食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「肉味噌オムレツ」。
千葉県松戸市にある居酒屋「酒処ひよし」を訪れ、ふわっと焼き上げた卵焼きの上に、旨みたっぷりの肉味噌を豪快にかけた一品を紹介。さまざまな料理にもアレンジできる、ピリ辛の肉味噌作りのポイントも学ぶ。
ネオンが灯るディープな通りにある店
「酒処ひよし」があるのは千葉県松戸市。千葉県の北西に位置する松戸市は、東京・葛飾区に隣接している。
松戸駅はJR常磐線で北千住駅から約10分の場所にある。
駅周辺には繁華街も点在し、西口を出てすぐのところにあるのが「高砂通り商店会」だ。
この記事の画像(9枚)「ちょっと横道に入ってみると、今昼だからやってないけど、居酒屋とかモツ焼き屋さんとか多くないですか?」と植野さん。
夜になるとあちこちでネオンが灯り、様変わりするこの通りは、路地裏をのぞくと、居酒屋やスナックがひしめき合うちょっとディープな場所もある。
そんな高砂通りにあるお店が「酒処ひよし」だ。
先代からの客も40年通う
松戸駅から徒歩4分の場所にある「酒処ひよし」。
昭和の雰囲気が色濃く残る店内の特徴は厨房を取り囲む、コの字のカウンター席。
3代目の日吉大さんが厨房で腕を振い、カウンターならではの特徴を生かして客との距離も近い。そして、母・早苗さんはホールを担当し、親子2人で店を切り盛りしている。
常連客に店の魅力を聞くと、「肉味噌のオムレツがめっちゃ美味しい、自分にはあれは作れない」「40年通っています。今はお刺身、旬でさんまの刺身とか…」と答えると、大さんも「この方は先代からのお客さんなので。先代からのいじめに…」と冗談を言うなど、気さくな2人の人柄も愛される理由だ。
病に倒れた父の跡を継ぎ母と息子の二人三脚
戦後まもない1940年代後半に商売を始めたのが、大さんの祖母にあたる、ひちさんだった。
早苗さんは「駅前で屋台をはじめて。お酒も出して、煮込みとモツ焼きもやっていたのかな」と語る。
ひちさんはその後、店を構える。そして、ひちさんの息子であり、大さんの父・延行さんが2代目になった。
息子の大さんも、いずれ跡を継ぐつもりで修業に出ていたが、延行さんが病に倒れ、31歳の時に実家に戻ることになった。それから約20年、母と息子の二人三脚で店を守ってきた。
植野さんが「料理はいろいろと変わってきたんですか?」と尋ねると、大さんは「ほとんど変えました。物がない時の商品なんです。モツ煮とか安価で誰にでもできるもので。飽食になってくると、みんながやってるものって、どこ行っても出てくるから飽きるんですよね、作ってるほうも」と答えた。
エビやイカなどの海鮮に野菜を加えて炒め、牛すじ大根の煮汁を出汁にした、奥深い味わいの海鮮ビーフン。タコ・イカ・野菜を炒め、牛すじの煮汁を加え、きのことバターを加えて炒めた「たこ・いか・木の子のバター炒め」など。
店の料理は大さんによって、オリジナリティーあふれる逸品の数々に生まれ変わった。
本日のお目当て、酒処ひよしの「肉味噌オムレツ」。
一口食べた植野さんは「卵のふわっとしたまろやかさとキャベツのフレッシュな食感、肉味噌の旨味が口の中に広がる」と絶賛する。
酒処ひよし「肉味噌オムレツ」のレシピも紹介する。