取材班が向かったのは栃木市の工場。
そこでは巨大な牛革が一枚一枚、手作業で厚みを整えられていました。
熟練の職人が時間と手間をかけ、昔ながらの20工程を経て仕上げる「栃木レザー」です。
創業は1937年。
栃木レザーは天然皮革の魅力を最大限に生かし、丈夫でやわらかいことが特徴です。
栃木駅前のアンテナショップには多くの愛用者が訪れていました。
栃木レザーの愛用者:
なじんでくる感じとか、革の良さをそのまま出したような製品なので、そういったところが好きです。
しかし、老舗のご当地ブランドである栃木レザーが今、SNSで問題化する偽広告の新たなターゲットとなっていました。
偽広告:
100年続く革工房の技で一枚革を丁寧に仕立てました。10年使っても剥がれず型崩れしない防水仕上げ。
「栃木レザー100周年記念商品限定販売」などとうたった広告動画。
“防水仕上げ”を強調し、水筒やコップの水を何度もバッグに浴びせています。
動画を見た栃木レザーの担当者は「これは偽広告だ」と怒りに震えていました。
栃木レザー株式会社 井上陽児取締役:
ふざけるなという感じ。弊社だとすれば、まず100周年じゃないし勝手に記念モデルを出すなという感じです。
さらに、革製のかばんに水をかける行為についても「こんなに水をバシャバシャ掛けるなんてあり得ない」と話します。
そして「最も許しがたい」というのが、あまりにも露骨な情に訴える販売方法でした。
偽広告:
みなさん、どうか私の父を助けて下さい。このような方法でお願いするのは本当に心苦しいのですが…。
“病気の父を助けるためにバッグを買って欲しい”という偽広告。
さらに、別の動画では…。
偽広告:
大変申し訳ございません。120年の伝統を受け継いできた栃木レザーの工房が、ついにその扉を閉ざさざるを得ない時が来ました。職人たちへの最後の給与を全額支払い、この歴史に終止符を打つための“最後のカーテンコール”なのです。
栃木レザー株式会社の井上陽児取締役は「去年の11月、12月くらいか、(問い合わせで)YouTubeを見ていたら、栃木レザーがつぶれそうだからバッグを放出する、あるいは弊社の代表ががんになったとか…。まずは驚きです。で、実際(偽広告を)目にし、強い憤り。許せない」と話します。
通販サイトにはバッグ1点5980円、2点まとめ買いで7480円と格安価格が並びますが、日本語表記にも「撥水防止」など、おかしな点がみられます。
しかし、年末ごろから栃木レザーには「粗悪品が届いた」「ビニール製のようなバッグだった」などの苦情が入るようになり、多い時には1日に10件ほどが殺到、SNSで注意喚起するなどの対応に追われました。
そして、取材中にも偽広告の被害を訴える電話が…。
店員:
バッグですと大体やはり、うちの商品で2万円以上。物にもよりますが…。
本物の愛用者からも「偽物を安く売ることで、ブランドの価値を関係ないものに下げられてしまうのはよくない」と偽広告に憤る声が聞かれました。
様々な商品に被害が拡大する偽広告。
以前はサーキュレーターやAI(人工知能)ロボット犬、さらに手軽なインスタント入れ歯など高性能をうたった商品の偽広告が多く見られました。
ところが、2026年に入ると「鯖江のメガネ」や「燕三条のフライパン」「南部鉄器」など、列島各地が誇る数々の日本の伝統技術がターゲットになるなど変化がみられるようになりました。
なぜ日本の“ご当地ブランド”が狙われるのか…。
犯罪ジャーナリスト・多田文明さんは「今“ご当地ブランド”がすごく注目されている。中国語の表記が多いので、中国系の偽サイトのグループだと思われる。日本の中で人気があるのが分かっていて、マーケティングをしながら、今どういう商品だと売れるかを恐らく調査していると思う」と話します。
さらに“情に訴える販売方法”も日本人向けの狙いの可能性があると指摘。
「(日本人は)同情心をあおられると弱い。かなり値段が安かったら、すぐに申し込まないで正規サイトに行けば注意喚起が必ずなされているので、その辺を見て思いとどまってほしい」としています。