能登地区の自治体のトップに今の課題や復興に向けた道筋などを聞くシリーズ企画。初回は珠洲市の泉谷満寿裕(いずみやますひろ)市長に聞く。
【珠洲市の現状】
震度6強を観測した珠洲市ではこれまでに災害関連死14人を含む111人の死亡が確認されている。また6月28日の時点で、757戸で断水が続いている。公費解体は4671件の申請のうち、完了したのが350件と7%ほどに留まっている。このうち蛸島地区と宝立町の鵜飼地区・春日野地区では建物の価値がなくなったとする滅失登記の手続きが進められている。また、珠洲市では仁江町・清水町・大谷町の37世帯が地震により土砂災害の危険性が高まっているとして「長期避難世帯」に認定されている。
断水の解消は「9月末まで」を目標に
Q地震発生から半年が経ったが、今珠洲市では目下の課題は何か?
泉谷市長:
発災から半年たったがなかなか復旧が思うように進んでいない。断水の解消だが、今現在通水できたのが84パーセント、いまだに757世帯が断水が続いている。応急仮設住宅の建設は今必要戸数は1640戸、完成できたのが997戸とまだ6割にとどまる。被災された市民の皆さんは暑くなってくるので申し訳ない、心苦しい思いでいっぱいだ。
Q断水の今後の復旧見通しは?
泉谷市長:
蛸島町は6月末で200世帯あまりに通水することができた。7月には断水を解消したい。あとは宝立町の鵜飼春日野地区については応急復旧として合併浄化槽を設置しながら通水する。これもできるだけ7月中に進めていけると思う。外浦の清水浄水場のエリアは新たな水源を確保して通水するということになる。なんとか9月末までには復旧できるように全力を尽くしていく。
公費解体は今後どう加速させていく?
Q公費解体は完了したのが申請数の7%ほどにとどまる。今後、加速する見通しは?また蛸島地区や宝立町の一部地区で「滅失登記」の手続きは現在どのような状況か?
泉谷市長:
現在110班体制で進めているが8月にいくと130班、8月中旬にいくと150班体制ということで進めていく。滅失登記の県は、今現在環境省法務省の事務連絡に基づいて建物性があるかないか、珠洲市の職員が現地で確認をして、建物性がないと判断したのが69件ある。これについて相続関係者全員の同意が不要で公費解体を実施するということになる。
あわせて職権滅失登記は現在調整中で建物性があるかないかの申請を頂いていないところを進めてもらうことによってさらに加速できると考えている。
地域コミュニティの維持に向けて
Q「長期避難世帯」について住民の方は地域コミュニティを維持できるか不安に思っている人も多い。またそうした地区に「石川モデル」の仮設住宅を作ってほしいとの声も聞くが市長の考えは?
泉谷市長:
仁江町のみなさんにとってふるさとは珠洲市ではないと思う。仁江町の人たちにとってふるさとはあくまで仁江町。仁江町で生活が再建できるように取り組んでいきたい。それと6月1日から14日にかけて市内10地区で地域の皆さんとこれからの復興について議論させていただいた。やっぱり地区によっては津波の被害があったり、仁江町のように土砂災害があったり液状化もある。企画整理事業、液状化対策で新しい形のまちづくりを10地区ごとに策定していく。災害公営住宅もどれだけの戸数を設置していくか、みなさんと議論を重ねて決めていきたい。
Q今回の地震について県では初動対応の検証を行うが、市でもそういった検証をする考えは?
泉谷市長:
これから復興計画を策定していくうえでさらに災害に強い地域づくりは大きな課題なので、その際にこの度の初動の対応を検証していきながら、新たな防災対策を講じていきたい。