能登地区の市長や町長に、今の課題や復興に向けた道筋などを聞くシリーズ企画。2回目は輪島市の坂口茂(さかぐち しげる)市長に考えを聞く。
【輪島市の現状】震度7を観測した輪島市ではこれまでに災害関連死28人を含む130人の死亡が確認され、3人がいまも行方不明となっている。住宅への被害は1万4000棟あまりにのぼり、この内、公費解体は申請6191件に対し、完了が166件と2.7%にとどまっている。今も256人が市内の避難所に避難していて仮設住宅はこれまでに2282戸が完成、残りは8月末までにすべて完成する見込みとなった。また、地盤が隆起した輪島港は、依然、漁が再開されないままになっている。(数字は7月9日現在)
思うように進まない復旧…なりわい再建は?
Q地震発生から半年が経ったが、現在市が抱えている課題は何か。
坂口市長:
発災から日々、刻々と変わる課題に解決に向けて取り組んできた半年だった。全国の支援でインフラ、ライフラインの応急復旧ができている事に感謝したい。一方で、一日も早い復旧復興を取り組んできたが、思うように進まないのが残念に思っている。今、輪島市の課題は何と言っても倒壊した家屋の解体撤去。これがなかなか思うように進まない。また自宅の改修の業者がたりない所が大きな課題だと思う。

Q輪島港は復旧に2年から3年かかる見通しだ。輪島塗の仮設工房も整備中だが、まだまだ足りない。なりわい再建をどのように加速させていくのか。
坂口市長:
輪島港に関しては国が権限代行で浚渫などを行っている。漁を開始できるところから少しでも開始したい。9月ごろからの一部の方の漁の開始を目指していきたい。また輪島塗の仮設工房は、現在4戸だけだが、8月中に予定の65戸の内50戸まで完成させたい。

Q門前町の応急仮設住宅では1人で暮らしていた70代女性が孤独死するという事例が発生した。社会福祉協議会などによる見守り活動も行われているが、地震でこれまでとは異なる環境に身を置く人も多い中、市としてはどのように孤立を防いでいくか。
坂口市長:
見守り態勢の充実、相談体制の回数を増やしながら充実させていきたい。今後は多くの人が集まるコミュニティーセンターを仮説に作って、お風呂やお茶会など多くの人が集まって孤独の環境をなくしていきたいと思っている。
Q地震発生後、一時孤立状態となった山あいの地区などでは集団移転も検討されているようだが、現在どのような話が進められているか。また、市としてどのように対応される方針か。
坂口市長:
市に対して具体的にこうしたいという所まで相談には来られていないので、もし来られたら地区の皆さんの意向を実現できるように尊重して相談に乗っていきたいと思っている。
泰山木や隆起した海岸線を震災遺構に
Q朝市通り周辺で奇跡的に残った「泰山木(たいさんぼく)」を震災遺構として保存する考えを示しているが、他に残したいと考えているものは?

坂口市長:
朝市の泰山木は大きな火災の中で奇跡的に残った。花言葉が「前途洋々」という木であるとの事で、是非、残したいと思っている。震災の大きさを顕著に表しているのが隆起した海岸線だと思う。保存できるところは震災遺構として残していきたい。
Q輪島市民にメッセージを
坂口市長:
皆さん大変な中、頑張っていることと思う。市としても国、県と力あわせて、一日も早い復旧復興に向けて全力で頑張っていく。何かあれば相談してほしい。