2024年度に入り4人の警察関係者が逮捕・起訴され、本部長の隠ぺい疑惑も取り沙汰されている鹿児島県警。裁判の行方も注目される中、県警は一連の不祥事について再発防止策を発表した。果たして実効性がある内容なのか?専門家の見解を聞いた。

わずか2カ月間に4人の警察関係者が逮捕

鹿児島県警では、2024年4月と5月のわずか2カ月の間に4人の警察関係者が逮捕された。

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このうち7月に不同意わいせつの罪で51歳の元警部に執行猶予付きの有罪判決が、8月5日には捜査資料を漏えいした49歳の元巡査長に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。
このほか、盗撮の罪に問われている元巡査部長と、警察情報を北海道在住のジャーナリストに漏えいし業務上知り得た情報を漏らした罪に問われている、前生活安全部長・本田尚志被告の裁判が残されている。

一連の不祥事を受け、8月2日に県警は再発防止策を発表した。

再発防止策には若手職員の意見も取り入れる委員会の立ち上げも

4人が事件を起こした理由を、8月に有罪判決の出た元巡査長と本田被告については個人情報の保護に対する認識不足、残る2人については倫理観の欠如などとした上で、主に4つの再発防止策が出された。

・警察職員としての自覚や倫理観向上のために、犯罪被害者の講演などを行うこと
・幹部と部下の配置を見直すことや教養の実施
・情報漏えいを防ぐため、個人情報へのアクセス権の見直し
・県民への積極的な情報公開

これらの対策を継続的に実行するため、県警は「改革推進委員会」という新たな組織を立ち上げる方針を明らかにした。本部長と県警本部の各部長、首席監察官で構成され、意思決定や対策の進捗管理などを行う。

また、警部補以下の警察官からなる「改革推進研究会」も設置し、幹部で構成されるこの委員会で直接提言できるようにし、若手の意見も積極的に取り入れる狙いだ。

これらは6月から行われてきた警察庁の特別監察を受けた結果、取りまとめられたが、一方で、元幹部の本田被告が「県警の野川明輝本部長が盗撮事件を隠ぺいした」と指摘した点について、野川本部長は「隠ぺいの意図をもって指示したことは一切ない」と否定していて、この点については特別監察の議題にさえ上がらなかった。

警察組織で完結した再発防止策に専門家は厳しい見方

専門家は、今回の県警の対応をどう見ているのか。

ジャーナリズム専門の早稲田大学・澤康臣教授からは厳しい意見が
ジャーナリズム専門の早稲田大学・澤康臣教授からは厳しい意見が

ジャーナリズムが専門の早稲田大学・澤康臣教授は、「大変残念だが、間違った『診断』に基づく『治療方針』だと言わざるを得ない。警察を離れた第三者、独立性の高い検証委員会のようなものを立ち上げ直し、公正な立場から調べ直すことが必要だった」と、警察組織で完結した今回の再発防止策に厳しい見方を示す。

前生活安全部長の本田尚志被告
前生活安全部長の本田尚志被告

また澤教授は、元幹部である本田被告の主張が特別監察の議題にも上がらなかった点についても、「公益通報ではないかと言われた者に対して見せしめ的に、報復と受け取れるような刑事処罰をしようとしている。(組織として)これで率直な意見具申ができるでしょうか?」と指摘した上で、「議論や施策が透明性を持って行われるかどうかが、形だけの、幕引きのための組織作りだったのか、真に良いものを作ろうとしているのかの分かれ道になるかもしれない」と、組織の透明性を県警に求めた。

今回の鹿児島県警の再発防止策、いかに実効性のあるものにするか、県民も注目している。

(鹿児島テレビ)

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