北陸新幹線「敦賀ー新大阪間」の建設について話し合う自民・公明与党の整備委員会が、13日の東京で開かれた。沿線自治体のトップからは、小浜ー京都ルートの地元の財政負担や地下水への影響について懸念の声が相次いだ。
この記事の画像(7枚)整備委のヒアリングは、先日行われた杉本知事やJR西日本の長谷川社長に続き、13日は大阪府の吉村知事と京都府の西脇知事、京都市の松井市長が出席し、沿線自治体としての意見を述べた。
沿線自治体トップから「小浜-京都ルート」に懸念の声
◆大阪府・吉村洋文知事
大阪府の吉村知事は「小浜・京都ルートの建設費が最大5兆円に膨れ上がるなど、前提条件が変わっているのに費用対効果の数値が示されていない」と指摘。大阪までの早期全線開業は重要であるとしながらも、4点の懸念材料を挙げ「早くクリアにしてもらいたい」と注文を付けた。
1.費用対便益B/Cが示されていない(前回示されたもので1.1。コストが大幅に上がった中でどうなっているのか)
2.建設期間が15年から28年とほぼ倍になっている
3.費用が2兆1000億円から最大で5兆円とほぼ倍になっている
4.飲み水に使用している地下水への影響
また吉村知事は「米原ルートと比較検討しても前提条件が少し変わっているのではないか。我々としては小浜-京都ルートが基本的なスタンス、考え方なので、課題点を早くクリアにしてもらいたい。ただ、小浜-京都で全く問題ないという進め方は少し違うのではないか。いまのうちから丁寧に説明して関係者の理解を得ながら、小浜-京都の正当性を丁寧にやっていく必要がある」と言及した。
京都までの区間の先行開業ついては「同時開業してこそ大きな効果がある」と、反対の立場を明確にした。
京都が懸念する「地下水」への影響
◆京都府・西脇隆俊知事
一方、京都府の西脇知事は、府民の理解、関係市町の協力が不可欠としたうえで、地下水に与える影響や建設工事で出る残土処理の問題など、施工上の課題として6点を挙げ、建設費の地元負担を最小化するよう求めた。
1.京都丹波高原国定公園の自然環境への影響
2.建設発生土の処分、運搬の環境への影響
3.地下水の水量と水質への影響(多くの産業が地下水に依存しているため)
4.工事車両の渋滞(京都駅周辺には百貨店、ホテルなどの商業施設が集積しているため)
5.京都府内にある文化、歴史的建造物への影響
6.松井山手駅の難工事や車両基地の予定地が浸水想定区域に入っていること
このほか、建設費の地方負担の最小化と受益に応じた負担を求めた。
財政負担も懸念材料に
◆京都市・松井孝治市長
また、京都市の松井市長も、同じように4点の懸念材料を上げ「京都市は厳しい財政状況にあり、この財政負担は重い。ルート決定にあたっては慎重に慎重を重ねて精査を進めてほしい」と強く訴えた。
1.地下水の問題
2.建設発生土の処分
3.長期工事による交通渋滞の発生
4.財政負担の重さ
松井市長は「府民が理解し納得するためには一定の時間、プロセスが必要。京都駅周辺の3ルートだけではなく、施工上の課題全てについて検討が必要なのではないか。3ルートに関わらず、あるいはタイミングに関わらず、4つの懸念をしっかり市民に説明しないと私の職責を果たせない」とした。
新幹線の新規着工にあたっては、沿線自治体の同意が必要で、いわゆる「着工5条件」の1つとなっている。与党整備委員会では、「小浜・京都ルート」について、京都市の中心部を通る3つの案から1つに絞る作業を進めており、近く決定する見通しだが、今後、沿線自治体の懸念にどう応えていくかが問われることになる。