生まれつきの脳の機能障害「自閉スペクトラム症」など「発達障害」がある子供たちと真正面から向き合い、居場所づくりを続ける男性が岡山・和気町にいる。子供たちへの支援の重要さに気付いた男性の思いを取材した。

「ただいま!」と言えるような環境

精神保健福祉士の神原大蔵さん(41)は、岡山・和気町と赤磐市で子供の発達支援施設を運営している。

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神原さんは「子供たちが『ただいま!』と言って入ってこられるような環境ができている」と、施設というよりも家に近い状態を目指しているという。

施設には4歳~16歳まで約40人が通っていて、それぞれ自閉スペクトラム症やADHD、知的障害などと診断されている。
厚生労働省によると、約100人に1人が自閉スペクトラム症と診断されていて、感情の共有が苦手、興味が限定的など症状は様々だ。

子供のやりたいことを否定しない

施設の利用は平日の放課後がメインで、神原さんは子供たちの下校時間に合わせて学校まで迎えに行く。

島田ダリオくん(10)は科学者になるという夢を持つ小学5年生で、1年前から施設に通っている。感情の揺れが激しく落ち着きがない症状があり、自閉スペクトラム症やADHDなどと診断されている。

ダリオくんは、電池を入れる部分がさびて動かなくなっている壊れたおもちゃを手に取った。

「お!大蔵さん見て」「お!いけてますね」と話しながら、ダリオくんは約30分間さび取りを続け、神原さんはダリオくんの作業を止めることなく見守る。

神原さんはダリオくんについて「好きなことはめっちゃ集中してやる。嫌いなものは“ふにゃふにゃダリオ”になる」といい、“あげあげダリオ”になるように意識していると話す。

やりたいことを否定しない、それが神原さんの子供への向き合い方だ。

宿題をするダリオくんを“あげあげダリオ”にするために、神原さんは「素晴らしい!天才!」と全力で褒める。

社会に認められた経験が人生に役立つ

2018年まで大人が利用する福祉支援施設で働いていた神原さんは、子供の時に受ける支援の重要さに気付いたという。

神原さんは「自分がしたいことや嫌なことの表現で大きい声を出したり、頭を壁にぶつけたりという行動をしていた大人がいて、大変なやり方を身に付けてしまっているなと。それよりも子供の時に社会的に認められる方法で表現できたらいい」と話し、子供の時、社会に認められた経験が後の人生に役立つと確信したという。

「地球はもともと自然なので。地球で生きていくならこういう所も入れるようにならないと」と話す神原さんは、「山も1つの居場所にしてほしい」という思いから、自然とのふれあいも積極的に取り入れている。

子供たちはセミを実際に触り、自然を体感して楽しんでいる様子だった。

「優しい気持ちに」「励みになった」

子供を施設に通わせる保護者に話を聞いた。

水島申作くん(7)の母・水島小百合さんは、「かんしゃくを起こすことが困りごとだったが、職員が優しくずっと待ってくれたり、私から以外の角度のアプローチをしてくれた」と話し、優しい気持ちで子供も自身も過ごせるようになったという。

また、ダリオくんの母・島田ルイサさんは、「『ダリちゃん』という素材100%を変えなくてもいいんだと。100%そのまま受け入れてくれる。『それでいいんだよ、ダリオは』と言ってくれるそんな場所」と話す。

今までのダリオくんは、学校から帰ってきた時はいつもうなだれていたそうだ。しかし、神原さんの施設から帰ってきたときは、「ママ、ただいま!きょうはこんなことしたんだよ」「(神原)大蔵さんとこんなことした」「相撲して僕勝ったんだ」「負けたんだ」などと話すようになったという。

「パーッと明るくなって、本当に励みになった」とルイサさんは話し、父の島田ダニエルさんとともに、「変わったよね、すごく」「めちゃ変わった」とほほえんでいた。

自分の中の真実を見つけられる力を

神原さんには譲れない信念がある。

神原さんは、「『普通』って1人の個人が決めた基準であって、それを普通だって押し付けるのは厚かましいというか、違うんじゃないかな。『これって本当に普通なのかな』って疑う目で本当の自分の中の真実を見つけられる力を身に付けた方が、人生が豊かになるのではないか」と語る。

ダリオくんに、神原さんのことをどう思っているのか聞いてみると、「好き。大好き。笑いが多くてお笑い芸人みたいなところが面白くて好き」と照れたように話してくれた。

様々な症状を抱える子供たちにとって、神原さんは「自分は自分のままでいい」と思わせてくれる存在だ。

(岡山放送)

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