宮城県教育委員会は県内の県立学校に勤める59歳の男性教師が2020年6月から10月にかけ、30代の女性教師にパワーハラスメント行為を行い、女性教師が自殺したと発表した。男性教師への処分内容は「停職3カ月」。「処分内容が甘いのではないか」という記者の指摘に対し、県教委は「他県の例や県教委の処分基準に従ったもので妥当だ」と説明した。
執拗に追い詰める態度で問い詰める
県教委によると、県立高校に勤める男性教師(59)は、2020年6月2日、学校内での会議で、30代の女性教師に対し業務の進捗状況について、執拗に追い詰めるような態度で問い詰めた。
この記事の画像(6枚)このことを受け、学校ではこの日以降、両者の間の業務上の伝達は直接のやりとりではなく、メモ紙を介して行うことが決められた。
しかし、男性教師は7月31日には自分を避けていると感じることへの不満をつづった手紙を女性教師の机の上に置き、その後、校長から、手紙もメモ紙も出すことも止めるよう指示を受けたものの、行為を継続。メモ紙には女性教師を非難するような内容のものも含まれており、10月22日に机上に置いた手紙には、「仕事は一切お願いしません。会議にも出ないでください」などと書かかれていた。
翌10月23日、女性教師は学校に姿を見せず、この日に自殺したとみられる。
これまでに女性教師のもとには10数枚のメモ紙と2枚の手紙が届いていたという。
自殺に追い込み…処分は「停職3カ月」
女性の自殺から3年4カ月が経った2024年2月2日、県教委は男性教師の処分が決定したとして事案を公表。
県教委の佐藤靖彦教育長は「1人の大切な職員を失ったことに対し、慚愧(ざんき)の念に堪えない。ご遺族には心からおわびを申し上げたい」と謝罪し、続けて「教職員のパワハラに対する認識や理解が欠如していただけでなく、組織としての対応も不十分であったと認識している。このような痛ましい出来事を今後二度と起こさないという強い決意を持ってパワハラの防止に取り組む」とした。
しかし、会見で質問が相次いだのは、「停職3カ月」という男性教師への処分内容だ。
「処分が甘くないか」という指摘に対し、処分内容について県教委は「他県の例や処分基準に従った。自死という結果も重くみて判断した」とし、「妥当な処分と考えている」とした。
県教委の処分基準は
県教委の処分基準は県のホームページにも掲載されている「教職員に対する懲戒処分原案の基準」にて、不適切行為、刑事事件関係、飲酒運転・交通事故関係、ハラスメント関係など、様々なジャンルにごとに定められている。
内容を見ると、パワーハラスメントの欄には「停職,減給又は戒告とする」と記載されており、パワハラが免職の基準とはなっていないことが分かる。
基準に免職が含まれているのは「正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた場合」「故意により職務上知ることのできた秘密を漏らし,公務の運営に支障を生じさせた場合」「公金・公物を横領,窃取又は詐取した場合」「殺人・放火」「悪質なセクシュアル・ハラスメント等」などだ。
佐藤教育長は「基準を今後変える必要性」について問われ、「検討を続けていきたいと思っているが、現時点で処分基準を変えることについて決まったものはない」と明確な回答は控えた。
男性教師「非常に残念」 3カ月後に復帰へ
県教委によると男性教師は、停職期間を終えた後は教育現場に復帰する見通しで、女性教師の自殺について「本当に残念です。この度の一件を教訓として、教育公務員としての自覚を持ち行動することを再確認し、私自身このようなことが二度とないように決意している」と話しているという。
県教委は「パワーハラスメントにより教員が自殺し、県教委が処分するのは今回が初めてだった」と明かす。
県教委は2月13日に臨時の県立学校長会議を開催し、服務規律確保などについて学校長に周知する方針だが、「今後二度と起こさないという強い決意を持ってパワハラの防止に取り組む」と話す県教委の更なる対応に注目が集まる。
(仙台放送)