三陸沖の海水温が平年より約6度上昇し、世界で過去最大の上昇幅を記録した。この異変が地域の気候や水産業に及ぼす影響は計り知れず、私たちの生活にも大きな変化をもたらす可能性がある。
異常な海水温上昇、その実態と原因
東北大学の研究グループは、三陸沖の海水温が2023年以降、平年より約6度上がり世界で過去最大の上昇幅になったと発表した。
この海水温の上昇は地域の気候や1次産業にも影響を及ぼす可能性があるとされている。

東北大学大学院理学研究科の杉本周作准教授は「世界の海で起こり得るかという視点で言うと、これだけ持続的に水温を5~6度も上げてしまったというのは(三陸沖が)初めて」と語る。

杉本准教授らの研究グループは、人工衛星による約30年間の観測データなどを活用して三陸沖の海水温について変化を解析。
その結果、2023年以降、平年と比べて約6度高い状況が続いていることを明らかにした。この平年から6度という上昇幅は世界の海の中でも過去最も大きいという。
杉本准教授はこうした異常な海水温上昇には、本来千葉県沖から東に流れていく「黒潮続流」の進路が変化したことが関係していると説明する。

「この黒潮が今、千葉を越え、時には青森にまで来るくらい北に向けて進路を取っている」と杉本准教授は語る。この変化により、温かい水が大量に三陸沖にもたらされ、海水温を押し上げているという。
水産業への影響、南の魚が北上
この水温の異常は海面付近だけでなく深さ700メートルまで及んでいて、水産業にとって重要な海の生態系が大きく変化する可能性もあるという。

杉本准教授は「まずは魚の分布が変わってしまうことがあり得るだろうと思う。2023年以降から(三陸沖には)本来いなかった南の魚が 宮城や岩手でも見つかったという報告が出始めている」と説明する。

海水温上昇の影響は海だけにとどまらない。
海からの蒸発が活発化し大気中の水蒸気が増えることにより、冬の海上の気温を上空2000メートルの範囲まで大きく上昇させることも分かった。
「やませ」が消える?東北の農業への影響
杉本准教授はこの状況が続けば東北地方で夏に吹く季節風「やませ」にも影響を及ぼすとし、次のように指摘する。

東北大学大学院理学研究科 杉本周作准教授:
やませはオホーツクから冷たい空気を運び冷夏にする一つの原因として考えられてきた。ただこれだけ三陸は暑い状況なので温かい空気を運び逆に猛暑をもたらすそういう作用を起こさせ得る。
その上で、将来的にコメ農家などには猛暑への様々な対応が求められる可能性があるという。

杉本准教授は「これからは徐々に猛暑に強いとかそういった品種(改良)も含めた意識の転換点が求められつつある」と話す。
未来を見据えた研究の継続
杉本准教授のグループは今後も三陸沖の水温変化を分析し2025年6月には観測船でこの海域の詳細を調査する予定だ。

杉本准教授は「水温が上昇している三陸沖の環境を調査することは、世界の海で起こりうる環境変化を予測し、適切な対策を講じるための重要な手掛かりになる」と話していた。
(岩手めんこいテレビ)