熊本県では公立学校の廃校件数が300校に迫り全国5位。人口減少などにより、学校の統廃合が進む中、課題となっている活用の方法を取材した。
旧河俣小学校は冷凍ピザの製造工場に
文部科学省のデータによると、2004年からの20年間における都道府県別の公立学校の廃校件数は、熊本県が282校。北海道、岩手、福島、東京に次いで全国で5番目に多くなっている。
そんな中、全国の廃校の約4分の1が地域からの要望がないことや建物の老朽化を理由に活用されておらず、課題となっている。
2013年に閉校した八代市東陽町の旧河俣小学校。現在、その校舎を活用し行われているのが冷凍ピザの製造。トーヨーの船岡寛久さんは「八代市、地域に何か恩返しができるような場所で始められたらなと思って始めました」と話す。
東陽町の第3セクターから始まった『トーヨー』は、カット野菜事業を行いながら地元野菜を使った冷凍ピザを製造している。この日、作られていたのは地元のショウガペーストを使った変わり種、その名も『しょうがネーゼ』。
印象に残る名前を意識しているそうで、そのユーモアは施設にもあり、学校の放送室を『包装室』として、衛生管理上、床を張り替えていますが、教室はほとんどそのまま活用している。
シカ肉など地元食材活用し商品開発も
そして、この春、新商品として開発されたのが『マメトーシカ』。熊本県産のシカ肉と地元八代のスナップエンドウを盛り付け、バーニャカウダ風のソースを合わせたピザ。
ソースがまろやかで、ニンニクがシカ肉と合って、いいうまみを引き出している。スナップエンドウのシャキシャキ感も残っていて、具だくさんで満足感のあるピザとなっている。
ピザのほか、トーヨーが作る地元食材を活用した商品は『KAWAMATALAB．』のホームページから購入できる。
トーヨーの船岡さんは「ジャンルにこだわるというよりは、地域のものをよりおいしい形で届けていけるような商品開発を目指してやっていきます」と話す。
旧菊水西小学校ではクルマエビの陸上養殖
一方、2020年に閉校した和水町の旧菊水西小学校では、閉校後に地元のベンチャー企業で農業用ドローンを製造・販売する有限会社『ミドリ』が学校跡地を購入した。校舎はそのまま、1階や2階では農業用ドローンの製造などを行っている。
そんな中、2024年4月からかつての中庭に設置されているのは、クルマエビの養殖プールだ。ミドリの上原泰臣社長は「熊本県ということで、県魚のクルマエビが市場性も高くて、天草で少なくなってきているという話も聞いたので、クルマエビをやってみようと思ってやりました」と話す。
熊本県水産振興課によると、天草芦北地方を中心としたここ5年間のクルマエビの年間養殖量は平均250トン。「数としては安定しているものの、およそ30年前と比べると養殖業者の数は半減している」といい、近年は赤潮被害も深刻だという。
ミドリでは、赤潮の影響を受けないように有明海から海水を運び、循環させる『完全閉鎖型』を選択。海のない和水町での陸上養殖にこの1年、取り組んできた。
しかし、建物の間で太陽光が十分に入らず、水温が思うように上がらなかったため、目標の8割ほどの大きさにしか成長しなかった。泣く泣く今シーズンの出荷は断念。もう一度、この春から育て直し、2025年11月の出荷を目指す。
ミドリの上原社長は「和水町の特産にできるくらい頑張っていけたらなと思っています」と話した。
旧月瀬小学校は半導体企業の研修施設に
各地で廃校の活用が進む中、玉名市では2018年に閉校し、長く活用が検討されていた旧月瀬小学校の売却先が先日決定した。
玉名市教育委員会・教育総務課の石貫誠哉課長は「ちょっと方向転換しようかということで、〈プロポーザル（企画競争入札）よりも企業誘致をしよう〉と商工政策課と連携し、跡地活用の事業を探した。その結果、半導体関連の事業者に関心を持ってもらえた」と話す。
台湾にも拠点を持つ韓国の半導体関連企業『ダルマエレクトロニクス』が校舎を改修し、研修施設として活用する予定で、近く立地協定が結ばれる方針。
石貫課長は「これからも学校の統合は続くので、地域の人が『学校跡地がどうなるのか』というのは一つの関心ごと。また新たな地域の活力のもとになってもらえるなら、それが一番」と話した。
熊本県の廃校282校中69校が再活用決まらず
閉校してしまっても地域のにぎわい、または活力となる場所を目指してさまざまな活用が進んでいる。
熊本県内の各教育委員会などに確認したところ、4月9日時点で69校が活用できておらず、公募などを行い活用法を模索している。
（テレビ熊本）
