歌手の八代亜紀さん(73)の所属事務所は12日、八代さんが膠原病(こうげんびょう)を患い、年内の活動を休止すると公式HPで発表した。事務所によると、8月下旬に体調不良となり、いくつかの病院で診察を行ったところ、膠原病と診断を受けたという。

治療に専念するために活動を休止するとのことだが、そもそも膠原病とは一体どんな病気なのか? そしてどんな治療法があるのだろうか? 膠原病の治療を専門とする、医療法人香川クリニック(大阪・寝屋川市)の香川英生院長に聞いた。

原因不明の発熱や湿疹、関節の痛み

――膠原病はどんな病気なの?

膠原病は全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症が見られる自己免疫疾患の総称です。原因不明の発熱や湿疹、関節の痛みなどの症状が共通してみられます。代表的な膠原病としては、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどがあげられます。

膠原病の代表的な病気である、全身性エリテマトーデス(左)、関節リウマチ(提供:香川クリニック)
膠原病の代表的な病気である、全身性エリテマトーデス(左)、関節リウマチ(提供:香川クリニック)
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――代表的な膠原病はどんな症状が出る?

全身性エリテマトーデスの場合は、37~38℃程度の発熱が出たり、関節の痛みや腫れ、顔や手などの湿疹などがみられます。関節リウマチの場合は、全身の関節、特に手や膝など、よく動かす関節の痛みや腫れが左右対称にみられます。

感染症などが発病の引き金となることも(画像はイメージ)
感染症などが発病の引き金となることも(画像はイメージ)

――膠原病はどうしてなるの?原因は?

発病には自己免疫機能が関わっていると考えられますが、詳しい原因は分かっていません。一般的には遺伝的な要素だけでは発病せず、環境因子が重要と考えられています。風邪やウイルスなどの感染症でしたり、紫外線を浴びると発病の引き金となる可能性があります。食事の内容でしたり、アルコール、たばこなどは、発病とは関係がないと考えられています。

手足の先が白くなりしびれなども

――膠原病を発病すると体にはどんな変化が出る?

冷たい水に触れたときや冬の寒い朝に、手足の先が白く変化し、しびれなどの症状がみられます。これをレイノー現象と呼び、手足の先などの循環障害が原因と考えられます。眼や口の中の渇きや握力の低下、手指のしびれ、爪の変形なども膠原病の重要な兆候であることがあります。

レイノー現象(提供:香川クリニック)
レイノー現象(提供:香川クリニック)

――膠原病になりやすい、年代や性別はある?

膠原病のどの病気かでも変わってくるのですが、女性が多いですね。傾向として、全身性エリテマトーデスは若い女性、関節リウマチは高齢の女性が発病することが多いです。男性が発病するのは珍しいのですが、ならないわけではないので注意が必要です。


――膠原病はどのような治療を行う?

こちらも病気の種類によりますが、一般的には、服薬によるステロイド治療となります。各病状に応じて薬の使用量を決め、通常は少し多めの量から治療を開始し、徐々に減量していきます。使用方法などが難しいため、治療経験が豊富な専門医の指導が必要となります。

ステロイド治療は効果が期待できますが、副作用に注意が必要です。不眠、便秘、脱毛、にきび、肥満などのホルモン作用による影響のほか、長期に服用していると、生活習慣病を併発したり、骨が弱くなるなどの副作用が出ることもあります。

完治は難しいが、安定した生活を送る人も

――膠原病は完治することはできる?

膠原病は残念ながら、現在のところ完治する病気ではありません。ただし、少量のステロイド薬を服用しながら、安定した状態で生活できている患者さんは多くいます。定期的に診察に来られて、服薬をきっちりと行っている患者さんは、仕事や家事も難なくこなしておられます。ただし、服薬を自己判断で中止してしまうと、反動で病状が悪くなることがあります。薬は必ず専門医の指示に従って減量していくことが大切です。

膠原病の患者は紫外線にも注意が必要(画像はイメージ)
膠原病の患者は紫外線にも注意が必要(画像はイメージ)

――膠原病の人が避けたほうが良いことは?

膠原病は安定した状態でも、ちょっとしたきっかけで悪化することがあります。疲労が重なったり風邪をひいたり、日焼けをした後などに発熱や湿疹が出現することあります。直射日光を浴びるのは避けたほうがよいでしょう。うがいや手洗いなどで、風邪を予防することも大切です。



膠原病は完治が難しく、長期的に向き合うことになるようだが、適切な治療で安定した生活を送れる患者も多いという。症状などが当てはまる方は、診察を受けてみてもいいかもしれない。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。