人間は持っていないことより、持っていたものを失うほうが精神的に辛いと言いますが、肩書きを失った後の周囲の変化は、ぜひ早めに経験しておいたほうが、将来の心の準備ができると思います。
自分の「言葉遣い」に注意する
ここ数年間、政治家や経営者の方々の明らかな差別発言が炎上することが何度もありました。
自分は大丈夫、と思っている方こそ、日経BPから出版されている『早く絶版になってほしい #駄言辞典』などをぜひ一度読んでいただきたいと思います。特に自分に悪気はないのに使っている場合が厄介です。
差別発言にならなくても、時代を感じさせる表現などにより、知らず知らずのうちに自分が損をしていることもあるかもしれません。例えば、中高年が好んで使う、「一丁目一番地」などです。
最重要事項という意味だと今は知っていますが、私は最初に聞いたときに意味がわからず、郵便ハガキが頭に浮かんで、そこから思考停止してしまいました。
また、「鉛筆舐め舐め」などは不衛生で気持ちの悪い表現ですし、相手を不快にします。

そういった表現を同年代だけで使っている分には問題ないかもしれませんが、いろんな世代、環境の方と仕事をする中では、そういった表現を使わない方が相手に対しても親切ではないかと思います。
私はシンプルに、自分の会社の社長やクライアントに使えない表現は、年齢に関係なく、社内でも、家庭でも使わないようにしています。
ただ、同質性の高いコミュニティだと、みんなが同じ表現を使うことが予想されるので、不安な方は、同僚や家族に、自分の言葉遣いで気になるものはないか、聞いてみるとよいと思います。
思ったまま話すのではなく、一度立ち止まって、相手の視点からどう見えるか、考えてみてから話すことが大切です。
年齢・性別の話は意図的にしない習慣を
私自身が気をつけていることですが、そもそも年齢と性別に関する話題を一切しない、ということです。
すべては「個人差」として捉えるのです。始めてみると、余程のことがない限り、年齢と性別に関する話題に触れる必要がないことに気づくはずです。
基本として、「男性の意見を聞きたい」「女性の意見を聞きたい」などという表現そのものが相手に失礼になる、不要であるという考え方を知っておくことが大切です。
本来であれば、「○○を行おうと思いますが、どう思いますか」と、性別に関係なく相手に「個人」として意見を聞けばよいわけです。
応用編として、人間関係が良好で、信頼関係もある程度できてきた段階で、相手に前置きをした上で、話をするというのはありではないかと思います。
特に、自分がわからずに困っている状態であることなどを事前に伝えるとよいと思います。
例えば、「今から年齢に関係する話をしたいんだけどいいかな」「男性しかいないチームなので、女性の意見を聞きたいんだけどいいかな」などです。

後藤宗明
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。富士銀行(現・みずほ銀行)を経て、米国で起業。帰国後、米国のフィンテック企業の日本法人代表などを務めたのち、2021年に一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立し、代表理事に就任。現在は、リスキリングプラットフォームを提供する米国企業「SkyHive Technologies」の日本代表も務める。