石破首相は5日の参院予算委で、政府内の会議などで、退職金税制に関して長期勤務者が相対的に有利になる税制が転職など労働移動を阻害しているとして、見直しの必要性が指摘されていることに関し、「答えは出ていない」とした上で「慎重な上に適切な見直しをすべきだ」との意向を示した。
石破首相は立憲民主党の吉川沙織議員の質問に答え、「雇用の流動化というものが妨げられないような退職金に対する課税のあり方とは何なんだろうということ、私自身はまだ答えが出ていない」と述べた。
現状の退職金への課税制度では、勤続年数が20年以下か、それ以上かで控除額が大きく変わる。
国税庁のホームページによると、勤続20年以下の場合の退職所得控除額は「40万円×勤続年数」だ。
一方20年を超えて勤務した場合には、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」という計算式となる。
つまり、勤続20年なら控除額は
40万円×20=800万円
勤続30年なら控除額は
800万円+70万円×(30-20)=1500万円
勤続20年と30年では、控除される額が700万円も変わってくるのだ。
このように、勤続年数が長いほど控除額が大きくなるため、労働移動を阻害しているとの指摘も出ている。
石破首相は、「雇用の流動化をどう考えるか、それが経済のこれから先の成長にとって非常に重要なことだ」と指摘した一方、「かといってあんまりバンバン辞められても大変だということは、経営者としてあるんだろうと思う」と述べた。
さらに吉川氏が「自民党の税調会長は、この見直しについて猶予期間が10年から15年必要と明らかにしている。この発言に従えば、就職氷河期世代で偶然に運良く職に就けて働けている人はちょうど見直しの施行時期に当たる。著しく控除額が減るようなことがあれば、退職後の生活や人生設計に影響甚大だ。拙速な見直しは避けるべきではないか」と迫った。
これに対し石破首相は「もちろん拙速な見直しは避けていかなければならないが、これから先、雇用の流動化というものは、賃金の上昇というものと合わせて図っていかねばならないことだと思っている。拙速な見直しはしないが、慎重な上に適切な見直しをすべきだと思っている」と強調した。