食の雑誌「dancyu」の編集部長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「味噌汁」。
神楽坂にある和食の名店「懐石小室」を訪れ、和食の醍醐味である一品を紹介。国内外から評価される“和食の神髄”を極めた料理人が突き詰めた味を伝授する。
神楽坂の住宅街にある和食の名店
「懐石小室」があるのは、東京・神楽坂。
「神楽坂といえば、いろいろなお店があります。粋な感じの和食屋さんとか小料理屋さんなど。路地の奥にも良い料理屋さんがあります」と植野さん。
路地に入ると景色が一変し、「東京で少なくなっている豆腐屋さんもあります、銭湯も。八百屋さんもあるし、生活の香りがしっかりありながら、昔ながらの古い食文化も残っています」と街の景色を楽しんだ。
和の料理人の確かな技術が感じられる料理
「懐石小室」の入り口までの小径には、四季折々の花が咲き、情緒ある佇まい。
広々としたオープンスタイルで、1階にはカウンター席、2階には個室がある。営むのは、日本を代表する和の料理人のひとり、小室光博さんだ。
この記事の画像(9枚)確かな技術と厳選した旬の食材を使い、「ここに来れば料理から日本の自然の豊かさを感じられる」と多くの人に評価されている。
洗練された和食を味わいに、季節がかわるたび、訪れたい店だ。
懐石とはお茶会でお茶を頂く前に振る舞われる料理のこと。
空腹時にお茶のカフェインで胃を刺激しないようにするため優しい味付けの一汁三菜が基本だが、宴会の席でお酒と楽しむ会席料理との区別も徐々に薄まり、四季折々の旬の食材を楽しめるコース料理として知られている。
「懐石小室」でも月ごとに変わる食材を使った日本料理のフルコースが存分に味わえる。
“和食を極めたいのなら一流を目指せ”
高校生の時、板前になると決心した小室さん。
卒業後、調理師学校に通い、そこで講師の先生に言われた言葉が今につながっているという。
講師から「小室くん、和食を極めたいのなら一流を目指しなさい!」と言われた小室さんは「一流…ですか?」と驚いたそう。
その講師は「和食は一流の店ほど基本がしっかりしているからね」と話すと、「わかりました!一流を目指します!」と小室さんはこの道に進んだ。
19歳で、千代田区九段にあった懐石料理の名店「和幸」に入社した。
「『和幸』さんの修行、何が大変だった?」と尋ねる植野さんに、小室さんは「決まりごと、例えば衛生観念含めてレベルが違うわけです。何でそれだけ続けたかというと、炊いている黒豆を食べた時、キメの細やかさが今までのものとは違いました」と答えた。
約7年間「和幸」で修業し、和食の基本を学んだ小室さん。
その後、ふぐ料理店で2年ほど腕を磨いたあと、“出張料理人”として、お茶の先生が開く茶事やお祝いの席で料理を振るまい、2000年、満を持して「懐石小室」をオープンした。
「和幸さんもそうですけど、子供の頃から今までやってきた事の集大成が今って感じですか」と植野さん。小室さんは「やっぱり天職、これ以外の仕事は中々考え付かないし、ありがたいなぁと思っています」と答えた。
こちらが本日のお目当て、懐石小室の「味噌汁」。
一口食べた植野さんは「味噌を感じるけど味噌の汁ではないし出汁を感じるけどお吸い物ではない。“丁度ここ”という感じの澄んだ味わい」と解説。
懐石小室「味噌汁」のレシピを紹介する。