島根県唯一のデパートだった一畑百貨店(松江市)が2024年1月14日に閉店してから丸1年が経った。JR松江駅前に残るかつての店舗はシャッターが降りたままで、跡地の活用や周辺エリアの再開発の議論は始まったばかり。県都の玄関口の再生に向けた道筋は見えていない。

閉店から1年 旧店舗ビルは手つかずのまま

2024年1月14日、市民に惜しまれながら65年の歴史に幕を下ろした松江市の一畑百貨店。

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島根県内唯一のデパートで松江駅前のシンボル的存在だったが、閉店から1年が経った今も、かつての店舗はシャッターが降りたまま、建物もほぼ手つかずの状態で残されている。
親会社の一畑電気鉄道は、土地と建物の売却を検討してきたが、これまでに具体的な進展はないとしている。

閉店から1年、人通りも少なく閑散とした松江駅前で市民に聞くと、「今は別のショッピングセンターで買う。ただ、デパートがなくなってやっぱりさみしい。あったほうがいい」と声が返ってきた。
待機中のタクシー運転手も「お年寄りは一畑百貨店で買い物をして、荷物が増えるから、タクシーに乗って帰るという人が多かった。今は、そんなお客さんが全然いない」と嘆いた。

変わる商業地図 隣県のデパートが攻勢

「一畑」閉店に伴って、松江市を含む島根県東部を中心にした商業地図は大きく塗り替えられた。

特筆すべきは、かつてライバルだった鳥取・米子市の2つの百貨店だ。
JU米子高島屋では、2024年1月から11月までの売上が39億6070万円と、前年同期から約10%、約4億円増加した。
また、米子しんまち天満屋も前年同時期に比べ5%増加し、ともに業績を伸ばした。

JU米子高島屋の森紳二郎社長は「(島根県東部の)松江や出雲のお客様がたくさん来店されていて、かなりのかさ上げになったと考えている」と分析。さらに「一畑百貨店から外商メンバーを含め9人採用して、一畑の外商のお客様を訪問させていただき、それがかなり大きな成果になっている」と、一畑の外商部員を受け入れるなど島根県東部への攻勢が功を奏したと分析する。

購買需要流出 駅前の空洞化に危機感

「一畑」閉店後、購買需要が市外に流出している現状に、松江市の上定市長は「駅前のにぎわいが乏しくなっているのは非常に寂しいことで、この状況が長く続くというのは良い状況にはない」として、松江駅前のにぎわいの回復が急務だという認識を示した。

そして、今後、市と経済界を中心に駅周辺エリアの将来像を検討する「松江駅前デザイン会議」での議論を踏まえながら、速やかに対策を打ち出す考えだ。

「駅前一等地」の活用 進まない議論

ただ、その「デザイン会議」の検討は、これまで大きな進展を見せていない。
一畑百貨店の跡地活用を含め、松江駅前一帯の再開発について官民で議論を重ね、素案として一畑跡地に新たに複合ビルを建設する案を示したが、当初2024年中としていた全体のデザイン案の公表は先送りされた。

松江駅前デザイン会議 田部長右衛門会長
松江駅前デザイン会議 田部長右衛門会長

デザイン会議の会長を務める松江商工会議所の田部長右衛門会頭は「民間同士の話し合いになる上、金額として大きな話になってくるので、シミュレーションなどに時間がかかっている」と述べ、市が示している複合施設「松江テルサ」を撤去する案についても、さらに議論を深める必要があるという考えを示した。

「街のシンボル」が看板を下ろして1年。
松江駅前エリアの空洞化が懸念される中、松江市や経済界にはスピード感を持った対応が求められている。

(TSKさんいん中央テレビ)

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