大阪・関西万博の開幕から1か月、鹿児島県の志布志港と大阪南港を結ぶフェリー「さんふらわあ」の人気が高まっている。万博開幕から1か月間で前年同期より400人以上も利用客が増加した背景には、宿泊費高騰に悩む万博訪問者の"裏ワザ"があった。
ホテル代わりにフェリーで「弾丸万博」
2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博には、5月14日までの約1カ月で約338万人が訪れた。そして今、鹿児島の旅行者の間で人気を集めているのが「0泊3日」の万博ツアーだ。このツアーでは、1日目の夕方に志布志港を出発したフェリーが翌朝大阪に到着。約9時間大阪に滞在して万博を満喫した後、同日夕方の便で大阪を出発、3日目の朝、志布志港へ戻るというスケジュールだ。

「万博が始まって関西エリア、大阪は特にホテル代が高騰しているので、ホテル代をさんふらわあに置き換える形で、弾丸ツアーで気軽に行けるので増えている」と話すのは、地元の旅行会社・桜観光そよ風の東直樹部長。
仕事を終えフェリーターミナルに来た鹿屋市からのツアー参加者に聞いた。「寝ている間に(大阪に)着いて、朝から動けて、帰りも船に乗ってまた寝て帰ってこられるのが一番いい」と話す。仕事を休むのは大阪に滞在する1日だけということで、効率的な旅程が魅力になっている。
全長192mの海上ホテル「すげぇ」
志布志港と大阪南港を約15時間で結ぶさんふらわあは、2027年で就航50年を迎える歴史あるフェリーだ。全長192メートルの大型船は、まさに「動くホテル」の役割を果たしている。
妻と共に万博ツアーに参加した田中俊實さん(76)は、船内の豪華さに驚いた様子で「もう船の中?普通のホテルと一緒。すげぇ」と目を輝かせた。料金は客室のランクによって変わるが、万博の入場券付きで3万1000円からとなっている。

万博のシンボル・大屋根リングが楽しみという田中さん。食事や入浴を済ませ、寝ている間に大阪に到着だ。
万博へのアクセスも便利
「万博会場に港から地下鉄で2駅で行ける。1回乗り換えをして10分くらい。船で行ってそのまま帰る人は荷物の心配もいらないので、非常に便利」と商船三井さんふらわあ鹿児島営業所の垣内秀明所長は語る。
アクセスの良さも「さんふらわあ」で万博を訪れる魅力の一つになっている。
かつては撤退の危機も、今は万博特需
さんふらわあは過去に志布志港からの撤退が検討されたこともあった。そのため現在、志布志市や地元団体などで構成する利用促進協議会は、10人以上の団体利用の場合、1人あたり片道500円の補助を実施している(旅行会社募集のツアーを除く)。
また、鹿児島県が一部を補助し、鹿児島市内と志布志市を結ぶシャトルバスもあり、さんふらわあの利用客は無料で利用できる仕組みだ。こうした地域の支援策も、利用促進の一助となっている。

「大屋根リング」に感動
田中さん夫婦を乗せたさんふらわあが志布志に戻ってきた。万博の感想を聞くと、「とても楽しかった。天気に恵まれて船は揺れないし最高の旅になった」と田中さん。
特に印象に残ったのはやはり大屋根リングだ。「上からも下からも見た。感動した。あれはぜひみんな見てもらいたい。いいですよ」と興奮気味に話した。

妻の敦子さんも「よかった。大屋根リングをずっと歩いて足が痛くなったけど」と笑顔で振り返った。

2025年10月13日まで開催される大阪・関西万博。弾丸ツアーの利用者がどこまで増えるか注目される。「さんふらわあ」は、鹿児島と大阪を結ぶ重要な交通手段としての役割を、万博を通じて再認識されている。
(鹿児島テレビ)