宮城県内の県立学校に勤めていた女性教師(30代)が同僚の男性教師(59)から、パワーハラスメントを受けた後、自殺した問題で、宮城県教育委員会が男性教師を「停職3ケ月」の懲戒処分としたことについて、報道陣から疑問の声が相次いだ。「パワハラ」と「自殺」の因果関係を認めながらも、なぜ最も重い「免職」ではなく、「停職」の処分になったのか。専門家は「時代に合わせた基準改定の必要性」を指摘する。

同僚からの執拗な「パワハラ」で...女性教師"自殺"

 この問題はおよそ4年前にさかのぼる。2020年6月、県北の高校に勤めていた59歳の男性教師が、学校内の会議で、30代の女性教師に対し、業務の進捗状況を執拗に問い詰めた。女性教師から相談を受けた学校は、2人の業務上の伝達を「メモ紙」で行うことを決めたが、翌月に男性教師は、「自分を避けるような態度」への不満をぶつける手紙を女性教師の机の上に置いた。

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 その後、校長から、メモ紙や手紙を出すことをやめるように指示されたものの行為を継続。10月には「仕事は一切お願いしません」などと書いた手紙を机に置いた。

 その翌日、女性教師は学校に姿を見せず、この日に自殺したとみられる。

「停職3カ月」問われる処分の妥当性

 女性の自殺から3年以上。県教委が下した処分は「停職3カ月」だった。

「教職員に対する処分原案の基準」7ページにわたって処分の基準が書かれている
「教職員に対する処分原案の基準」7ページにわたって処分の基準が書かれている

 今回、処分を下す際に県教委が基準としたのが、2012年に定められた「教職員に対する懲戒処分原案の基準」

 不適切行為、刑事事件関係、飲酒運転など、分野ごとに処分の基準が定められていて、このうちパワハラは、「停職、減給または戒告」とあり免職の基準ではない

パワハラについての記載がある欄。免職とは書かれていない
パワハラについての記載がある欄。免職とは書かれていない

 一方、停職処分は「最大12ケ月」まで課すこともでき、2月2日に行われた会見では、報道陣から「処分の妥当性」を問う声が相次ぐ中、県教委の佐藤靖彦教育長は「基準を今後変える必要性」について、「対応については検討を続けていきたいと思っているが、現時点でいつ処分基準を変えるかは決まったものはない」と明確な回答は控えた。

ここ10年で生まれた規則 「時代に合わせた規定改定」を

 教育現場のコンプライアンスに詳しい、日本女子大学の坂田仰教授は、今回の処分について「宮城県教育委員会の処分規定に則ったもので、規定の限界として致し方ない」と話す。

 一方、坂田教授によると、パワハラに対する規則はここ10年で生まれたものが多く、免職を含む厳しい処分を可能としている例もあるが、重くても「停職」という自治体が多いのが実情だという。

日本女子大学・坂田仰教授
日本女子大学・坂田仰教授

 その上で、「パワハラに対する社会的非難が非常に高まっているから、今回の事案をきっかけに宮城県教育委員会が規定の改定を行う、その方向性は検討に値すると思う。頭では理解していると思うが、『この程度ならまだいけるんじゃないか』と、昭和や平成の感覚が残っていて中々そこから抜け出せない管理職が多い。この意識のギャップを埋める研修や対応が至急必要になるのではないか」と時代に合わせた基準の改定と、パワハラを防止する立場にある管理職の意識改革が必要だと指摘する。

 2月13日には臨時の県立学校長会議が開催される予定で、県教委の今後の対応に注目が集まる。

(仙台放送)

仙台放送
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