食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「マカロニサラダ」。町田市にある洋食店「航旅莉屋(こりょうりや)」を訪れ、主役メニューの陰で、密かに「もう一度食べたい!」と熱望される名脇役を紹介。
マスターが修業した「たいめいけん」直伝の技も随所に光る、家庭的で温もりあふれる名店の味に迫る。
町田にある20周年の洋食店
今回は、視聴者が投稿してくれた依頼に応える「知りたい!あの店のあのメニュー」。
植野さんがやってきたのは、新宿から電車で約30分の小田急線町田駅。「ルミネ」や「マルイ」など大型商業施設が立ち並ぶ繁華街だが、向かうのはそこから少し離れた静かな住宅街だ。

2005年にオープンし、今年で20周年を迎えた洋食店「航旅莉屋」。木の温もりを感じる店内には、カウンター席とテーブル席がゆったりとあり、くつろいだ雰囲気の中で食事を楽しめる。
店はマスターの奥田幸央さんと妻・久美子さんが二人三脚で切り盛り。時には長女の莉子さんが手伝いに入ることもあり、家庭的でほっとできる雰囲気が魅力だ。
日本橋の老舗洋食店で修業
「たいめいけん」をはじめ、有名レストランで修業を積んだマスターの料理は、ワンオペながらも手間を惜しまず、ひと皿ひと皿丁寧に仕上げられている。

高温でサッと揚げ、肉の柔らかさを残した「牛イチボのカツレツ」や、香ばしいガーリックシュリンプがアクセントになった、食べごたえたっぷりのロコモコ。

沖縄のポーク玉子をアレンジしてスパムとチーズを中に入れたオムレツなど、ここでしか味わえない特別な一皿に出会える。
常連客も「マスターの料理が美味しいのと、奥様の接客が温かい」「真似して家で作るけど、この味にはならない」「ポークジンジャー。これでお腹を満たして幸せになる」と絶賛する。

お腹も心も満たしてくれる料理と、久美子さんのラテアートにほっと癒されるひととき。ふと気づけば、また足を運んでいる町田の名店だ。
明るい妻と寡黙なマスター
共に町田生まれの2人。高校卒業後、料理の道へ進んでいたマスターは同窓会で久美子さんと再会し、その後結婚。「たいめいけん」などの洋食店で経験を積んだマスターは2005年、夢だった独立を叶え、町田で「航旅莉屋」を開店した。

久美子さんは「大変なことも多いですけど、いろいろな方に出会えて、いろいろな経験が出来るのでやって良かったなと思います」と明るく振り返る。
植野さんが「マスターも久美子さんがサポートしてくれて心強いですよね?」と同意を求めるが、寡黙な幸央さんはうなずくだけ。

そんな2人の普段の様子を観察させてもらいながら、話を聞く。
久美子さんは「(幸央さんは)じっとしていることがなくて、常に働いている感じ。真面目で自分の決めたものに真っすぐ進んでいくタイプ。私はその時その時でチョイスしてうまく生きているかな」と話す。
それに対し、幸央さんは「(久美子さんが)羨ましいですよ。臨機応変に生きているし、(自分は)あんまりできない…」と謙遜する。性格が正反対な2人だが、それが「航旅莉屋」の魅力だ。
言葉少なでも、店をしっかり支えるマスターの隣には、明るく温かい久美子さんがいる。

本日のお目当て、航旅莉屋の「マカロニサラダ」。
一口食べた植野さんは「口の中でなめらかにほどけていく。薄いマヨネーズ感とカレーの香ばしさがフワっと広がっていく」と感動していた。
航旅莉屋「マカロニサラダ」のレシピを紹介する。