「高校の授業料の無償化」をめぐる問題。 与野党は、支援金の上限や開始時期をめぐって、連日激しい議論を繰り広げている。
■【動画】大阪で私立人気高まり公立70校定員割れ 高校無償化巡る維新・与党議論は平行線
子どもや学校側にとって望ましい着地点とは…。
高校2年のAさん。兵庫県に住みながら、大阪の私立高校に通学していて、最近、クラスメイトとこんな話題になるそうだ。
Aさん(高校2年):『うちらタダやのにかわいそう』ってあおられます。結構みんなお金の話をするので、よくそういう話題になります。
■大阪府では今年度から段階的に所得制限を撤廃

現在の国の制度では、世帯年収が590万円未満の場合、公立だと年に11万8800円、私立だと39万6000円が支給される。
世帯年収が910万円未満の場合、公立・私立ともに年に11万8800円の支給。
Aさんの両親は共働きで、世帯年収が910万円を超えるため制度の対象外となり、授業料は全額負担となる。
また、大阪府では独自の政策として、今年度から段階的に所得制限を撤廃。
私立の支援額が年63万円に上乗せされましたが、Aさんは兵庫県から通学しているためこれも対象外だ。
Aさんの母:同じクラスで同じ授業を受けて、無料と(そうでないの)と考えるとあまりに金額が大きいので、不公平だなとは思います。
■国では高校の授業料をめぐる議論が始まっている
そんな中、いま国では高校の授業料をめぐる議論が始まっている。
自民党・小野寺五典政調会長:私ども今回やはり教育の質を上げたいと、そういう思いでこの教育の議論をされているということだと思いますので、それに資するように検討していきたい。
議論を交わすのは、自民・公明・日本維新の会だ。
維新は、来年度から所得制限を撤廃し、私立に通う人には最大年63万円の支給を要求。
対する与党側は、所得制限を撤廃し、公立・私立問わず年間11万8800円を支給するものの、私立の無償化については再来年度以降に持ち越しとする案を提示した。
■日本維新の会・吉村代表は「全国での高校授業料無償化というのが大前提」

両者合意に至らず議論が平行線となっていることについて、日本維新の会の吉村代表は。
日本維新の会 吉村洋文代表:(来年度から)全国での高校授業料無償化というのが大前提です。そこの意見すら聞いてもらえないようであれば、我々の意見は全く聞いてもらえないということなんだと思います。
■「高校授業料の無償化」街の人はどう感じているのか

与野党の駆け引きがあるにしても、支援の拡充が現実味を帯びてきた「高校授業料の無償化」。
街の人はどう感じているのか。
50代:いいことやと思います。私立がハードル高い。行ける家庭と行けない家庭があるから、安くなるに越したことはない。
40代:所得が高い人には普通に払ってもらったほうが、私たちの負担は減るかな。
奈良県に住む男性は、支援が拡充されていたら、まさに今受験シーズンの息子の進路の選択が変わったかもしれないと話す。
奈良県在住 中3の父親:親としては、『県立県立高校に行って欲しいな』っていうことを当然のように言ってしまったんですけど、もしお金が全然関係なければ、本当に高校の環境次第で選ぶことができれば、子供の選択肢も変わるかなと。
■私立高校の受け止めは

私立高校側の受け止めは…
西大和学園 田野瀬太樹理事長:やっぱり経済的な負担が下がれば、私立を選びやすくはなると思います。公立に行きたかったのに、合格しなくて私立に行かざるを得ないケースもたくさんある。急に年間何十万、百万円近い負担が発生する、しんどいケースもあるわけですから、そういう負担は軽減してほしいという思いは前々からありました。
一方、公費が投入されることで、これまで保護者や生徒の進学の決め手となっていた独自性のある授業や行事に制限がかかる懸念も。
西大和学園 田野瀬太樹理事長:良い施設を作って、良い教育環境を整えたいというときに予算をつけられなくなる。私立学校の魅力は、色々な教育プログラムをやって特色を出す部分もありますけど、それをやりづらくなる弊害が出てくるかも。
■公立高校は「高校無償化」をどう捉えているのか

では、公立高校側はどう捉えているのか。 兵庫県の教育委員会は。
兵庫県教育委員会高校教育改革官 清水道子さん:(影響は)分からないというのが正直なところですが、影響があるとすれば今公立高校を選んでくれている子が私立を選ぶということも出てくるのかなと思います。
実際に、独自政策で私立の授業料の支援を行う大阪府では、今年度、公立の入試で定員割れをした高校は70校に上る。
■兵庫県は「県立高校改革」に取り組んでいる

兵庫県の打開策として、いま取り組んでいるのは、“県立高校改革”だ。
去年から一部の学校の普通科に、新たなコースを設置。 必修科目などは「普通科」のまま、生徒が様々なテーマで大学や企業と連携しながら研究を深めることができる。
■設備面での改革も

兵庫県立御影高校 沖良宣校長:昨日入ったばかりのレーザー加工機があります。こちらは3Dプリンターです。
(Qそれぞれ値段は?)
兵庫県立御影高校 沖良宣校長:数百万円ということです。
もちろん、設備面の改革も実施。その結果、御影高校では志願者が増えたそうだ。
兵庫県立御影高校 沖良宣校長:学校で何を学びたいかっていう部分を突き詰めていくと、十分公立も対応できる。
(Q私立に勝てる自信があるか?)
兵庫県立御影高校 沖良宣校長:当然です。
子ども達の将来に大きく関わる授業料の無償化。より良い制度となる着地点はどこなのか。
■高校無償化の効果があったのか、検証も必要

高校の無償化について、教育行政に詳しい日本大学の末富芳教授は、「現状は親の所得で子どもの教育に差がついている。無償化の対象拡充で子どもの学ぶ権利が守られる」と評価した。 ただ「その次」が大事で、高校無償化の効果があったか検証をすることや、学校側の情報開示をルール化することも大事だと指摘した。
■「高校を複数併願制で選べる仕組みづくりも必要」と安田洋祐教授

大阪大学大学院の安田洋祐教授は、「日本は公的な教育支出が非常に少ないので、お金が使えることはいいことだ」と高校無償化の支援拡充政策を支持する一方で、「私立高校の無償化の流れが加速していくと 公立高校がどうしても相対的に効率の人気が下がってしまうことに注意が必要だ」と指摘しました。
大阪大学大学院 安田洋祐教授:公立の魅力を高めるために、大阪府も含めて多くの自治体で単願制で(学校を)一つしか選べない。それを複数併願制で選べるとか、定員を拡充する、教員を拡充することにお金を使えば、公立の魅力が高まって、ある程度問題が緩和できる。
■高校無償化制度の財源を、維新案と自民・公明の案で比較

高校無償化制度について、維新案と自民・公明の案を比較する。
維新ではことし4月から所得制限を撤廃し、私立の支援拡充の上限を63万円にする案を出している。財源は約6000億円で、行財政改革などで捻出するとしている。
一方、自民・公明は、ことし4月から所得制限撤廃。公立・私立ともに支援拡充は11万8800円で、来年4月を目指すとしている。維新案と比べて大きな隔たりがある。
関西テレビ 神崎博報道デスク:維新としては授業料無償化が一丁目一番地の政策で、63万円の案を出しています。一方で、与党自公としては、財源の問題もあるので11万8000円と低めで、差があります。
関西テレビ 神崎博報道デスク:与党側としては、来年度予算に維新の協力を得たいので、維新側の63万円までのどこかで着地点があるのかと思います。アイディアとして、東京都がやっている48万円に近づく形で妥結する可能性はあるかと思います。
大阪大学大学院 安田洋祐教授:私立に通う子供、家庭にたくさん補助金が投入されると歪みを生むと思う。例えば、高校生1人当たり一律で60万円の教育資金を助成し、それを私立の学校に使ってもいいし、公立に通えば浮いた50万円を大学や専門学校など先の教育関連に使う発想もあるかなと思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年2月11日放送)