「ガンマン」といっても西部劇で活躍する保安官やカウボーイではない。港でコンテナの積み下ろしをする「ガントリークレーン」のオペレーターのことだ。そのガントリークレーンを寸分の狂いもなく自在に操る「ガンマン」が、鹿児島県の志布志港にいる。

コンテナ貨物の取扱量は、年間約10万TEU。九州では第3位

鹿児島県大隅半島の東側、太平洋に面した志布志港。長さは約6km、国内外の海上輸送の拠点となる重要港湾に指定されている。港の周辺には畜産用の配合飼料工場が集まり飼料輸入基地としての役割も大きい。

長さ6kmにも及ぶ志布志港
長さ6kmにも及ぶ志布志港
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志布志港国際コンテナターミナルで年間に取り扱う荷物は長さ6メートルのコンテナ約10万個分。県の資料によると貨物の取扱量は、九州では博多港、北九州港に次ぐ第3位を誇る。取材に訪れた日、ゲートの前には、入場申請をするトレーラーがずらりと列を作っていた。

「ガンマン」=ガントリークレーンの「ガン」+人を意味する「マン」

特別な許可をもらって取材班が国際コンテナターミナル内に入ると、志布志東洋埠頭・現業部の松永隼人部長代理が出迎えてくれた。

早速「志布志港にガンマンがいると聞いたのですが、本当ですか?」と尋ねてみると、松永さんは「本当です、いますよ」と、左手を高く上げて指さしながら「あそこの上でクレーンのオペレーターをしているのが『ガンマン』と言って、正式には『ガントリークレーンオペレーター』と言います。」と教えてくれた。

35mの高さで活躍する「ガンマン」
35mの高さで活躍する「ガンマン」

松永さんが指した先には、赤と白でペイントされた巨大な橋のような機械がある。高さは約35メートル。これがガントリークレーンだ。

ガントリークレーンは港の荷役を効率よくするしてくれる巨大マシーン

ガントリークレーンの役割は、まず到着した船舶からコンテナをつり上げる。そのままレールを伝ってコンテナを移動させ、トレーラーに積み込む。積み込むというより、荷台にガチャッとはめこむイメージだ。さしずめコンテナ用のモノレールといったところか。ガントリークレーンは、コンテナの積み下ろし作業を短時間で効率よくしてくれる機械なのだ。

つり上げたコンテナをトレーラーに積み込むのがガンマンの仕事だ
つり上げたコンテナをトレーラーに積み込むのがガンマンの仕事だ

10階建て相当の高さ。高所恐怖症の記者は「もう無理!」と震える

いよいよ「ガンマン」の操作を見せてもらうことに。自身も「ガンマン」という松永さんに、赤い台車の中にある操縦席に案内してもらった。
階段や小型のエレベーターを使い、高さ約30メートルの場所まで移動する。実に10階建てのマンションに相当する高さだ。

小型エレベーターを上がると…
小型エレベーターを上がると…

高所恐怖症という記者は、エレベーターを降りるやいなや「どうなってるのぉ~?」と、おびえた様子。

「もう、最悪。揺れるし。」

高所恐怖症であることを改めて思い知る記者
高所恐怖症であることを改めて思い知る記者

足元の床は金網で、足がすくむ。

「わー、もう無理です!私。ここで待ってるのも嫌だけど…下りたい!」と、つい弱音が出てしまったようだ。

操縦席は足元もガラス張り!プロのガンマン「怖くはない」

それでも記者がやっとの思いで操縦席にたどり着くと、1人の男性がクレーンを操っていた。ガンマン6年目の野邊真弥さん。

操縦席の幅は、大人が2人並べるぐらいだろうか。真ん中に操縦士用の椅子があり、両サイドに操作レバーやボタン、計器類、モニターなどが配置されている。そして、左右だけでなく前方、さらには足元もガラス張りで、四方八方を確認しやすい造りになっている。

ガンマン6年目の野邊真弥さん
ガンマン6年目の野邊真弥さん

野邊さんは、「乗り始めの頃は怖かったですけど、今は慣れたので怖いというのはないですね。」と、さすがにプロ。事もなげに答えてくれた。

コンテナ1個、2分で正確に処理。でもクレーンゲームは苦手?

取材中も、野邊さんの視線は常に下だ。座ったまま上半身を前に倒し首を下方向に曲げ、目を離さない。

コンテナ1個、2分で処理する「正確さ」と「スピード」
コンテナ1個、2分で処理する「正確さ」と「スピード」

そして、地上のコンテナ側で作業をする、相棒の「デッキマン」と無線でやりとりしながら、両手でレバーを動かしている。「センサーはなくて、2つのレバーを主に使って操作します。」表情は真剣そのものだ。

相棒の「デッキマン」
相棒の「デッキマン」

目視でワイヤーをおろし、船の上にあるコンテナをつり上げる。それを、トレーラーの荷台にピッタリ当てはめるように降ろす。

コンテナは長さ6メートルあるが、安全と正確さを追求しながらコンテナ1個につき約2分でこの作業を完了させるというから驚く。寸分の狂いもない、まさにプロの仕事だ。

野邊さんのオペレーションがあまりに正確だったので、「クレーンゲームも得意ですか?」と質問してみたらじっとコンテナに注目したまま「クレーンゲームはとても苦手ですね。」と、意外な答えが返って来た。

プロの技で国内有数の畜産地帯を支えるガンマンたち

現在、志布志港には、コンテナの積みおろしを行う会社が3社ある。松永さんが勤める志布志東洋埠頭では、主に海外から畜産飼料を輸入し、その餌で育った南九州の牛、豚、鶏などを輸出している。多い時で、1日600個のコンテナを扱っているという。

プロの技で国内有数の畜産地帯を支えている
プロの技で国内有数の畜産地帯を支えている

松永さんは「ここで荷役をしないと牛、豚、畜産農家さんが生活できなくなるので、しっかり頑張って荷役をし、農家さんにエサを届けたいと思っています。」と、仕事のやりがいについて語ってくれた。

志布志港のガンマンは、きょうもプロの技で操縦かんを握り国内有数の畜産地帯を支えている。

(鹿児島テレビ)

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