3月21日からカナダ・モントリオールで行われる世界フィギュアスケート選手権。

今年は世界の強豪がパワーアップして集結する。

人類史上初の大技をショートでも組み込む“4回転の神”イリア・マリニンをはじめ、ハイレベルな戦いが予想される。

そんな大舞台に、日本男子は宇野昌磨、鍵山優真、三浦佳生が出場する。

3選手の中で唯一初出場の三浦は、上位進出のために4回転ジャンプの変更を決意。

フリー『進撃の巨人』を披露する全日本選手権(2023年)
フリー『進撃の巨人』を披露する全日本選手権(2023年)
この記事の画像(11枚)

シーズンクライマックスに向けて、フリー『進撃の巨人』のように、世界を驚かせるような「進撃をしたい」と野心をむき出しにする。

こう意気込む三浦は「もう守るものがない。自分を出し切って、完璧に滑って自分のできることを出していきたい」と闘志を燃やしていた。

代表選出の瞬間は仲間と

年末に行われた全日本選手権。

男子は近年まれにみる凄まじい戦いが繰り広げられた。

4位だった2023年の全日本
4位だった2023年の全日本

表彰台まであと一歩の4位だった三浦。

それでも、昨シーズンから四大陸選手権と世界ジュニアの2冠、GPファイナル2年連続出場の評価もあり、宇野、鍵山に続く3枠目の世界選手権代表を初めてつかんだ。

「メダリスト・オン・アイス」に出演した“関東卍ボーイズ”がVTRフリに挑戦
「メダリスト・オン・アイス」に出演した“関東卍ボーイズ”がVTRフリに挑戦

代表に選ばれた瞬間は、鍵山と佐藤駿と一緒にいたという。

「女子の全日本を観戦して帰って、(鍵山)優真と(佐藤)駿と焼肉を食べながら、代表発表を待っていました。

もう本当に嬉しかったです。代表を狙っていたので、代表になることができて、本当に良かったです。あとはもっともっと練習して、上手にならないと、という気持ちが増しました」

全日本で痛感したトップとの距離

さらなる練習が必要だと痛感したワケは、ハイレベルな全日本の戦いがあったからだと振り返る。

「僕が出た中で過去一番すごい試合でした。

僕は最終グループでしたが、第3グループの後半あたりからみんないい演技で、自分の出番がきたときはすごく緊張しました。

その上で4位は、まだまだ、もっともっと上手にならないと表彰台に立てないんだなと」

全日本から一夜明け、世界選手権への意気込みを語る三浦
全日本から一夜明け、世界選手権への意気込みを語る三浦

そんな中でもつかんだ世界選手権の代表。

初めての大舞台を三浦は、過去の悔しさを晴らす機会にもしたいと語る。

「いろいろな大会に初めて出る時って、すごくワクワクしたり、うれしかったりします。

世界選手権も、もちろんワクワクもありますが、2年前に1度、補欠の繰り上がりで出場予定だったのが、ケガをしてしまって出られなかった。

その悔しさも晴らせたらいいな。その上で、初出場なので“挑戦者”ということを忘れず、思い切って演技をして、いろいろな爪痕を残していきたい」

異次元のマリニンに衝撃

三浦の一つ上には、フィギュア界の歴史を塗り替え続けているアメリカのイリア・マリニンがいる。

自身を“4回転の神”と呼ぶマリニンは、6種類全ての4回転を操る。

年齢も近いことから試合以外のところで、三浦とマリニンの交流もあったそうだ。

6種類の4回転ジャンプを操るイリア・マリニン
6種類の4回転ジャンプを操るイリア・マリニン

「イリア選手は、ベースの点数がとんでもなくおかしい。普通の人が前半にやったり、もはや、やらない人もいるぐらいのレベルのものを後半に入れてきたりする。

演技構成点(PCS)をしっかり出してくるのは大前提。

なので、4回転を最低4、5本、全てを完璧に着氷させて、トータルで優れた演技をしないと、もう絶対にムリ!ムリしてもムリかもしれないレベルの点数なので…」

それでも、三浦はこれからもマリニンとは戦い続けるため、彼に挑んでいくと意気込む。

「彼とは同年代なのでこれからずっと共にやっていく。

いずれは追いつき、追い越していかないといけない。そのためにちょっとずつ、技術的なこともプログラム全体も彼に追いついて、追い越して。

追い越さないと永遠に勝てないまま終わってしまう。少しずつですけど、頑張っていけたら」

同世代のマリニンらトップ層との距離を感じると語る三浦
同世代のマリニンらトップ層との距離を感じると語る三浦

今シーズン、三浦が出場した2度目のGPファイナル。

マリニンはルール上にないショートで4回転アクセルを投入したことも、三浦は衝撃を受けたという。

「いや、もう、その日の朝の公式練習で、アクセルの構えを2回している時点で、『あ、やるな』って思いました。実際にやって成功させていることも、いきなり大舞台で初投入、初成功というのも、ものすごいこと。

本当に異次元!4回転に関してはもう異次元。そして何気なく、フリーでも、軽く4回転ループを、しれっと入れていたりしていて。もう、どんどん上にのぼっていっている印象がある。

でも今は、“今すぐ勝ちたい”と思わずに、自分のペースで行くしかない。ムリしたら自分がケガをしてしまうので、徐々に彼に追いついていきたい」

勝負のため4回転フリップへ

世界選手権まで1カ月を切った2月後半、取材に応じてくれた三浦は、表彰台に立つべく、4回転ジャンプを変更することを明かした。

年が明けて2024年は、インターハイや国体にも出場していた。

氷上練習の準備をする三浦
氷上練習の準備をする三浦

「年末の全日本からジュニアの試合もいろいろやったりしていて、少し調整も難しい期間が続いていた。

ここ最近はいい調子で滑ることができていますし、世界選手権なので、なんとしてもピークを合わせていきたい」

全日本を終えてからの2カ月、プログラムに乱れがないようにすることと「4回転フリップ」の練習を重点的にやってきたという。

世界選手権を見据えて4回転フリップに変更した三浦
世界選手権を見据えて4回転フリップに変更した三浦

これまで構成に組み込んでいた4回転ループを、4回転フリップに変更した理由を三浦はこう語る。

「しっかり決まれば、フリップの方が安定しそうだというのが大きな理由です。ループは会場に行ったら跳べるけど、練習で跳べないという状況が続いていた。

だったらフリップの方がって。ループは抜ける怖さもありますが、それに比べてフリップは思いっきり跳べる。

気持ちの方も楽だしそうしようということで、フリップを練習しています」

ジャンプの練習に励む三浦
ジャンプの練習に励む三浦

公式戦でまだ決まったことがない4回転フリップだが、リスクがあるループをフリップに変えることが上位を目指す秘訣だと話す。

「世界選手権は(4回転が)4本ないとキツいかなって。安定した3本で滑ることも戦略の1つだと思いますし、4本ということもまだ確定しているわけではない。

でも4本をしっかり決めて滑ったら、もっともっと上が見えてくるかもしれないと思いました」

演技で世界を見返したい

そんな三浦は、初の世界選手権に向けて、期待を裏切って世界を「あっ!」と言わせたいと野心をむき出しにする。

「出るからには自分もどんどん勝負していきたい。

1つの目標があった方がいいと思うので、表彰台を僕も目指していきたい。でも今、僕が『表彰台を狙います!』と言っても100人中99人から絶対に笑われると思う。

なので、世界選手権でそれを払拭させるくらいの演技をして、これで表彰台に立てても立てなくても、目標としては間違っていなかったと思わせるような演技がしたい」

「カナダを盛り上げたい」と三浦は闘志を燃やす
「カナダを盛り上げたい」と三浦は闘志を燃やす

「自身の演技で世界を驚かせたい」と話す三浦は、フリー『進撃の巨人』についても語った。

「最近アニメも終わって、いいタイミングで使ったなって思っています。

有名なマンガだと思うので、カナダを盛り上げていきたいです。

カナダをも突っ切って、日本まで届くくらいの勢いで突っ走っていきたい」

「失うものはなにもない」という三浦、見るものを圧倒させる演技で世界を驚かせてほしい。

世界フィギュアスケート選手権2024
3月22日(金)男女ショートよる7時~
3月24日(日)男女フリーよる7時~
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班