大船渡市で発生した林野火災 提供:仙台市消防局
大船渡市で発生した林野火災 提供:仙台市消防局
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岩手県大船渡市で発生し、平成以降最大規模となった大規模林野火災から、2026年2月26日で1年。
日本の林野火災は例年2月から5月に集中しており、2月20日には仙台市内でも下草が焼ける火災が発生した。

なぜ林野火災は一度起きると止まらないのか。現場の証言と科学的な分析から、大規模化する背景と、私たちが注意すべきことを再確認する。

「火が生きているようだった」決死の消火活動

2025年2月に発生した大船渡市の林野火災は、鎮圧までにおよそ2週間を要し、平成以降最大規模の林野火災となった。
この火災では、焼失面積約3,370ヘクタール、住宅など226棟が被災し、1人の尊い命が失われた。

青葉消防署警防課指揮隊 梅村大輔さん
青葉消防署警防課指揮隊 梅村大輔さん

全国各地の消防から応援の部隊も派遣された。仙台市消防局・青葉消防署の梅村大輔さんは、現地で指揮にあたった。

青葉消防署警防課指揮隊 梅村大輔さん:
視界全部が燃えているような、ぐるぐると巻いたような火が所々から上がってきたり、火が生きているような。

提供:仙台市消防局
提供:仙台市消防局

消火活動は困難を極めた。

山の中には消火栓があまりなく、海から約2キロもの消防ホースを繋いで水を供給したが、距離が長くなるほど水圧は低下する。消防隊は18リットルの水が入るリュックサックのような装備を背負って、活動にあたった。装備の総重量は25キロ以上にもなるという。

青葉消防署警防課特別消防隊 平井雄太さん
青葉消防署警防課特別消防隊 平井雄太さん

それらを身に着けたうえ、急傾斜地で行われた活動。
同じく消火活動に参加した青葉消防署警防課特別消防隊の平井雄太さんは、「本当に過酷な現場。1回消したところからまた火が出てきたり、本当に先が見えない火災。すぐ一面に燃え広がる怖さが林野火災にはある」と、当時を振り返る。

現地になお残る影響

大船渡市役所林野火災対策局 大和田智さん
大船渡市役所林野火災対策局 大和田智さん

発生から1年が経とうとしている今も、被災者の生活再建は途上にある。大船渡市役所の大和田智さんは「住まいの再建はまだ途上にある」と語る。

大船渡市役所林野火災対策局 大和田智さん:
被災した方々は応急仮設住宅であったり、民間のアパートを借り上げたみなし仮設住宅、公営住宅等に住んでいる現状。

住宅だけでなく、森林の復旧作業も全体の2%に満たないのが現状だ。

宮城県内でもかつて大規模な林野火災が

宮城県の県民の森でも、かつて大規模な火災が発生した
宮城県の県民の森でも、かつて大規模な火災が発生した

仙台市・富谷市・利府町にまたがる県民の森では、1983年に林野火災が発生。約860ヘクタールの山林が焼けた。
これを機に、県民の森では火災の防止に注力している。

県民の森では2月から5月にかけて、毎日見回りを行う
県民の森では2月から5月にかけて、毎日見回りを行う

県民の森中央記念館職員 横坂圭一さん:
タバコのポイ捨てがないか、園内歩いている人がタバコ吸ったり、たき火したりしないように注意喚起しながら歩いている。

実は、林野火災の原因のほとんどは人為的なものだ。消防庁のまとめによると、1位「たき火」、2位「火入れ」、3位「放火」、4位「たばこ」と続く。
県民の森ではそういった原因に対処すべく、林野火災が増える毎年2月から5月にかけて、注意喚起もかねて、職員が毎日見回りをしている。

科学が裏付ける「大規模化」の条件

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授

林野火災がなぜここまで激甚化するのか。京都大学防災研究所の峠嘉哉特定准教授は、大規模化しやすい3つの条件を指摘する。

気象条件: 冬から春にかけての太平洋側の「乾燥」と「強風」。
地形条件: 斜面を上向きに伸びる方向と延焼方向が重なると、延焼速度が急加速する。
可燃物の条件: スギやマツなどの針葉樹は、葉に油分を含むため燃焼強度が強くなりやすい。

提供:仙台市消防局
提供:仙台市消防局

特に恐ろしいのが「樹冠火(じゅかんか)」への移行だ。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授:
地表から地表に延焼するような、地をはうような延焼。これを地表火。この地表火の勢いがあまりにも強くなってくると、次は葉っぱから葉っぱに延焼するような形態をとる。これを樹冠火という。葉っぱがひしめきあうようになり火災が伝搬しやすくなる。

大船渡の火災も、乾燥と強風、そして燃えやすい針葉樹が複雑に絡み合い、この樹冠火となって一気に燃え広がったと見られている。

導入される「林野火災注意報・警報」

こうした事態を受け、今年から新たに「林野火災注意報・警報」が導入された。
各消防機関が出すもので、宮城県内では3月1日から全ての消防機関が運用を開始する。

仙台市東部の場合
注意報: 乾燥注意報と暴風警報が出された場合など。
警報: 注意報の要件を満たし、記録的少雨の場合など。

気象庁も2月17日に発表した「少雨に関する気象情報」で、2026年に入り極端に雨が少ないとして、火の取り扱いに厳重な注意を呼びかけている。

長い年月をかけて育った森が、わずか数日で灰になる。その火種を作るのは、多くの場合、人間の不注意だ。
乾燥と強風が続くこの季節、私たち一人ひとりの「火の用心」が、地域の財産を守ることにつながる。

仙台放送
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