能登地区の市長や町長に、現在の課題や復興に向けた道筋などを聞くシリーズ企画。3回目は志賀町の稲岡健太郎(いなおかけんたろう)町長に考えを聞く。

震度7を観測した志賀町では2人が死亡し、住宅への被害は7389棟に上った。今も町内5カ所に避難所が開設されていて120人が身を寄せている。仮設住宅はこれまでに194戸が完成し、残る199戸は2024 年8月末までに完成する予定だ。公費解体は3001件の申請に対し、完了が133件、解体に着手したのは350件にとどまっている。(数字はいずれも7月11日現在)

仮設住宅に建設の遅れ…人材不足も課題に

Q地震発生から半年が経ったが、今の目下の課題は何か。

稲岡町長:
半年が経過したが、まだ志賀町には100名を超える方が避難している。仮設住宅は8月末の完成を目指しているが、人手不足や資材高騰で少し遅れていると聞いている。スピードアップしていけるよう県に要望している。人手不足については、6月まで日本中の自治体から支援を頂き、断水の解消はおかげで想定より早くできた。しかし今現在は、多くの職員も疲れがたまり、全体的に人手不足になっている。国や県にそういう点も含め、再度人員派遣していただくよう要望している。

巌門の遊覧船
巌門の遊覧船
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Q巌門など営業を再開している観光地もある。今後の観光振興などはどのように考えているか?

稲岡町長:
町では宿泊施設、飲食店、震災前の8割ほど再開している。しかし被災地に観光に行って良いものかと多くの人が思っているのじゃないかと。志賀町は被害が大きい6市町に比べて南に位置していまして、道路状況良くなっている。是非、観光に足を運んでいただきたい。

志賀原発の避難計画は?住民からは「逃げ道がない」の声

Q続いて志賀原発の避難計画について聞く。原発に近い福浦地区で地震発生時に区長をしていた能崎亮一さんの話だと「海上避難と陸上とヘリコプターでの避難をする計画でやっているが、津波がなくてもしけだと船は使えない。今回の地震では運動場に100台以上の車が避難で来ているので当然ヘリポートとしては使えなかった。車で避難しようにものと里山海道は崩れて通れない。逃げ道がない」とのことだった。また、地震後に原発の情報が町から伝えられなかったことにも不安を感じていた。

福浦地区 元区長の能崎亮一さん
福浦地区 元区長の能崎亮一さん
志賀原発の避難計画
志賀原発の避難計画

稲岡町長:
発災当初の原発の状況が住民に届かなかったとお叱りを受けた。反省している。発災当初から電力会社と情報共有していて、重大事故に鳴らなかった事は把握していたが情報提供が、様々な災害対応に追われる中で抜けていた。反省点だ。

Q志賀原発の避難計画の見直しはどのようなスピードで進めて行く?

稲岡町長:
当初の避難経路が寸断された。また訓練で想定していた空路や海路も使えなかった。そういうことを踏まえ、国の防災基本計画に基づいて自治体が作る避難計画を国県と協議を重ねてより実効性あるものをスピード感を持って進めて行きたい。

地域医療の要「富来病院」の復旧は

被災した町立富来病院
被災した町立富来病院

Q町立富来病院の病棟がこれまでの半分程度になっている。復旧に向けた計画は?

稲岡町長:
発災当初、天井の崩落や配水管の破裂、手術室が使えないなど大きな被害を受けた。病院が機能しないことで他の医療機関に転院搬送した。現在、半分ほどの病床回復したが、まだ半分。現在、修理に向けた設計を進めている。早期の病院機能の回復に向けて、地域医療の核となる病院の再開を進めて行きたい。