苦しい経営状況が続くJA新潟厚生連病院。県の新年度予算案でも医療機関への財政支援に大きな予算が割かれた。経営の改善だけでなく、県立病院も含めた医療機関の再編は待ったなしだ。医療現場の現状を取材した。
JA新潟厚生連 “経営悪化”が表面化
上越市にあるJA新潟厚生連の上越総合病院。2月13日の会議で共有されていたのは、病院の患者数や経営状況だ。

篭島充院長は「厳しい。ここに限らず、県内どの病院も一緒だと思う」と話す。
県内で11の病院を運営し、県内の医療を支えるJA新潟厚生連。しかし、2023年度の収支は35億あまりの赤字となり、経営改善を進めなければ2025年度には資金が枯渇する恐れが表面化した。
その後、役員報酬の削減などの緊急対応を行い、上越総合病院でも経費削減や収益性の高い病棟作りなどに取り組んできた。

上越総合病院で開かれていた会議では…
上越総合病院 篭島充 院長:
(今年度の)1年間の収支の見込み。修正計画に対して、どのくらいになりそうなのか。
上越総合病院 五十嵐泰史 事務長:
修正計画の赤字額が6億1600万くらいだったと思う。そこに対して、赤字の額は4億台までいけるのではないか。
上越総合病院 篭島充 院長:
なかなか簡単な道ではないが、逐次、そのときの状況を報告しながらやらないと。アイデアを求めたり、協力を依頼したりしていくと思うので、よろしくお願いいたします。
厳しい経営のウラに『診療報酬制度』と『人口減少』
経営が厳しい背景にあるのは、国の診療報酬の制度と人口減少問題だ。
篭島院長は「どの程度の収入があるかというのはどれだけの患者さんが来るか、“数”。あとは単価、一人ひとりにどういう診療を行ったかということで、収入が自動的に決まってくる。特に新潟県は人口減少が早くて人口密度が低い。診療系人口がそれほど多くないところに病院がたくさんあるので、そういう構造に拍車がかかっていると思う」とその背景を話す。

こうした状況を受け、県は新年度の当初予算案で、医療機関への財政支援に約27億円を計上。
このうち厚生連への支援には約11億円が充てられているほか、立地自治体の市町村も支援を表明している。
県の新年度予算案 “医療再編”への費用も
それでもあくまで緊急的な措置に過ぎない財政支援。
根本的な解決に必要とされているのが、各病院の役割などを見直す“医療再編”だが、すでに深刻な状況も出ている。

上越市の新潟労災病院は2025年度で閉院することが決まっていて、上越総合病院では、2024年4月に透析患者約40人を受け入れた。
しかし、これまでの患者数の倍となることから病棟を新たに増築。大きな費用負担を強いられた。

篭島院長は「そういうことを起きないようにするために、今から将来のことを考えないといけない。放っておくと、そういうことがどんどんこれから起こるので」と今後を危惧する。
上越医療圏では今後、機能を集約する中核病院について運営主体のあり方などを議論する方針で、県の新年度予算案には医療再編を支援する費用も計上されている。
篭島院長は地域の医療を守るために医療再編を進めていかなければならないと話す。
「地域全体が一つの病院であるかのようなことを考えていかないと、地域全体の医療が守れなくなると思う。安心してここで産まれて、安心して暮らせて、安心して人生を終えていける場所にしたい」
(NST新潟総合テレビ)