能登半島地震の発生からまもなく1カ月。石川県輪島市では倒壊したビルの下敷きとなり妻と娘を亡くした男性が倒壊した自宅で思い出の品を探していた。それは、去年の誕生日に妻からプレゼントされた「時計」。
誕生日に妻からもらった「時計」
倒壊した家屋から何かを探す男性、楠健二(くすのき けんじ)さん55歳。探していたのは、犠牲となった妻と娘の形見だ。
楠健二さん:
「一番ほしいのは時計。去年の誕生日に女房からもらったやつなんだよ。それと携帯だね。写真があるじゃない。携帯って」
自宅兼店舗は7階建てのビルに…
6年前、神奈川県から輪島市へ移り住んだ楠さん一家。この地で、居酒屋を営んでいた。
楠健二さん:
「せっかくいい場所を見つけたんだけど。のんびりしているからこの辺は。都会の、わちゃわちゃしたところじゃなくて、いいかなあと思ってきたんだけど、そしたら、こんなざまだ」
自宅兼店舗だった建物は、1月1日の地震で隣にあった7階建てのビルが倒れ押しつぶされた。
この時、楠さんは妻の由香利(ゆかり)さん(当時48)と長女の珠蘭(じゅら)さん(当時19)、次男と次女の5人で自宅で過ごしていた。
「いろんなことが出来たのかな…」
楠健二さん(1月2日取材):
「ずっと出してあげられていないんだよ、きのうから。女房が、埋められているんだよ」
妻の由香利さんと長女の珠蘭さんが長い間、ビルの下敷きになり、楠さんは救出活動をずっと見守っていたが、助からなかった。
楠健二さん:
「『パパ水ちょうだい』って、何回もあげたよ。俺自体も気が動転してたから、まず誰かを呼ばなきゃいけないって頭しかなかったから。あとあと考えれば、いろんなことが出来たのかなと思うけど。本当に悔しい。だってこうなるんだよ。自分たちが住んでいる所が。想像つかないでしょ」
娘の成人式の前撮り写真が
この日、楠さんは倒壊した家屋からあるものを見つけた。
楠健二さん:
「これ、見つかって良かったよ。これは娘の成人式の、去年、前撮りしたときのやつ」
1月5日に二十歳になるはずだった珠蘭さんの写真だ。
楠健二さん:
「人柄、かわいくてかわいくてね。芸能人にしろって言ったんだけど」
「思い出ってあるじゃん。他人にはわからないやつがあるんだよね。どうしてもやっぱりそれを探したいんだよね」
泣き枯れるまで泣いたけど…
家族で過ごした場所に、楠さんはチューリップを供えた。
楠健二さん:
「戻ってくるときにお花屋さんがあって、チューリップがきれいに咲いてたから。花束みたいな感じだと枯れちゃうから」
「こんなぐじゃぐじゃなところに、今までの生活があるんだよ。泣き枯れるまで泣いたけど、やっぱり悲しいよね」
思い出の品を見つけるまで
地震からまもなく1カ月。
楠さん、今は神奈川県に身を寄せているが、家族の思い出の品を探すため、倒壊した建物に通い続けるという。
楠健二さん:
「時計と携帯、その他もろもろだけど、できる限り持って帰りたいよね。携帯ですごく写真撮っているから、いつも。それが見つかれば昔を思い出せるかな」
「(時計の空き箱の)中身を探しているんだけどさ、やっぱりないんだよね。去年もらったのよ、誕生日に。それだけは見つけたい。是非、見つけたいんだよね」
(石川テレビ)