8月

「衆院での予算の採決、そして通常国会の会期末での内閣不信任案の提出のタイミングで、党としてより強気の態度を取った場合はどうだったのか。参院選で伸びなかったことを厳しく捉えると、野党第1党として埋没しなかったのではないかという振り返りはある」

そして、内閣不信任決議案の提出などで対決姿勢を鮮明にしなかったことについて、「国際情勢にも配慮しなければいけなかったし、代表の成熟した対応にはそれなりの理由があったと思う」と理解を示した上で、「参院選で伸び悩んだという結果から逆算した時に、もう一つ取りうる路線は鮮明なる対決路線、強硬路線だったのではないかという振り返りはある」と語った。

首相指名選挙では石破氏が選出された 2024年11月
首相指名選挙では石破氏が選出された 2024年11月

さらに、話題は首相指名選挙に及んだ。2024年11月の首相指名選挙では、衆院で与党が過半数を割ったため、1回目の投票では決着がつかず、決選投票で石破氏が野田氏を下し、再び首相に選出された。

その際、日本維新の会や国民民主党などの議員らは、自らの党首などに投票し、無効票は84票に上った。

これに関し、小川氏は無効票を投じた議員に対し、「猛省を促したい」と強調した上で、次の首相指名選挙に向けて次のように訴えた。

「衆院議員として首相を選ぶ役割を国民から課せられている。無効票のない首相指名選挙になることを心から強く望んでいる」

さらに、前回の首相指名選挙で、日本維新の会や国民民主党など他の野党に協力を呼びかけた際の「最大の反省点」として、次のように話を続けた。

「野田代表が『野田佳彦と書いてください』と、いきなり各党にお願いしたことに、後にベテランから注意を受け、すぐに野田代表に伝えた。各党に対して不遜な態度だったという反省がある。まずは『野党統一候補の可能性も模索したいが、いかがですか』という形で各党に呼びかけるべきだ」

そして、野党連携を重視し、党として所属議員に野田氏以外の投票を呼びかける可能性について尋ねると、「過去には自社さ方式もあれば日本新党方式もあった。色々な知恵や努力が求められる」との言及にとどめた。

前回の首相指名選挙の反省を述べた野田代表 15日 和歌山市
前回の首相指名選挙の反省を述べた野田代表 15日 和歌山市

野田代表は15日、和歌山市で記者団の取材に対し、「私の前回の反省点は『私に首相指名をお願いします』という呼びかけをした。そのやり方はやはりよくなかったのではないかと思っている」と反省の弁を述べた。

そして、「もっと虚心坦懐に、『どうやって首相指名選挙に臨みますか』というところから協議すべきではないか」とした上で、「虚心坦懐に他党と協議をしていきたい」と強調した。

立憲民主党は、自民党の総裁選後に行われる首相指名選挙で、他の野党からの協力の取り付けを目指している。しかし、前回、無効票を投じた日本維新の会や国民民主党は、憲法や外交、安全保障などの基本政策で一致していないとして、協力には消極的な姿勢を示している。野党第1党として政権交代を目指す立憲民主党の虚心坦懐に協議に臨む姿勢が功を奏するのか、難しい模索が続いている。

【執筆:フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久】 

木村 大久
木村 大久

フジテレビ政治部(野党担当キャップ・防衛省担当)、元FNN北京支局