リスキリングは「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」を指しているという。

そのリスキリングは20代、30代、40代と年代において視点が少しずつ異なってくる。

キャリアの転換期となる40代は、どのような姿勢で自分のキャリアと向き合い、リスキリングをしていけばいいのか。

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤宗明さんの著書『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』(日本能率協会マネジメントセンター)では、40代は「マネジメント職として生きるか、本格的なリスキリングを開始するか」がカギとなるという。

その具体的な行動と考え方について、一部抜粋・再編集して紹介する。

40代はマネジメントスキルを高めてキャリアアップを目指すのか、プレーヤーとして価値を見出すのか、その適性を自身で見定めることが大切になる。

その上で、もしマネジメントキャリアと距離を置き、新たな可能性を模索したい人は、勝負スキルに加えた、もう一つのスキルをリスキリングしたり、副業や兼業制度を利用して新たなスキルの可能性も模索したりすることが50代、60代も働き続けるために必要になってくる。

このことを踏まえつつ、40代はさらに次の3つのポイントも考慮していきたい。

40代のリスキリングで頭に入れておくべきこと

(1)「所属組織の評価=自分の能力」ではない

40代になると、同僚との比較においても、所属組織における自分の立ち位置、評価が相対的にはっきりしてきます。ただそれはあくまでもその所属組織における評価であって、ご自身の実際の能 力とは関係がありません。

不幸なことに、この「所属組織の評価=自分の能力」という思い込みに陥ってしまう方が多く、所属組織の評価をもとに自分自身を評価してしまうのです。

これは高い評価をする場合も低い評価をする場合も、不幸な結果を招く事態となります。

組織での評価は冷静に見極めることが大切(画像:イメージ)
組織での評価は冷静に見極めることが大切(画像:イメージ)
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例えば、自分の能力は高くないのに所属組織での評価が高いと、実際に早期退職後や定年後に厳しい現実と向き合うことになります。

一方で、所属組織での評価が低いことから自分の能力が低いと決めつけてしまうと、別の場所で活躍するチャンスを自ら逃してしまうことになります。

そのため、自分が現在持っているスキルを所属組織で高く評価してもらえないのであれば、まず社内での配置転換を希望する、それでもダメなら転職をして自分の価値を理解してくれる会社を探す、といったことを始めた方が良いです。

低評価に甘んじて50代に突入してしまうと、再起することが本当に難しくなります。

自分が習得したい>上司に評価される

(2)上司に評価されるスキルと距離を置く勇気を持つ

組織に所属していると直属の上司の評価に人生を左右されると言っても過言ではありません。

これはスキル習得の観点では、とても危険だと思うのです。社長にならない限り、永遠に直属の上司の評価に自分の人生、今後の未来を左右されるからです。

ある企業へリスキリングの説明をしていた際のことです。リスキリングの方向性として、AI分野の事業開発のスキルの話をしたところ、ある従業員の方から、驚くべき回答が返ってきたのです。

「自分はAI事業に関心があるものの、現在の直属の上司がデジタル化に反対をしている人なので、自分からAI分野の新規事業のスキルを身につけたいとは口が裂けても言えない」と言うのです。

僕からすると、その業界はAIによる激しいディスラプションが起きることが分かっていたので、「絶対に今AI事業分野のスキルを身につけた方が良いですよ」とおすすめしたのですが、その方は頑なに無理とおっしゃっていました。

これは2019年の話なのですが、その会社は2023年現在の時点でまだ積極的にAI事業を拡充する施策を発表していません。競合の会社は続々とAIを活用した事業を発表しており、このケースから上司の評価を優先すると自分のスキル習得に悪影響が出るのだということを学びました。

上司に評価されるスキルを追い続けた場合はどうでしょうか。マネジメント職を追求する覚悟をした方、上司に評価されるスキルを追いかけ続けた方が良いかもしれません。

しかし、マネジメントではなくプレーヤーとして生きていく覚悟をした方は、上司に評価されるスキルではなく、自分が習得したいスキルを40代で貪欲に習得していくことをおすすめします。

会社の看板なく生きられる力を

(3)50代を視野に入れ、「個人事業主」として生きる人生を考えてみる

40代では所属組織における自分の評価がある程度客観的に見えるようになってきているので、それをそのまま受け入れるのではなく、会社の看板なしで生きられるだけの力を身につけておくこともぜひ視野に入れていただきたいと思います。

50代からは管理職の昇進についてもポストが極端に減りますし、場合によっては早期退職といった予期せぬ展開があるかもしれません。

40代のうちに「個人事業主」の選択肢も入れておく(画像:イメージ)
40代のうちに「個人事業主」の選択肢も入れておく(画像:イメージ)

そういった境遇に陥った時に、心の準備ができているかどうかはとても大切です。

そのため、40代のうちに、 50代から自分の力で前向きに生きていくための「個人事業主」という選択肢もぜひ検討していただきたいと思います。

個人事業主として生きていく選択肢を会社が提供している事例をご紹介します。

電通の子会社ニューホライズンコレクティブ合同会社(NH)は電通の40歳以上の社員で早期退職して個人事業主として生きていく方をサポートする、人生る仕組み「ライフシフトプラットフォーム」を運営しています。

人生100年時代のキャリア自律を支援する仕組みとしては、電通の早期退職者の方々がNHと業務委託契約を結び、個人事業主として再出発します。

そしてNHはCo-Skillingと呼ばれる手法でメンバー同士で学び合い、リスキリングを進める環境づくりと、仕事の発注、メンバー同士での案件受注等の機会をサポートします。

私もNHの記者発表に同席させていただき、実際に活躍されている メンバーの方々とお話をさせていただきましたが、皆さんリスキリングをしながら新たなチャンスを活かして大活躍されています。

現在では、電通以外の会社、日本たばこ産業株式会社(JT)に加え、NECグループ、日本航空株式会社、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社、大手商社の計5社に在職中の方々に加え、30歳代〜60歳代の金融、不動産、メーカー、コンサルティングなどの企業出身者の方で既に個人で活躍されている方々も参加しています。

ベテラン中高年の方々のとても前向きな将来の選択肢を提示していて、この仕組みが日本で広がるといいなと感じています。

『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』(日本能率協会マネジメントセンター)

後藤宗明
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事/チーフ・リスキリング・ オフィサー。SkyHive Technologies日本代表。著書である『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』(日本能率協会マネジ メントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞

後藤宗明
後藤宗明

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事/チーフ・リスキリング・ オフィサー、SkyHive Technologies日本代表。
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業。2011年、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人設立に尽力。米国フィンテック企業の日本法人代表、通信ベンチャーのグローバル部門役員を経て、アクセンチュアにて人事領域のDXと採用戦略を担当。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・ リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、AIを利用してスキル可視化を含むリスキリン グ・プロセス支援を行う米国のSkyHive Technologiesの日本代表に就任。
石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、「日経リスキリングコンソーシアム」ボードメンバー、英Economist誌主催「Economist Impactʼs Advisory Panel on Green Skills」アドバイザー、山形県 21世紀山形県民会議「DX山形経済再生、コロナの 先へ」アドバイザー、リクルートワークス研究所客員研究員を歴任。
日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。
インドネシア政府主催「Future Skills Summit2023」、沖縄県所得向上応援企業認証制度認証式 、日本経済新聞社主催「日経リスキリングサミット」では岸田首相との車座対談にも登壇する等、講演多数 。また、テレビ番組でのリスキリング解説や寄稿も多数手掛ける。
著書である『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』(日本能率協会マネジ メントセンター)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」イノベーター部門賞を受賞。