1年間で殺処分された猫の数、6899匹。宮崎県内だけで300匹以上の猫が殺処分されている。こうした悲しい命をなくすため、飼い主のいない猫(野良猫)に不妊⼿術をして元の場所に戻す「TNR」という活動が広がっている。「宮崎県山間部TNR地域集中プロジェクト」では、五ヶ瀬・⾼千穂・⽇之影の3町で未⼿術の猫をゼロにすることを⽬標としている。
なぜ「TNR」が必要なのか?

「TNR」とは、「Trap=捕獲」→「Neuter=不妊手術」→「Return=元の場所へ戻す」という取り組みだ。
「TNRはかわいそう」、「野良猫は放置しておけばいいのでは?」と思う人もいるかもしれない。
なぜTNRが必要なのか…理由のひとつは猫の繁殖⼒の⾼さにある。

猫の繁殖期は年に2〜4回、交尾をすればほぼ100%妊娠し、1度に4〜8匹の⼦猫を産む。そのため、1匹のメス猫から増える猫は1年後に20匹以上、2年後には80匹以上、そして3年後には2000匹以上になるのだ。

こうして野良猫が増えることで、様々な問題が発⽣する。糞尿被害や発情期の⼤きな鳴き声、⾷べ物への被害などが苦情として保健所に寄せられ、その数は県内だけで年間2600件にも上る。
こうしたことから、繁殖を防ぐTNRはとても重要な活動とされている。
宮崎県山間部TNR地域集中プロジェクト

⻄⾅杵郡では⾃治体と愛護団体などが連携し、地域全体でTNRを進めるプロジェクトが始まった。
⾼千穂・五ヶ瀬・⽇之影の3町が合同で⾏う今回のプロジェクト。TNRを進める活動を全国で⾏っている財団法⼈「どうぶつ基⾦」が全⾯協⼒し、地域のボランティアも⼀体となって⼀⻫に不妊⼿術が⾏われる。

どうぶつ基⾦の事前調査では、3町あわせて約400匹の未⼿術の野良猫が確認された。
そのため、プロジェクトでは1ヶ⽉100匹を⽬安に⼿術を⾏い、4ヶ⽉間かけてすべての野良猫の⼿術を⾏う計画だ。

この⽇は、ボランティアの⼿により捕獲された野良猫16匹が⼿術の対象となった。

どうぶつ基⾦ ⼭本清美さん:
⽜を飼育されている農家さんで、そこの⼀⾓にいた⼦たちが増えてしまって困っているということで、今回捕獲をすることになった。こうやってたくさんの猫が⼀⻫に⼿術を受けるのは今までにないことなので、困っている⽅々のために今回どうぶつ基⾦が⼿を差し伸べてくださったこと、プロジェクトを実現していただけたことは本当にすごいことだと思っている。

増えていく猫を捕獲。

活躍する移動型手術車

今回、⼿術に使われるのは移動型の⼿術⾞両。

⿇酔から⼿術まで、すべてを⾞内で⾏える設備が備わっている。

どうぶつ基⾦病院 ⻄⾅杵 ⻑井和樹院長:
移動⼿術⾞のメリットは、動物病院が近くにない場所や高齢で動物病院まで連れて行けない場合など、こちらから出向いて⼿術ができる。
⻄⾅杵郡には野良猫の不妊⼿術を無料で⾏える施設がなく、⼿術を受けるには捕獲した猫を宮崎市まで運ぶ必要があった。しかし、猫の世話をするボランティアには⾼齢の⽅も多く、⼀度に多くの猫を捕獲し遠くまで運ぶことが難しく、不妊⼿術がなかなか進まないという現状があった。

どうぶつ基⾦ 佐上邦久理事⻑:
TNRをすすめるためには山間部にきて、丁寧な手術をしたい。宮崎県中山間部を良いケーススタディにしたいと思い、ここで皮切りさせていただいた。
五ヶ瀬・⾼千穂・⽇之影の3町はそれぞれTNR事業を予算化し、町をあげて野良猫の対策に取り組んでいる。

五ヶ瀬町 ⼩迫幸弘町⻑:
飼育放棄や世話をする人の高齢化により、きちんと猫を管理できないことで近隣トラブルに発展しそうなケースもあったので、そのようなことにも対応できる。痩せた猫がたくさんいて、その猫を“さくら猫(手術済み)”にすることで、エサやりができて、地域で幸せに暮らす姿が理想。

⻄⾅杵地区でのTNRプロジェクトは7⽉まで⾏われ、五ヶ瀬・⾼千穂・⽇之影の3町で未⼿術の猫をゼロにすることを⽬標としている。
どうぶつ基⾦によるこうした地域集中型のTNRプロジェクトは、これまで国富町と宮崎市でも⾏われ、2年間で6,676匹の不妊⼿術が⾏われた。また、みやざき動物愛護センターでも野良猫の不妊⼿術を⾏っていて、2024年度は891匹が⼿術を受けている。
(テレビ宮崎)