劇団員の女性が死亡した問題で、宝塚歌劇団側がパワハラ行為を認め、遺族側と合意に至ったことを明らかにした。

【動画】宝塚歌劇団 劇団員死亡 「取り返しのつかないことをしてしまった」阪急阪神HD社長が謝罪

28日午後4時、宝塚歌劇団を運営する阪急阪神ホールディングスが緊急記者会見を開いた。

阪急阪神ホールディングス嶋田泰夫社長:取り返しのつかないことをしてしまいましたことにつきまして、申し開きのしようもありません。改めてこの場をお借りいたしましてご、遺族の皆様に心より謝罪を申し上げたいと思います。誠に申し訳ございませんでした。

■当初は「いじめやパワハラはない」

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2023年、宝塚歌劇団の宙組に所属する劇団員の女性(当時25歳)が死亡しているのが見つかり、自殺とみられている。

劇団側は当初、過密なスケジュールなどで劇団員に心理的負荷がかかっていた可能性を認めた一方、いじめやパワハラは確認できなかったとしていた。

これに対し、遺族側は「到底納得できない」として、故意にヘアアイロンでやけどさせるなど、上級生や劇団幹部らによる15件のパワハラがあったと主張。

劇団側は遺族側の証拠の提示を受けて、事実上の再調査を行うことになり、パワハラについて7件はほとんどの内容を、6件は一部を認めたが、2件は否定していた。

■宝塚歌劇団がパワハラ認める 遺族側と合意

そんな中、28日に事態は大きく動いた。午後4時から会見を開いた宝塚歌劇団。 劇団を運営する阪急阪神ホールディングスの社長らが、劇団員が死亡したことについて全ての責任が劇団にあることを認めた上で、28日午前、角和夫会長(74歳)が遺族と直接面会して謝罪し、合意したことを発表した。

阪急阪神ホールディングス嶋田泰夫社長:ご遺族と直接面会し、謝罪を申し上げたうえで、合意書を締結させていただきました。誠に申し訳ございませんでした。

劇団は遺族が主張していた劇団幹部や上級生らによる複数のパワハラについても大筋で認めた。

阪急阪神HD大塚順一執行役員:(遺族は)主要な行為が15件あるとされていましたが、遺族と話し合いした結果、最終的に14項目に整理して合意した。

阪急阪神ホールディングス嶋田泰夫社長:厳しい叱責が仮に悪意がなかったとしても、ハラスメントにあたるという気付きが(上級生の)劇団員にもなく、何よりも我々が教えてもいなかった。時代に合わせて変えてこなかったのは劇団でありまして、その責任は極めて重いと考えている。

■「時代に合わせてルールや指導方法見直す」

劇団は死亡した背景に、過密な公演スケジュールや劇団員のサポート体制が不十分だったことなどをあげ、今後、稽古のスケジュールの見直しや、劇団員専用の相談窓口を設置するなど再発防止に努めるとした。

さらに、劇団の特殊なルールや慣習についても見直していくと発表した。

宝塚歌劇団村上浩爾理事長:さまざまなルールや慣習がありますが、中には古くからの伝統や慣習が積み重なり、非効率になっているケースや過剰な気遣いや負担が生じているケースがあることから、時代に合わせてルールや指導方法を見直し、意識改革を図りながら伝承してまいります。

■遺族側も会見「娘に会いたい、生きていてほしかった」

一方、遺族側の代理人も午後4時から会見を開いた。

遺族側の代理人・川人博弁護士:合意書で明確に多数のパワハラの存在を認め、遺族に謝罪した。阪急・劇団側の不当な対応を変更させ、調査チームの結論を覆したものであり、その意義は大きい。

劇団側が当初は否定したパワハラ行為を認め、合意にまで至ったことについて代理人弁護士は“劇団員の妹”の言葉を引用しこう評価した。

遺族側の代理人・川人博弁護士:「治外法権」のような劇団内部の実態を改革し、悪しき伝統を見直す第一歩として重要な意義を有する。今後の劇団における劇団員の人権・健康を守っていくうえで重要な礎石となった、こう考えます。

また、劇団員の母親の受け止めも代読された。

母親コメント:あの日から季節は幾度か変わりましたが、私たちの時間は止まったままです。娘の尊厳を守りたい一心で、今日まできました。事実を訴え続けた結果、多くのパワハラを認め、本日ようやく調印となりました。言葉では言い表せないたくさんの複雑な思いがあります。娘に会いたい、生きていてほしかったです。

■今回の合意について…元劇団員は「不信感が強まった」

元劇団員の方に今回の合意をどう見たのか聞いた。

元劇団員:認めないと思っていたので驚いた。在団時代からプロデューサーや劇団幹部はトップや上級生の肩を持っていた。下級生はいくらでも代わりがいるから、どうでもいいという感じ。最初の「パワハラはなかった」、これは何だったのか、より劇団に不信感が強まった。

■劇団が示した“再発防止”とは?

劇団側が示した再発防止策は…

■興行計画の見直し(公演回数の削減)、稽古スケジュールの見直し
■劇団専用の相談窓口を設置し、劇団員の意見を経営層に届ける仕組みをつくる
■伝承されてきた習慣やしきたりの見直し
■劇団改革の実効性を高めるサポート体制を整備。そのために4月1日付で外部有識者によるアドバイザリーボードを設置

関西テレビ・神崎博報道デスク:やはり世論の圧力と言いますか、やっぱり今、音楽学校入学を希望する人が減ってきているというのは、実際には数字として表れている部分もあります。遺族側も指摘していた治外法権的なところがあるのに、その「おかしさ」になかなか劇団が気づいていなかったというのは、やっぱり事実としてあると思うんですね。今回、この再発防止策を一気に進めていって、世の中の流れにちゃんと合わせていって、宝塚を新しい組織にするっていうのは非常に大事なのじゃないかなと思います。

 (関西テレビ「newsランナー」 2024年3月28日放送)

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