どんなに忙しくても、睡眠より趣味や楽しみを優先したい人もいるだろう。

都内在住の50代男性会社員の楽しみはお酒だ。仕事と趣味の“推し活”に忙しく、睡眠時間は平均4時間と少ないが、「お酒を飲みながらのテレビ鑑賞が楽しい」と毎日晩酌している。

(気絶のような寝落ちをすることも?50代会社員が陥った“魔の睡眠環境”
https://www.fnn.jp/articles/-/695709

深夜1~2時頃まで起きているため、早めに切り上げて睡眠に割り当てたいところだが、1日の楽しみである晩酌は簡単にやめられない。しかし、「いつも眠い」という悩みもある。

そこで、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身医師に、お酒をやめずとも質の良い睡眠を手に入れる方法を聞いた。

飲酒は就寝3時間までに

「21時頃に帰宅してから2~3時間は、テレビを見ながら、ほぼ毎日お酒を飲んでいます。お酒を飲んでいるからか深夜0時~1時頃まで眠くなることがまずないです。

深夜1時半~2時には寝ようと思っていますが、週1回くらいの頻度でお酒が入ったグラスを持ったままソファで寝ることもあって、お酒がこぼれて3時か4時頃に目を覚ますこともあります」(50代男性)

梶本医師は、「寝付きが悪い人ほどお酒を飲んで寝ようとする人がいます。ですが、お酒を飲んだところで深い睡眠にならない。うっすら起きているような、寝ているような状態なのです」と話す。

お酒を飲んでも深い睡眠にはならない(イメージ)
お酒を飲んでも深い睡眠にはならない(イメージ)
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もちろんこの男性は、「寝るためではなく、楽しみ」だと言っているが、梶本医師は「就寝前の飲酒には覚醒作用がある」と指摘する。

アルコールには、睡眠作用・睡眠誘発作用があるため寝付きがいいように思うが、アルコールの中途代謝物には、覚醒作用もあるため、質の悪い睡眠につながってしまう。

そのため、梶本医師は、「飲酒から“最低3時間”あけて就寝してほしい」と話す。

飲酒は就寝の最低3時間前まで、おつまみは4時間前まで(イメージ)
飲酒は就寝の最低3時間前まで、おつまみは4時間前まで(イメージ)

「人間は、食べたものを消化するのに時間を使うため、お酒を就寝する最低でも3時間前までにする。おつまみなどを食べる際は、就寝4時間前までに食べてほしいです。脂っこいものを遅い時間に食べることは、控えた方が質の良い睡眠へつながります」

さらに、食事内容を工夫することでも、質の良い睡眠を手に入れられるという。

鶏の胸肉1日100グラム摂取で疲労軽減

「夜は野菜が多いです。コンビニでパスタサラダとかキャベツの千切りに、コロッケなど揚げ物を1個買って食べたりします」(50代男性)

梶本医師は、睡眠の質を良くすることとして、「鶏の胸肉など動物性タンパク質を摂取することが望ましいです。特に60代以上の方は」という。

「睡眠の1番大切な役割は、自律神経を休めて疲労回復すること。鶏の胸肉には、自律神経の疲れを抑えてくれるイミダペプチドが含まれているため、1日100グラム程度摂取することで自律神経の疲れを軽減し、質の良い睡眠へつながります」

鶏の胸肉1日100グラム摂取で質の良い睡眠へつながる(イメージ)
鶏の胸肉1日100グラム摂取で質の良い睡眠へつながる(イメージ)

前述の50代男性の1日の食事は、1日2食。昼食と夕食は食べるが、朝はあまりお腹が空いていなくて、食べない。

「この方は、お話を聞いていると夜型かと推測します。そういった方や朝に活動的でない人は、無理に朝食を食べなくていいです。理想は、朝食を食べることですが、合う・合わない人と自分の生活リズムがあるので、『必ず朝食を』とは言いません。合う人は、目覚めるために朝食を食べるというのも1つの方法です」

睡眠環境とサーカディアンリズムをよくする

50代男性は、お酒を飲んだままソファで気づいたら寝落ちしていることもあるそうだ。梶本医師によると、食事に加えて、環境を良くすることも睡眠の質を上げるには効果的だという。

「例えば、眠る前の1時間を明るすぎない環境で過ごすなど、睡眠へ導くための環境作りがお酒の代わりとして眠りを導いてくれます」

夜の眠気は、起床時に浴びた強い光=太陽の光で眠くなる時間が決まる。同じ時間に起床・光を浴びることを繰り返すと、体内でリズムができあがり、そのリズムが脳と合ってくるため、夜眠くなる時間が決定すると梶本医師は話す。

「また例えば、平日朝6時に起きているのに、休日朝11時に起きてしまうと、5時間の“ひとり時差ぼけ”が生じます。そうすると、夜眠る時間も遅くなってしまい、どんどん寝る時間が遅くなってしまいます」

起床時に浴びた太陽の光で眠くなる時間が決まる(イメージ)
起床時に浴びた太陽の光で眠くなる時間が決まる(イメージ)

人間の体内時計は、1日約24時間のリズムで、夜11時に眠くなる場合、翌日も夜11時に眠くなるという「サーカディアンリズム」がある。

“ひとり時差ぼけ”により、この「サーカディアンリズム」が25時間周期などにずれていく人が多く、「朝起きる時間と眠る時間を一定にする」などとリズムを整え、睡眠環境を良くすることが大切なのだそう。

お酒をやめずに質の良い睡眠を手に入れるには、「お酒は寝る3時間前までに」「食事に鶏の胸肉を取り入れる」「サーカディアンリズムを整える」といった3つのポイントを意識するだけでも睡眠に変化があるかもしれない。

50代男性は、梶本医師の“質の良い睡眠”の取り方で、趣味やお酒を楽しみながら眠れる日々を手に入れられるのだろうか。

プライムオンライン特集班
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