若い世代で増加する「スマホ内斜視」

スマートフォンなどを長時間・近距離で使用することによる目への影響が、若い世代で増加している。スマホなどを長時間使うことによって視力の低下だけでなく、片方の目が内側に寄る「内斜視」になってしまう人も増えている。眼科医にその原因と予防方法を聞いた。
デジタル機器は小学校の授業でも

いまや生活に欠かせない存在のスマートフォンやパソコン。子供たちも例外ではない。
夏休み前のある日、仙台市立上杉山通小学校の4年生の教室では、パソコンを使って授業が行われていた。
全国の小中学校では、文部科学省が進めるGIGAスクール構想の一環で、1人1台デジタル端末が支給されている。上杉山通小学校でも、毎日、それぞれの学年でデジタル機器を使用した授業が行われ、宿題もデジタル化が進んでいるという。授業のなかでは、教師が子供たちの画面をロックして、目を休める時間を作る対策も行われていた。

授業を行う教師は、画面に近づきすぎないように声掛けをしたり、目を休ませる意味で画面をロックするなどの対策をとっているという。
「視力も落ちてしまった」デジタル機器で学習する弊害

学校だけでなく、家庭内での学習でもタブレットなどを利用する機会は多い。
街の声をきくと…
・タブレット学習も併用していたが、視力も落ちてしまったので、今はあまり触らせないようにしている
・目によくないというのは聞いていました。スマホより、絵本、おもちゃで遊んであげる時間を増やした方がいいのかなと思う
「近視の子は増えた」眼科医の指摘

デジタル化が加速する現代において、子供たちの目に異変が起きている。眼科医は、コロナ禍以降、2つの症状が若い世代で増加していると指摘する。
荒井西おおとも眼科 大友孝昭院長:
やはり近視の子は増えたなと。コロナ禍のときにどうしても外遊びができなくなってしまい、スマートフォン・ゲームも進化して、近くを見る作業が増え、一気に近視が増えてきたのではという印象はある。

文部科学省が調査した幼稚園児から高校生までの裸眼視力1.0未満の割合を見ると、小学生以上は年々増加傾向だ。2024年は、小学生が36.8%、そして、中学生は60.6%、高校生は71.6%と、中高生は3人に2人の裸眼視力が1.0以下となっている。

大友医師は、子供に近視が増えている理由として、環境的な要因のほかに、子供ならではの身体的な要因も大きいと話す。
荒井西おおとも眼科 大友孝昭院長:
子供たちは基本的に手足が短いので、大人が見るときよりも近い距離で画面を見るようになってしまっている。
近視は基本的に完治はなく、どんどん進行してしまうため、いかに早く見つけて食い止めるかが大切。
幼少期など早い段階で近視になると、近視性の黄斑変性症という目の奥の病気や、網膜剥離、緑内障、後嚢化白内障など、別の目の病気も引き起こしやすくなるといわれている。
長生きすればするほど病気のリスクも増えるため、人生100年時代の今、子供たちが大人になったらどうなるんだろうという心配がある。
前触れもなくなってしまう「スマホ内斜視」

そして、もうひとつ増えているのが、急性の内斜視、後天共同性内斜視だ。
内斜視とは、片方の目が内側に寄っている状態のこと。後天共同性内斜視、「スマホ内斜視」とも呼ばれるこの症状は、前触れなく突然なってしまうのだという。

荒井西おおとも眼科 大友孝昭院長:
デバイスが小さく、一点に集中して画面をスクロールすると目線は動かなくなってしまうので、ずっと近くの作業で寄り目になる。モノが二重に見えたり、立体的に見えないといった弊害がある。
完治しない場合も 予防することが大切

そんなスマホ内斜視は中高生に多いのだという。
2025年6月には、日本弱視斜視学会などが若年層の「スマホ内斜視」について、
・2歳まではデジタル機器の使用を控えること
・2~5歳の子供は、家族の注意のもと、短時間の視聴に留めること
などを提言し、注意を呼び掛けた。
大友医師は、スマホ内斜視は完治しない場合もあるため、ならないように気を付けることが重要だと話す。
荒井西おおとも眼科 大友孝昭院長:
きっちり補正することで半分くらいの方は戻るが、戻らない方もいる。注射したり、手術したりということもあり得る。一回なってしまうと大変なので、ならないようにしなければならない。
「スマホ内斜視」にならないためには
大友医師によると、近視や「スマホ内斜視」にならないためには、次のような点に注意して過ごすことが大切だという。

1.屋外活動を増やしたり、部屋を明るくすること。
2.目は画面から30センチ以上離すこと。
3.30分に1回、20秒以上遠くを見るか、目を閉じて休憩すること。
そして、一番の対策は、スマホなどのデジタル機器を連続で利用する時間をなるべく少なくすることだという。
荒井西おおとも眼科 大友孝昭院長:
基本的には見なければ見ないほど良いが、どうしても見る時間は長くなるし、勉強にも使わなくてはいけないと思う。今の子たちは手元の作業しかないからかわいそうだが、積極的に自分で外に出ていく時間を作っていかないと、学年上につれ手元での作業が増えてくるので、子供たちはなるべく連続した時間、スマホやデジタル機器を使用しないことが一番。
必要不可欠なデジタル機器 大人も注意が必要

「近視」も「スマホ内斜視」も若年層で特に増加傾向にあるが、もちろん大人も注意が必要だ。注意点や予防方法は、大人にも同じく有効だという。
デジタル機器は今や生活に必要不可欠なものだが、目を守る行動を心がけていきたい。
仙台放送