昔ながらのすっぱい梅干しを残したい
そこで「うめひかり」は南高梅の生産だけでなく、梅干しの製造販売や梅チューブなどの加工をして商品とする事業まで手がけている。これは珍しいことのようで、「商品までつくるのは梅農家全体の1%くらい」と山本さん。
そんな「うめひかり」がつくる梅干しは、「梅本来の味を生かしたシンプルな味」が特徴。山本さんが子供の頃から親しんできたすっぱい味だ。

山本さんを突き動かしたのは実家の梅農家を継いだ兄の言葉。「梅を栽培した後は、どの梅も甘い調味液で均一な味になる。正直、栽培にやりがいはない」という一言で、梅本来の味がする漬け方で、すっぱい梅干しを未来へと残すために励んでいる。
「メーカー含め、市場全体として天日塩とシソだけで作る梅干しは10%ほど。こうした梅干しはどんどん減ってきている」
梅農家になりたい若者のために…
山本さんは、2023年から畑を管理して3年目で農園長になれる、新規就農支援プロジェクト「梅ボーイズ」の活動をスタートさせる。
「梅干しの販売をしていたら、梅農家になりたい若者が集まってきたのですが、うちの農園は小さくて地域の農家に紹介していました。でも結局その若者たちもやめてしまって。理由は、やりたいと思っても梅農家になることは厳しく、農地も買えないから。せっかく和歌山まで移住してくれたけど、農地も高く、独立しても梅の木を植えて育つまでに7年かかる…。梅農家になるためのハードルの高さを知り、それだったらと、新規就農で農園長までなれる『梅ボーイズ』を始めました」

現在、男女7人が活動中で、「梅が大好き」「農業が好き」「日本の食を守りたい」という気持ちを持つ若者が集まっているという。
「それでも肉体労働のため耐え抜くのが大変です。草刈りも剪定(せんてい)も収穫もすべて外で行います。私自身も大変だと思うこともあります」
自然には勝てないからこそ視点を変えて
さらに、自然にはあらがえないという大変さも1次産業は持ち合わせている。
4月に和歌山で大規模なひょう被害があり、梅も大きな被害を受けた。産地全体で平年の約58%しか実が残っておらず、梅ボーイズの農園でも、残った梅の中で9割が被害に遭った。