3月21日からカナダ・モントリオールで開催される世界選手権。

日本からは今年、世界選手権2連覇中の坂本花織、四大陸選手権優勝の千葉百音、GPファイナル3位の吉田陽菜が出場する。

いまや世界最強時代に突入したニッポンだが、今年はそうはいかない。

前回の世界選手権で女王・坂本を4点差までに迫った銀メダル、イ・ヘイン(韓国)。

2023年の世界選手権表彰台
2023年の世界選手権表彰台
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そして世界選手権2年連続の表彰台、欧州選手権を制したルナ・ヘンドリックス(ベルギー)や、15歳で全米を制した新エース、イザボー・レヴィト(アメリカ)ら強豪たちが更なるパワーアップを果たし日本の前に立ちはだかる。

彼女らに挑むニッポンの一人が、初めての世界選手権に出場する千葉だ。

拠点を変えるなど、激動のシーズンを送った千葉の今季最終戦は「ショート、フリーともにノーミス」を目指す。

四大陸は緊張で顔が引きつっていた

これまで地元・仙台のアイスリンクで練習していた千葉は、シニア1年目の節目となる2023年5月、拠点を京都・木下アカデミーに移した。

今シーズン、GPシリーズデビューするが、思うような結果にはならなかった。

2023年の全日本で表彰台に立った千葉百音
2023年の全日本で表彰台に立った千葉百音

それでも、年末の全日本選手権ではガッツポーズが飛び出るほどの演技を披露し、2位表彰台にのぼる。

そして、初めての世界選手権への切符を手にした。

渾身のフリーを披露した千葉(2024年四大陸)
渾身のフリーを披露した千葉(2024年四大陸)

2月上旬の四大陸選手権にも派遣され、ショートとフリーどちらも全てのエレメンツでプラス評価を獲得。

ガッツポーズが飛び出す、完璧な演技で初優勝を飾った。

演技後には力強いガッツポーズ(2024年四大陸)
演技後には力強いガッツポーズ(2024年四大陸)

緊張のあまり顔が引きつるのが自分でもわかるほどだったという千葉。

全日本から四大陸までは調子が上がらず、不安を抱えながらの大会だったと振り返る。

「すごく緊張していた」というショート(2024年四大陸)
「すごく緊張していた」というショート(2024年四大陸)

「すごく緊張していました。全日本選手権の前よりも調子がやや下がってしまっていた。不安が残ったまま試合に臨んで、もちろん不安要素が多いと緊張するので、全日本よりもさらに緊張してしまいました」

大きな収穫となった四大陸

そうした状況で大会を迎えたために、練習から本番までの間、緊張と疲労感でいっぱいいっぱいだったと語る。

気力で乗り切った四大陸の翌日はホッとした表情に
気力で乗り切った四大陸の翌日はホッとした表情に

「1日に40分の練習が2本あるのがなかなかしんどかったですね。

それが試合始まるまでに2日間あって、ショートの日は疲れすぎないようにしようと練習していたんですけど、それでもちょっとバテてる感じになってしまって。

ショートの公式練習が終わってから、休憩時間もあまりなかったのでしんどくて、フリー後は『やるしかない!』と思って、頑張って踏ん張りました」

それでも「日を追うごとに疲労感は増していきましたが、体の軸は安定してきていたので行けるかなと思いました」と千葉。

2024年の四大陸で優勝した千葉
2024年の四大陸で優勝した千葉

「緊張しないとちゃんとできないタイプ」だという千葉は、緊張を感じながら、「やるしかないという感じで、全力で臨みました」と最後は気力で乗り切ったという。

そうしてつかんだ主要国際大会での初優勝は、千葉にとって大きな収穫だ。

「今回決して完璧なコンディションではありませんでした。

緊張しながらも丁寧に演技ができたことは、大きな収穫です。(世界選手権までは)1カ月余りですけど、四大陸選手権よりも大きな大会なので、その分緊張すると思う。

その緊張に打ち勝てるくらい仕上げていきたいです」と意気込んだ。

移籍後の不安と辛抱…

高校3年生で京都に拠点を移し、年末の全日本選手権からの快進撃。千葉は「なかなか激しかったシーズン」だと語る。

濱田美栄コーチから指導を受ける千葉(2023年11月)
濱田美栄コーチから指導を受ける千葉(2023年11月)

「この1年、自分で移籍を決めて京都に移ったからには、より一層頑張らなきゃいけないと思っていました。その中で、なかなか調子が出なくて、すごく不安が募る時期もあって。

体感としては、不安でしょうがない時期が長かった。全日本選手権の前あたりから、自分の流れがつかめてきたなと感じて、11月くらいまでは本当に辛抱したなと自分でも思います。

それを乗り越えていかないと成長できない部分もあると思うので、シーズン最初はなかなか結果が出ませんでしたが、大会で結果を残せて、とりあえずいいシーズンと言えると思います」

氷上練習をする千葉(2024年3月)
氷上練習をする千葉(2024年3月)

今シーズン最後の大舞台、世界選手権に向けてはまだ「重圧は感じていない」という。しかし、四大陸から数日後に「じわじわと感じてきそう」と話した。

「プレッシャーを感じるのはおかしくないと思うので、もし感じてきたら、それだけでよくて、期待に応えられるように私は(世界選手権までの)練習を頑張るだけ」

今季最後の大舞台は「最高の演技」を

そして3月1日、通っていた東北高校の卒業式に出席した千葉。

東北高校の卒業式に出席した千葉
東北高校の卒業式に出席した千葉

クラスメイトの前で感謝の言葉を述べ、両親の心強いサポートもあって乗り越えることができたと、学生生活を振り返り、涙を流した。

さまざまなことがよみがえり、涙があふれ出す千葉
さまざまなことがよみがえり、涙があふれ出す千葉

「環境が変わって厳しいことやツラいこともあったけど、みんなの応援もあったから全日本選手権、四大陸選手権で結果を出せたと思います。

この3年間はフィギュアスケートを頑張ることができた3年間。いろんな先生方に支えられて勉強とフィギュアスケートの両立ができました」

卒業後は「スケートに集中したい」と語る千葉
卒業後は「スケートに集中したい」と語る千葉

今後の進路として拠点はそのままに大学へ進学し、来たる2026年のミラノ・コルティナ五輪に向けて、さらなるレベルアップをはかるという。

「来年、再来年はフィギュアスケートに一番集中したい年でもある。でも、勉学も怠らずにやりたい」

世界選手権に向け氷上練習に励む(2024年3月)
世界選手権に向け氷上練習に励む(2024年3月)

千葉にとって今季、最後の大舞台がもうまもなくだ。

「シニア1年目で世界選手権に出られることは光栄。順位はどうなるかわかりませんが、ショート・フリーノーミス演技で、自分ができる最高の演技をすることが目標です」

一つの節目を迎えた千葉、その節目に相応しい最高の演技で初の大舞台を乗り切ってほしい。

世界フィギュアスケート選手権2024
3月22日(金)男女ショートよる7時~
3月24日(日)男女フリーよる7時~
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html


 

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班