王者中国をあと一歩まで追い込み、パリオリンピック出場権と銀メダルを獲得した卓球女子日本代表が26日、帰国会見に臨んだ。献身的なアドバイスで「まるで監督」とSNS等で話題になった伊藤美誠選手は「応援の力は日本が勝っていた」「初めてコーチや監督になった感覚も感じた」と振り返った。
世界ランキング2位の日本は、大会6連覇を狙う絶対王者中国と決勝で激突し、第5試合にまでもつれる大激闘を繰り広げた。エース早田ひなが東京五輪の金メダリスト・陳夢を破り、平野美宇は世界ランク2位の王芸迪にストレート勝ち。第5戦では15歳の張本美和が登場したが、陳夢に1-3で逆転負けし、53年ぶりの頂点には届かなかった。
王者をあと一歩まで追い詰めた日本代表の奮闘は、世界に衝撃を与えた。
また今大会には、パリ五輪の代表選考争いで惜しくも落選した伊藤美誠選手も出場。ベンチから選手に的確なアドバイスを送り、叱咤激励する姿が中継映像で流れると、SNSには「美誠ちゃんがアドバイスしているの胸熱」「いろんなことを言われても笑顔でアドバイスできるあなたはカッコいい」「伊藤美誠監督」などの書き込みが殺到した。
伊藤選手は26日の会見でその点について聞かれると、「選手が集中しすぎていて見えなくなった部分などを第三者目線で選手に気付かせる事があった。アドバイスというより、コミュニケーションが取れていた」と振り返り、最後は選手に任せる前提で、選手の選択肢を広げる視点を伝えることを意識していたと話した。また、「初めてコーチや監督になった感覚」も感じたという。
アドバイスを受ける立場だった張本美和選手は、「新たな視線でアドバイスを頂いた。心強かった」と振り返った。
また平野美宇選手は、「伊藤選手は同い年ですけど、世界でもトップ級に頭の回転が速い選手だと思っている。その意見を聞いて最後まで中国選手とも戦えた」と話した。
エースの早田ひな選手が、「美誠の要求は『きついな~』と思うくらいで、一本一本のラリーで『次ここ』『次ここ』と言ってくるくらいで。でもそのレベルじゃないと勝てないというのも分かっていますし。それを共有しながら言えるのが同級生ならではの良さ。試合でそれができた時には、『やるやん』みたいな感じでグーサインだしてもらった」とのエピソードを披露すると、伊藤選手が笑い出す場面もあった。また、女子団体の渡辺監督が伊藤選手のアドバイスを受け入れたからこそチームが完成されたと評価した。
伊藤選手自身も、「いつも、ベンチでも中国対日本で応援していると、中国に負けているなと言う部分があったんですけど、今回は中国を圧倒できるくらいの応援の力がすごくあったかなと思う」とベンチの様子を評価。
「中国人選手の顔が、初めて見る顔をしていた感じでした。日本人が圧倒できているなと思える瞬間がすごくあったので。応援の力は今回日本人が勝っていたかなと思うので、本当にあと一歩だと思います」と振り返った。
ベンチで試合を見つめた今回の経験について、「今回ベンチで、沢山の選手の試合を見る機会があって、とても勉強になりました」「他の選手の試合を見てこんなに気合いが入ったことは本当に初めてだったので、他の選手の試合をみて、本当に、ああ凄いなと感動したなと思う瞬間は今回初めてで、そういう体験を今回させていただいて、自分自身も、負けじと頑張ろうと思えるようになりました」と振り返った。