2020年に宮城県北部の県立高校に勤めていた女性教師(30代)が男性教師(59)からのパワハラを受け自殺した問題で、宮城県教育委員会は13日、パワハラの懲戒基準に「免職」を加えると表明した。再発防止に向け動き出した一方、男性教師の処分は「停職3カ月」を維持するとしている。
執拗に追い詰め 女性教師は自殺
この問題は2020年、宮城県北部の県立高校に勤めていた女性教師(30代)が、同僚の男性教師(59)から仕事の進捗状況について、執拗に追い詰められるなどのパワハラを受けた後、自殺したもの。
この記事の画像(7枚)宮城県教育委員会は、女性教師の自殺から3年4カ月が経過した2024年2月2日に事案を公表し、男性教師を「停職3カ月」の懲戒処分とした。
この処分の理由について、県教委の佐藤靖彦教育長は2日、「県教委のパワハラの懲戒基準や他県の事例などを参考にした。我々としても今回の事案を重く受け止めて総合的に検討した結果がこのような処分であった」と述べ、「処分は妥当」との見解を示した。
「停職3カ月」高まる批判
しかし、この処分に対して、県民などから県教委に対し否定的な意見が多く寄せられた。
9日の時点で、約130件に迫るという。
こうしたなか、13日に臨時で開かれた県立学校長会議。
冒頭行われた1分間の黙祷の後、佐藤教育長が訓示し「このような痛ましい出来事を今後二度と起こさないという強い決意を持って、パワーハラスメント防止体制を抜本的に見直し、本県の学校教育の信頼回復に全力で取り組む」と述べた。
そして表明したのが、年度内にパワハラの懲戒基準に「免職」を加えることだ。
佐藤教育長は会議終了後の会見で「我々に対する処分基準に対する厳しい声もたくさんいただいた。そういったことも踏まえて処分基準の見直しをすることを決めた」と説明した。
遅れていた基準改訂 知事も指摘
そもそもパワハラの懲戒基準については、同じ東北地方でみると、青森県教委、岩手県教委、山形県教委、福島県教委では、すでに免職が含まれている。含まれていないのは宮城県教委と秋田県教委だ。
13日の定例会見で村井嘉浩知事も「県職員の場合どうなっているのか確認したところ、人事院のルールにのっとり同じ仕組みを作っていて、県職員の場合は(パワハラで)免職ということもあり得る。そういった意味では教職員の対応について、少し遅れていたという捉え方ができると思う」と指摘した。
「停職3カ月」基準変更も問われる妥当性
年度内に県教委の懲戒基準を改訂したとしても、男性教師への停職3カ月という処分が変わるわけではない。
13日の会見では、佐藤教育長に対し改めて男性教師に対する処分の妥当性について問われたが、佐藤教育長は「妥当かどうか、そういう言葉ではご遺族の心情を踏まえると、心情的に苦しい気持ちである。検討を重ねて最終的にこのような結論になった」と明言を避けた。
県教委は臨時の県立学校長会議で、このほかにも①研修の充実②セルフチェックシートの実施③全教員へのアンケート調査④県教委内に「教職員SOS相談窓口」設置などの再発防止策を打ち出した。
「セルフチェックシート」は、自身の行動がパワハラにあたるかどうかを自分自身で振り返るもの、「アンケート調査」は匿名で自身や周辺でそのような行為がないかを記載するもの、「教職員SOS相談窓口」は教職員がハラスメント行為について自由に相談できる窓口だ。
県教委は今回の問題の背景には「教職員のパワハラへの認識・理解の欠如があったこと」「組織的な対応が不十分であったこと」の2点を挙げる。
そうした反省を踏まえ、これらの再発防止策が効果を出すのか。会議に出席した校長は、「風とおしのよい学校を作らなければ」と決意を語った。
絶対に繰り返してはならない。県教委の今後の取り組みに注目したい。
(仙台放送)