人口世界一、経済成長著しいインド。その豊富な労働力が深刻化する日本の人手不足問題を解決する鍵となるかもしれない。岩手県内の中小企業の経営者たちが未来の可能性を探るべくインドを訪れた。彼らの目に映った活気あふれるインドの姿とは。
人材不足に悩む日本、解決の糸口を求めてインドへ
2024年11月、岩手県の中小企業経営者ら25人がインドを訪れた。この視察を呼びかけたのは北上工業クラブだ。同クラブはこれまで県内でいち早く中国に視察団を送り込むなど、以前から会員企業の海外展開を積極的に支援していて、今回はインドの豊富な労働力に着目した。

視察団が訪れたのはニューデリーにある国立職業訓練校だ。インド国内に同様の施設が1600箇所あるというこの施設では、1カ月200ルピー(約400円)という低額の自己負担で様々な技能を身につけることができる。

ここではスズキやダイキンといった日本の大企業の支援を受け、主に製造業や建設業に従事する職人の育成に力を入れており、手に職をつけたい若者から人気を集めている。
インドは今、こうした若い労働力があふれていて、人手不足が問題となっている日本とは対照的な労働市場となっている。
視察団のメンバーの小原建設(北上市)の小原学社長は「若い人は建設業に入ってきませんので、建設業を守るためにも外国人材を入れなくてはいけない」と若い人材の確保が難しい現状を語る。

一方で「モチベーションは全然違う。インド人はアグレッシブに、ハングリーに働きたいと思ってる人が多い。そういう人に来てもらって、会社や産業を維持していかなくてはいけない」と、インドの若者の意欲の高さを感じた様子だった。
下町の町工房、技術力の高さに驚き
続いて向かったのは、ニューデリー市内の下町にある町工房だ。ここでは下請けの零細企業が密集しており、海外からの視察団が訪れることは稀だという。

インド政府が掲げる「メイク・イン・インディア」というスローガンのもと、製造業の振興と雇用創出に取り組んでいる。

視察に参加した市川製作所の南淳一社長は「PCソフトを駆使している印象。(マシニング加工の)前段取りでCADCAMを使用する加工をインドでも確実に行っていたことに感心した」と、その技術レベルの高さに驚いた様子だった。
ジェトロが語る、インバウンド人材の重要性
視察団はジェトロ(日本貿易振興機構)の出先機関も訪れ、インドの経済と文化について情報収集を行った。
ジェトロでは主に日本企業の海外展開をサポートしてきたが、近年は海外の企業や人材を日本に取り込んでいくという広い意味での「インバウンド」をサポートする場面が増えているとしてその必要性を訴える。

ジェトロ ニューデリー事務所インド総代表の鈴木隆史所長は「インド人材をインバウンドの一つとして、日本自体を変えていく一つの要素として使っていく」と述べ、単なる市場としてだけでなく、日本の変革を促す要素としてインドの人材や企業の重要性を強調した。
深刻化する日本の人材不足、インドに活路を見出せるか
IMF(国際通貨基金)の予測によると、現在世界第5位のインドのGDPは、近い将来日本とドイツを抜いてアメリカ、中国に次ぐ世界第3位になる見通しだ。しかし、国内の地域間経済格差の拡大や、地方出身者・大卒者の就職難も予想されている。こうした状況からインドの豊富な人材と労働力が世界中から注目を集めることになりそうだ。

今回のインド視察を呼びかけた北上工業クラブの佐藤満義会長は、差し迫る人材確保の危機を痛感している。「北上地域での人材獲得は難しい。5、6年前であれば大卒や工業高校卒の人材が確保できたが、最近は募集をかけても『応募ゼロ』という状態」と、深刻な状況を語った。

人口減少と労働力不足が深刻化する日本に対し、人口増加と労働力余剰が予想されるインド。この対照的な状況は、日本の労働市場に新たな可能性をもたらすかもしれない。

県内における人材不足の解決策として、インドの豊富な人材と労働力に今後も注目していく必要がありそうだ。
(岩手めんこいテレビ)