クマの調査に同行 富山市有峰地域

毎日のように目撃があるクマとの付き合い方について考える。
立山カルデラ地域の哺乳類を研究している、立山カルデラ砂防博物館の白石俊明学芸員をゲストに招き、解説してもらう。

この記事の画像(24枚)

今年は、クマが大好きなブナが2019年に続いて2年連続で凶作、ミズナラとコナラも全体的に不作ということで、おなかをすかせたクマが人里へ下りてくる恐れがあり、警戒が必要となっている。
木地智美気象予報士が、富山市の有峰地域で行われた白石さんの調査に同行した。

9月19日、富山市有峰の折立口の少し手前でクマの痕跡を見つけた。

白石俊明学芸員:
バキッと折って、たぐりよせて、枝先についているドングリを食べた…

白石俊明学芸員:
クマと人というのは離れた存在ではなくて、本当に隣り合わせで生活している動物ですね

その時、白石さんが指さす先に見えたのは…

木地智美 気象予報士:
ハッー!!クマだ!

白石俊明学芸員:
木に登って、ドングリを食べているのかもしれないですね

木地智美 気象予報士:
器用に細い枝に登って、落ちそうだけど上手に食べてます

白石俊明学芸員:
だいたい1歳半~2歳くらい。今年の春・夏くらいに親から離れた子グマ。まだ幼獣ですね

山のクマが食べた木の実は、フンとともにさまざまな場所に運ばれる。
フンはその種が育つ肥料にもなり、クマは森を育てる大切な役割をしている。

そして木を登っていたクマ、私たちに気が付いて木を降り始めたが…

白石俊明学芸員:
物音、分かりました?

木地智美 気象予報士:
ガサガサって…

白石俊明学芸員:
まだ隠れていたんですね、近くに…。ささやぶの中に

茂みに隠れて、なにやら一生懸命食べているような動きも…。なかなかその場を離れない。

白石俊明学芸員:
おいっ!おいっ!(追い払うしぐさ)

白石俊明学芸員:
ここはクマの生息地ですので、逃げないことは悪いことではないんですけども。ゆくゆくは、あのクマが人に慣れすぎて、偶発的な事故を起こしてしまったりとか、慣れているクマなものだから、ついえさをあげるような人と出会ってしまったりして、餌付けしてしまうことを防止するために積極的に追い払った方がいいと私は思います。遠くまで逃げていかないということは、人が怖いことを学んでいない

大胆!ボンネットから車内をのぞくクマ

2020年8月中旬、薬師岳や奥黒部方面の登山口では、多くの登山客でにぎわう有峰の折立駐車場で、人がいることを気にせずに、人間の食料を狙うクマが現れた。

大胆にも車のボンネットに乗って中をのぞき込んだり、クーラーボックスを持っていくクマも…。

現在、駐車場の周りには電気柵が張られ、「クマ注意」の看板が設置されるなど、登山客にはクマへの警戒が呼び掛けられている。

今回、白石さんは、有峰の折立駐車場すぐそばの「けもの道」に自動カメラを設置した。

白石俊明学芸員:
ササの地面に近いところ、トンネル状になっているんですけど、たぶん、けもの道なんですよね

白石俊明学芸員:
人が食事をした臭い、ごみを保管していく臭い…。そういったものに興味を持って、近づいてきてしまっているんだと思います。場合によっては、管理ができていない時にごみを盗んだり、食糧を盗んだり、という成功体験をしてしまっているので、より執着してしまっている可能性が考えられます

白石俊明学芸員:
登山者が増える時期です。一方で、今、森の中にドングリが実っている時期ですので、ドングリを食べて過ごしてくれていればいいんですけれども、その中で時々、人のものをあてにするのかどうかわからないので、確認しようと思っています

木地智美 気象予報士:
有峰のクマ出没から言えることは何ですか?

白石俊明学芸員:
富山県内においては、奥山でも山麓でも、人のことをあまり恐れない大胆な行動をするクマが非常に増えています

クマの生態を知ろう 「もしクマに遭遇したら?」

ここで、「クマの生態クイズ」。

クイズ① クマの能力で一番優れているのは?
①視覚 ②聴覚 ③嗅覚 正解は…?

白石俊明学芸員:
正解は③嗅覚です。クマの嗅覚は、犬の7倍~8倍も良いと言われています。犬自体が、人の一億倍ほど(鼻が)良いとも言われていますので、相当な能力だと思います

生ごみとか柿のにおいを嗅ぎつけたり、畑にあるコンポスト、漬物たるなどもクマを寄せてしまう原因になる。誘因物を取り除くのがポイント。

クイズ② クマが走るスピードはどれくらい?
①自転車くらい(時速15km)②ウサイン・ボルト選手くらい(時速40km)③車くらい(時速50km以上) 正解は…?

白石俊明学芸員:
正解は③自動車くらいと言われています。瞬間的には時速50kmくらいで走ることもできますし、行動圏そのものは10km、20kmと非常に広大です

木地智美 気象予報士:
里まで下りてくるのは容易?

白石俊明学芸員:
奥山のクマが山麓に来てしまうこともありますし、山麓そのもので暮らしているクマもいます

クマが身をひそめる場所をなくすために、草刈りを行ったり、対策が必要。
ただ、それでもクマに出合って、迫って来たらどうすればいいのか。

白石俊明学芸員:
その場にすばやくしゃがみ、地面に伏せる。致命傷になる首をしっかり守る

木地智美 気象予報士:
ポイントは?

白石俊明学芸員:
クマは、顔面や頭部の攻撃が多いので、まず低姿勢になります。致命傷を防ぐ首を押さえたら、ヘルメット、リュックなどがあればケガをする場所を少なくすることができます

白石俊明学芸員:
農作業のときなども、帽子をかぶるとか、荷物がなくてもリュックを背負うなどの装備をしていれば、ケガをより少なくできると思います。空であっても、体に1枚、2枚、布が足されるのでケガを少しでも減らすことに役立ちます

木地智美 気象予報士:
ある程度距離があるときは?

白石俊明学芸員:
10~20メートル距離がある場合は、クマのことをしっかり見ながら、後ずさりをして、木や電柱などの物陰に隠れることも有効だと思います。傘などを持っていたら、傘を開いて、よりこちらの体を大きく見せるアピールをして、クマが立ち去るのを促すのもおすすめです

富山県内は、どこでクマに出会っても不思議ではない。クマがいる自然豊かな森や、河原や河岸段丘の位置は変わらない。

クマとの事故も、地震や大雨といった自然災害の一部であり、「自分は大丈夫だ」と思わず、「きょうクマに出会うかもしれない」という意識、しっかりと心構えを持ってほしい。

(富山テレビ)