「舟唄」や「雨の慕情」など数々のヒット曲で知られ、73歳で亡くなった歌手の八代亜紀さん。八代さんと40年以上にわたり公私ともに親しかった友人の小林幸子さんがFNNの単独インタビューで、時折涙を見せながら八代さんとの思い出について語った。
今でも嘘だと…
ーー訃報を聞いた時のお気持ちは
小林幸子:
今も、嘘だと思っています。あり得ないと思っているから、信じられないです…信じたくない。この前も仕事したんですよ。元気だったんですよ。聞いた瞬間は頭が真っ白になって、何も考えられなかったです。
本当に思い出が山ほどあります。一緒にどれくらい一緒に仕事したか…お家にも遊びに行ったし、一緒にご飯食べたし。
ーー出会ってどのくらいでしょう
もう40年以上ですかね。「おもいで酒」の頃だから45年くらいたちますかね。
ーーどんな思い出がありますか
いっぱいあります。一緒に紅白も出場したし、テレビ番組で歌を歌ったり踊ったり、そのお稽古を一緒にやったり。そういうときに、私は日本舞踊やっているけど、亜紀さんは得意じゃないから「幸ちゃん幸ちゃん、教えて」って。「幸ちゃんありがとうね~」ってすっごい、かわいいんです。
楽屋でも、どれくらいごはん食べただろう。大所帯なので、店屋物を頼むじゃないですか。「幸ちゃんのも頼んだよ」って…
自宅にも遊びに行くことがあり、公私ともに時間を共にする事が多かったという二人。画家としても知られる八代さんが、小林さんの肖像画を描いてプレゼントしたこともあったという
小林幸子:
亜紀さんがね、私の肖像画を描いてくれたんですよ。それでね「幸ちゃん、私あまり描かないんだけど、幸ちゃん大好きだから描くね」って言ってくれて。ものすごく嬉しくて。家に持ってかえって、宝物として飾って…それが形見になっちゃった。もう…残念です。 形見になっちゃうとは思わなかったです。こんなに早く、こんな状態になるとは、思わなかったから…
不思議な暖かさ
ーー小林さんにとって八代亜紀さんの存在は大きかった
小林幸子:
大きかったです。年齢がすごく違うというわけじゃないですけど、歌い手として、色々なものを経験してきた先輩ですから。それでも仕事の時はものすごくピッと気合が入る人だけど、仕事じゃないときはいつも「ぽわっ」としている人だった。私の方が年上みたいになって「さっちゃんの方がお姉ちゃんみたいだね」ってよく言っていたんですけどね…
また、素顔の八代亜紀さんについて、こんな話を聞かせてくれた。
小林幸子:
さみしがり屋だからね。家に行っても「遅くなるからもう帰る」って言うじゃないですか。そうすると「もっといてよ、泊まって行きなよ」って必ず言うんです、あの人。人がいなくなるのがいやなの。「泊まって行きなよって言ったって。すぐそこだもんうち」って言うと、「そっかぁ、じゃあまたね」ってさみしそうな顔するの。すごいさみしがり屋。
ーー常に身近にいた存在なんですね
小林幸子:
亜紀さんのこと悪く言う人なんか誰もいない。みんな亜紀さんのこと好きだし、私みたいにたくさんしゃべってワーッとするんじゃなくって、ポワンとしている。それだけでみんなが暖かくなる。亜紀さんってそういう人だから。不思議な暖かさ。和ませてくれる。「幸ちゃん、ちょっと話聞いてよ」ってたわいもない話をして…猫も動物も好きで、本当に何かあったら絵を描いていました。
「宝物の声」歌手・八代亜紀の実力
八代亜紀さんの歌について、同じ歌手である小林さんは、「宝物の声」と表現した。
小林幸子:
「うらやましい」と思う曲をあげるとしたら、絶対に「舟唄」を上げますね。素晴らしい歌…それを素晴らしく歌いきった八代亜紀の凄さだと思います。
亜紀さんに聞くと、すごくどん底の貧乏したりとかの経験まではないそうです。でも歌の世界に入ると、こんなにどん底に生きている女の歌を出せる。それはね…感性というか、あの人が持っている、地獄のような苦しさのようなものをスッと出せる歌の力。あれはね、できないですね。私なんかは。
声自体、声がすでに出来上がっている、一つの芸術的な声ですね。私はそう思います。すごいハスキーなんです。ハスキーなんだけど、金属音みたいなのが真ん中に入る、そういう声なんです。それは練習して出るものではない。持って生まれたものだとおもいます。宝物の声ですよ
「また八代亜紀で生まれてきて」
ーー八代さんに伝えたいことは
小林幸子:
ジャズがすごく好きで、演歌はもちろんのことだけど、ジャズが好きで…歌が大好きな人。だから、もっともっといろんなジャンルの歌をずーっと歌いたかったと思います。やりたいことがたくさんあったと思います。だからまた八代亜紀で生まれてきてください。その時、思い切り違うジャンルでステータス残してください。それだけの人だから、亜紀さん。また生まれてきて!八代亜紀で!と思います。亜紀さんの歌じゃないけど、もう一度会いたいですよ。ご冥福をお祈りしますって言葉じゃかたづけない。もう一度会いたいです。大好きだもん…