食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「肉うまにめし」。
東京・北綾瀬にある中国料理店「中国料理 辰善」を訪れ、薄切りした豚肉をシャキシャキのたけのこと一気に炒め、熱々ごはんの上にかけた一品を紹介。
豚肉のうま味を逃さない、美味しさを格上げする技を学ぶ。
発展が期待できる街・北綾瀬
「中国料理 辰善」があるのは、東京足立区・北綾瀬駅。東京メトロ千代田線の起点となっている北綾瀬駅は北千住駅まで約10分、大手町駅まで約30分と好アクセス。
2025年夏には大規模な商業施設が開業予定と、今後ますます発展するエリアだ。
この記事の画像(9枚)「北千住にはいろいろな飲み屋もあって行きましたけど、北千住からこっちは正直なかなかないですね」と植野さん。
綾瀬という地名は付近を流れる綾瀬川にちなんでいる。諸説あるが、かつてここにあった川は雨が降るたびに氾濫し、川の流れが変化。
その様子が不思議だという意味の古語、「あやし」だったことから「あやし川」と呼ばれ、「綾瀬川」になったとも言われている。
父の味を受け継ぐ家族経営の中国料理店
「中国料理 辰善」があるのは、北綾瀬駅から徒歩15分の場所。1968年に、先代の小原秀雄さんが、自分の生まれ育った町で始めたのがこの店だ。
懐かしの食品サンプルがずらりと軒先に並び、店内にはテーブル席のほか、ゆっくりとくつろげる小上がりもある。
店は小原一家による家族経営。67歳で旅立った父の味を受け継ぎ、厨房を守るのが2代目の息子・一幸さん。
母・喜代さんも開店以来変わらずお店に立ち、姉の悦子さんも、弟をサポートしつつ「辰善」を盛り立てている。
父親から受け継いだ店の味は、奇をてらわずシンプルで優しい味。定番メニューに加えて、毎月欠かさず新作を作るなど、常に挑戦も続けている。
研究を欠かさなかった仕事熱心な父
先代の小原秀雄さんは、中学卒業後に千住にあった中華料理店で修業。地元の人に美味しいものを食べてもらいたいと出身地の足立区で「辰善」を始めた。
一幸さんは父の思い出を「基本的に仕事を真面目にやっているし、ずっといろんなものを研究したり、練習したりしている人でした」と語り、喜代さんも「休みの日でも半日調理場に入っていました。試食してみろとか」と振り返った。
残されたメニューを見て思い出す父の姿
16年前に父を亡くし、2代目となった一幸さん。
彼もまた、研究熱心だった父の思いを受け継いでいた。
一幸さんは父が残したメニューのメモを見返しながら「こういうのはグラムが後で書き足せるじゃないですか、何の5分の4だかも書いてないわけですよ。これを見て自分も作ると“父がこういう風に作っていた”とか思い出したりします」と思い出を語る。
そして、新メニューについて尋ねると、「毎月一品麺類は変えています。1人で考えて作って、母・姉に意見を聞いています。作っている途中で姉が助言をしてくれます」「たまに雑談で“こんなのあるけど、どうする?”と聞くと1発目にダメ出しが来る」と一幸さんは苦笑する。
植野さんが「お姉さんから見るとどうですか?」と尋ねると、悦子さんは「そうですね、まだまだです」と厳しい評価をするが、「でも、今いるお客さんは弟についているお客さんだし、古くから来ているお客さんが“昔と同じで美味しかったよ”と言っていたらそれでいいんだと思う」と明かした。
本日のお目当ては、中国料理 辰善の「肉うまにめし」。
一口食べた植野さんは「食感やうまみがしっかり出ている、ご飯の甘みも感じるやさしい味」と絶賛した。
中国料理 辰善「肉うまにめし」のレシピを紹介する。