教室に入ることにストレスを感じ、学校から足が遠のいてしまう…。そんな生徒たちにとって、学校の中に「安心できる居場所」があることは、大きな支えになる。広島県内の学校で広がる「SSR(スペシャルサポートルーム)」の取り組みを取材した。

下駄箱のすぐそばに“自分の居場所”

東広島市立八本松中学校を訪れた久保田夏菜リポーターが案内されたのは、下駄箱からほど近い場所にあるSSRだった。ほかの生徒の目を気にすることなく、登校してすぐに入れるよう配慮された部屋である。

東広島市立八本松中学校・郷地忠幸 校長
東広島市立八本松中学校・郷地忠幸 校長
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郷地忠幸校長は、SSRについてこう説明する。
「教室に入りづらい子どもたちが増えている。その子たちが安心していられる居場所をつくることが第一の目的です」

自分のペースで、過ごし方を決める

部屋に入ると、明るく広々とした空間が広がっていた。

八本松中学校のSSR(スペシャルサポートルーム)
八本松中学校のSSR(スペシャルサポートルーム)

中央には大きな机が置かれ、壁際と廊下側にはパーティションで区切られた机が並ぶ。安心して自分のペースで過ごせるように配慮されている。

その日の登校時間と過ごし方を自分で記入
その日の登校時間と過ごし方を自分で記入

正面のホワイトボードに、その日の予定が書き込まれていた。
生徒は登校時間を記入し、どの授業を教室で受け、どの授業をSSRでオンライン受講するかを自分で決める。先生がSSRに来て授業をしたり、その生徒に合わせた課題を出すこともあるという。

山本ももか教諭は、「教室で過ごしていてしんどくなったときに、ここに戻ってリラックスすることもできます」と話す。教室とSSRを自由に行き来できることが、生徒の安心感につながっている。

山本先生「まずは仲良くなること」

広島県教育委員会は2019年度から、不登校の児童・生徒を支援するため、県内の指定校にSSRを設置。八本松中学校では2025年から山本先生が担当している。

東広島市立八本松中学校・山本ももか 教諭
東広島市立八本松中学校・山本ももか 教諭

着任当初は、生徒との距離を縮めるのに苦労したという。それでも、趣味の話をしたり、一緒に梅シロップを作ったり、コミュニケーション活動を通して少しずつ信頼関係を築いてきた。
「まずは仲良く話せることが一番大事なので、そこを意識して過ごしました」

山本先生が大切にしているのは、生徒が自分で選べる環境をつくることだ。
「無理に教室に行こうとすると、あとで気持ちが下がってしまうこともあります。自分のペースで、自分で決めることが一番大事だと思っています」

会話のストレスを減らす工夫

生徒がホワイトボードに書き込んだ1日の予定は、教員とのやりとりをスムーズにする役割も果たしている。

リモートで受けるか教室で受けるか一目で分かる工夫
リモートで受けるか教室で受けるか一目で分かる工夫

丸印のある科目はオンラインで受講し、丸印のない科目は教室で授業を受ける。生徒の予定が一目で分かるため、教員がその都度確認しなくても「次の時間は一緒に教室へ行こう」「オンライン授業の準備をしよう」とサポートできる。こうした“会話を減らす工夫”も、生徒たちがストレスなく過ごせる理由のひとつだ。

また、気持ちを表すマークも用意されている。
花のマークは「ひとりで静かに過ごしたい」、にこちゃんマークは「友達や先生と話したい」というサイン。言葉にしづらい気持ちも、無理なく周囲に伝えられる。最初は話せなかった生徒同士が、SSRで出会い、友達になって一緒に教室へ向かうようになったケースもあるという。
現在、八本松中学校では15人がSSRを利用登録し、1日平均5~6人が利用している。

「すごいね!」 全力で認めて自信に

SSRでは勉強以外に、絵を描いたり、手芸作品を作ったりと、生徒の「好き」や「得意」を認める時間も大切にしている。

SSRに展示された生徒たちの作品
SSRに展示された生徒たちの作品

部屋の入り口付近に、生徒が描いたイラストやぬいぐるみが飾られていた。どの作品に対しても、山本先生は「すごいね!」という気持ちを全力で伝えるようにしているという。

「自分の意思で動くことや、自分の目標に向かって頑張ることは、中学校を卒業した後も大切になってきます。だからこそ、生徒が自分の思いを伝えるまで待つことや、自分で選択できる環境をつくってあげたり、自己決定の場を大切にしています」

郷地校長は、SSRを利用する生徒たちの変化をこう見つめる。
「最初は学校に来ること自体に不安を抱えていても、あの部屋に入ると安心し、徐々に心が解放されていく。そうすると、子どもたちの中で『もう少し自分を高めたい』という欲求が出てきて自分自身で変わっていける」

SSRに来ることで家族以外の人と接する機会が増え、“良い連鎖”も生まれている。
先輩の進路決定の様子を見て自分の進路について考え始めたり、同級生が教室へ向かう姿に背中を押されて「私も行ってみよう」と思えることもあるという。
山本先生は、家で過ごすことの大切さを認めつつ、「こうした場でいろいろな人と関わることもすごく大事だと感じています」と話す。

SSRは、学校の中で安心して過ごせる居場所。そして、自分で決める力を育む場にもなっている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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