浅草「グリル グランド」のオムライス
最初の1皿は「『グリル グランド』のオムライス」。1941年開店、浅草観音裏にある、東京を代表する洋食店「グリル グランド」では、グラタンやヒレステーキなど魅力的な洋食が並ぶ。
ここで学んだのが、匠の技が光るオムライス。あっという間に仕上がったチキンライスを、フライパンを返しながら卵でスピーディーに包む華麗な手さばき。

負けず嫌いの植野さんが理想の形を追い求め、4回も挑戦したという一品だ。
植野さんはこの1皿を「包む愛情と包まれる愛情。料理だけでなくお客様も幸せに包むということも含めて」と表現した。
東十条の定食店「みのや」のハムエッグ
2皿目は「『とんかつ みのや』のハムエッグ」。学生時代から通っている常連客も多い、東京・東十条の「とんかつ みのや」。豚汁付きでボリューム満点、お財布にも優しい定食が評判の店だ。
ここで学んだのが、食べると元気になるハムエッグ。小さめのフライパンに卵とハム4枚を交互に並べてから、弱火でじっくりと焼くのがポイント。

当時、「店の雰囲気や作り手の優しさが入っている。幸せになれる味」と感じた植野さんは、今回この1皿を「白身の愛情」と表現し、理由を解説する。
「焼き加減が素晴らしくて、ハムがカリカリになりすぎていない、しかも黄身が適度な半熟加減。実はハムエッグは白身料理。ハムを白身でいかに優しく包み込むかがハムエッグの美味しさにつながる。これを『みのや』さんはハムとハムを優しく包み込んだ上に白身の美味しさがわかるようなしっとりとした焼き加減。お店の気持ちが表れています」
名店「ラ フィナージュ」のスクランブルエッグ
3皿目は「ラ フィナージュ」の卵料理。東京・銀座にあるフランス料理の名店、レストラン「ラ フィナージュ」。
日本で最高峰とも言われるフレンチレストランの総料理長などを歴任した、フランス料理界を代表するシェフの一人、髙良康之シェフから、特別に日常の卵料理をワンランクアップさせる「技」を教えてもらった。
まずは「目玉焼き」。弱火で焼いた後、卵の下にバターを流して白身の縁がカリカリになるまで焼く。次の「ポーチドエッグ」は、卵黄に塩・レモン果汁・カイエンヌペッパーを加えたオランデーズソースで。

そして、ハンドミキサーで空気を含ませながら滑らかにし、絶妙な火入れで仕上げる「スクランブルエッグ」。植野さんはこの1皿を「官能的愛情」と表現する。
中でもスクランブルエッグを推す植野さんは「上質な1皿、完成された1皿、メイン料理になる1皿。食感となめらかさの感動で“官能的愛情”」と話した。