福岡のお笑い芸人「ノボせもんなべ」さんは芸歴15年で38歳、ピン芸人として活動している。イギリスで世界最高峰のオーディション番組に出演すると、特別な「ゴールデンブザー」を獲得、準決勝に進んだ。
「唯一無二の芸」と高く評価され、決勝進出をかけた戦いに挑むノボせもんなべさんに密着した。

「髪モノマネ」で世界を沸かせる

世界最高峰のオーディション番組で頂点を目指す福岡のお笑い芸人、福岡市出身「ノボせもんなべ」さん(38)。芸歴は15年で、ピン芸人として活動している。

「スヌーピー」の髪モノマネを披露するノボせもんなべさん
「スヌーピー」の髪モノマネを披露するノボせもんなべさん
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「僕がやっているネタは、自分の髪を使ったネタです。僕、薄毛なんですけど、横から髪を持って来て、薄毛じゃない髪型にできる」と持ち芸について語ったなべさん。髪をまくり、まとめると…有名キャラクター「スヌーピー」の“髪モノマネ”を披露した。

この自身の髪を使って作る髪モノマネで“世界”を沸かせたなべさんは、なんとイギリスの人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出場し、審査員がシーズン中に1度しか押せない、特別な「ゴールデンブザー」が押され、準決勝に駒を進めた。

準決勝進出が決まった時の様子を振り返るノボせもんなべさん
準決勝進出が決まった時の様子を振り返るノボせもんなべさん

なべさんは、「びっくりです。人生最高の笑いをいただきましたね。本当に、今までの下積みの15年が『この景色を見るためだったんだ』と思わせてくれるぐらい最高の景色でした」と、番組に出場した様子を振り返った。

審査員は、彼にしかできない「唯一無二の芸」と高く評価したという。準決勝は、全て新ネタで勝負するというなべさん。その1つ「バットマン」を披露したが、取材班には受けず、なべさんは「ちょっと不安になってきた…」とこぼしていた。

小学校からの幼なじみとコンビを結成

現在はピン芸人のなべさんだが、以前は小学校からの幼なじみ、「まーちん」さんとコンビを組んでいた。「中学校3年の時に塾が同じになって、そこから意気投合して『コンビ組もうぜ』となった」と当時を振り返る。共にお笑い好きだった2人は東京の大学に在学中、お笑いの養成所に入り、養成所を卒業後は福岡に戻って芸人として本格的に活動を始めたのだ。

1年目にしてセンターポジションだったというバラエティー番組
1年目にしてセンターポジションだったというバラエティー番組

若手だった頃についてなべさんは、「いきなり1年目で、バラエティー番組のセンターポジションで“福岡の99(ナインティナイン)”と言われ、めちゃくちゃうれしくて、『やった』と思っていたんですけど、2年で番組も終わり、そこから仕事もないわ、バイトばっかりしてギリギリの生活でしたね」と振り返った。

若手の頃のノボせもんなべさんと元相方まーちんさん
若手の頃のノボせもんなべさんと元相方まーちんさん

若手の頃、1回の出演料は1人1250円。お金がなく苦しい日々が続いたなべさんだが、そのたびに周りが支えてくれた。
事務所の先輩の「パラシュート部隊」の斉藤優さんには、“週5”ぐらいご飯をごちそうになったりして、なんとかやっていけていたという。

ピン芸人として…髪モノマネで勝負

芸歴を重ねるうちに仕事も増えてきたが、2020年に転機が訪れた。相方だったまーちんさんが、結婚を機に「芸人を辞めたい」と言ってきたという。
そしてなべさんは、ピン芸人として戦うため、これまで誰もしてこなかった髪モノマネ一本で勝負する決意をした。

元相方のまーちんさんは芸人を辞めた後、音楽の専門学校の職員となり、夢を追う若者たちのサポートしている。

取材班は、まーちんさんのもとを訪ねた。お笑いの世界からは離れたが、今でもステージを見ると自分が舞台に立っていた頃を思い出すと懐かしがるまーちんさんは、「ネタをやりたくなりますよ。いまだに夢とか見ますもん。お笑いを嫌いで辞めたわけではないので。お笑いは、世界一すてきな職業だと思っているので。なべとか先輩、後輩がお笑いをやっているのを見ると『いいな、楽しそうだな』と思います」と話す。

「ゴールデンブザー」を獲得した際に降り注いだ金の紙吹雪
「ゴールデンブザー」を獲得した際に降り注いだ金の紙吹雪

まーちんさんは、なべさんがイギリスから帰国してすぐ会いに行ったという。そこで、もらったものが、「ゴールデンブザー」のときの紙吹雪だった。なべさんは、イギリスのステージで降り注いだ金の紙吹雪をかつての相方のために何枚か持ち帰っていた。

まーちんさんは、ステージに上がったなべさんについて「かっこよかったですね。芸人の生きざまあるなって。マジで頑張ってほしいし、いろんな方から『相方はすごいね』と言われるので、本当にうれしい。僕も頑張らないとなと、刺激をもらっています」と語った。

「過去最高の笑いを」決戦の舞台へ

5月19日、なべさんは再び決戦の舞台イギリスへ向かった。「ブリテンズ・ゴット・タレント」の準決勝に挑むのだ。

なべさんは「(優勝賞金)4900万円、250万ポンド、やばいですね。一見コンプレックスという人もいると思うんですけど、『コンプレックスを武器にするのかは自分次第だよ』と伝えられたらいいですね」と語り、そして一言、「“ハゲ”みになります」と意欲を見せた。

唯一無二の武器を携えて、いよいよ日本時間の5月31日未明、準決勝を迎えた。

本番前、なべさんは「いよいよセミファイナル当日です。3000人のお客さんを笑いで盛り上げられるよう頑張っていきます」と意気込みを語った。

瞬時に人気キャラクターになりきるなど、この舞台のために用意した6つの新ネタで会場を沸かせたなべさん。

惜しくもファイナル進出を逃したノボせもんなべさん
惜しくもファイナル進出を逃したノボせもんなべさん

しかし、準決勝敗退となってしまった。なべさんは「お客さんはとても盛り上がって過去最高の笑いをいただいたので、『これはいくだろう』と思っていたんですけどね。悔しいですけど、後悔はないです。『またここから道が開けるんじゃないか』という気持ちで、より一層頑張りたいと思います」とコメントした。

惜しくもファイナル進出とはならなかったが、活躍の舞台を福岡から世界へと大きく広げたようだ。

(テレビ西日本)

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