今シーズン、GPシリーズ2戦に出場し「今が一番動ける!」と話すのは、友野一希(25)だ。

12月21日から開幕する全日本選手権で、友野は「アレを目指す」と宣言する。

去年、世界選手権へ出場してから、友野は上を目指す、その目指し方を模索し、大ファンの阪神タイガースの優勝にも刺激を受けたという。

花開いた表現力

去年10度目の全日本選手権で3位となり、悲願の表彰台にあがった。

これまで代打として世界選手権を含む国際大会に派遣されていたが、自力で世界選手権の切符を手にして“脱・代打”を達成した。

2022年の全日本で3位表彰台にのぼった友野
2022年の全日本で3位表彰台にのぼった友野
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その世界選手権のショートプログラムで友野は、世界の強豪がそろう中で実力を発揮した。

ステップシークエンスで、世界最高の出来栄え点をマークしたのだ。

友野は、文字通り“世界一の表現力”の称号を得た。

2023年の世界選手権SPでステップシークエンスが評価された
2023年の世界選手権SPでステップシークエンスが評価された

世界選手権での結果は6位と、目標のメダルを逃す形にはなったが“浪速のエンターテイナー”が世界に認められた評価だった。

「ステップはすごくこだわって練習していて、一つの見せ場でもあるので、それが世界選手権で認められたことが一番うれしかった。クリエイティブな振付をしてくださったミーシャにも感謝です。一番の恩返しだと思っています」と振付師のミーシャ・ジーに感謝する友野。

「“ステップで世界一”ってめちゃめちゃカッコイイなって。なかなかできるものでもなく、がむしゃらに動けばいいわけでもない。

ジュニアの頃、『表現はいいけど…』って言われていたので、それでも評価されるようになったのはすごくうれしい。表現やスケーティングが自信になっているので、苦手なことが得意になったって、なんかいいなって。報われた気持ちです」

“世界一”のステップを今年も磨いているという友野(2023年世界選手権)
“世界一”のステップを今年も磨いているという友野(2023年世界選手権)

その“世界一”のステップは、今年も自信に満ちあふれ、極まっているようだ。

「点数に分かりやすく出やすいわけではないですけど、ただ、めちゃめちゃ極めたら、絶対に認められた時に、すごくグッとくるような、そんなプログラムです。そこの領域にいきたいと思っています」

4回転ジャンプは「ラストピース」

今季ここまで友野はGPシリーズ2戦に出場。第2戦のカナダ大会、第4戦の中国大会ともに4位と惜しくも表彰台を逃す形となった。

「最初から、ぶっ跳ばしていきたかった気持ちはあって、チャレンジャーシリーズから、いい感じできていたので、そのままの勢いでいけたらよかったんですけど。自分の中でGPシリーズ難しいなって思いました」

ジャンプの練習に励む友野
ジャンプの練習に励む友野

「表現やスケーティングは、しっかりと自分の演技をすれば、点数はついてくる自信があって。あとはジャンプだけ。4回転がはまれば点数はついてくると思う。

長年やってきたこと、積み重ねてきたことがしっかり点数にも出ていますし、スケーティングや表現は自信が出てきたので、あとは、ただひたすらにジャンプと向き合っていきたい」

氷上練習をする友野
氷上練習をする友野

その4回転ジャンプを友野は“ラストピース”と表現。

全日本までに4回転を磨き上げているようで「前を向いて毎日取り組んできたので、答えが見つかりました」と手応えを感じているという。

「今が一番動ける!」友野の更なる可能性

友野にとって今年は、11年連続11回目の全日本。

フィギュア界ではベテランの25歳だ。

2022年の全日本のフリー
2022年の全日本のフリー

「毎年、ただ目の前のことをこなしてきたので、気づけばという感じ。もちろんフレッシュな気持ちではないですが、メンバーを見ると、めっちゃ変わったなと思いますね。

ジュニア勢が増えたり、全日本のメンバーがガラッと変わってきて、いつの間にか自分がほぼほぼ1番年上になったのも、すごく考えさせられます」

陸上トレーニングに励む友野
陸上トレーニングに励む友野

鍵山優真、佐藤駿、三浦佳生ら若手の台頭に「想定通り」と話す友野は、ベテランの位置に入っても年齢を感じることは「ない!」と即答し「今が一番動けています」と笑う。

「今一番動ける」という友野は「シンプルに動く量を増やした」と語る
「今一番動ける」という友野は「シンプルに動く量を増やした」と語る

「シーズン序盤は(年齢を)めっちゃ感じていて、『しんどいな』『ちょっと起きるのがつらくなってきたかもしれん』『体のコンディションが…』とか毎日。

でもそれ以上に、ちゃんとやれば動くなって思って。いや、シンプルに増やしたんです、動く量を。今までで一番、1日中、スケートのこと考えていると、意外と今めちゃ元気だなと思うようになりました。

本当にシーズン序盤は心が折れかけましたけど、腹くくってひたすら動かしていると、今一番元気ですね。マジで一番練習できている」

阪神に勇気をもらい「アレ」を目指す

大阪出身の友野は、昔から阪神タイガースのファンだ。

阪神は今年「アレ」をスローガンにリーグ優勝し、38年ぶりの日本一に輝いた。

大ファンの阪神から刺激を受けたと話す友野
大ファンの阪神から刺激を受けたと話す友野

阪神の優勝を受けて友野は「全然違うスポーツですけど、今持っているものを最大限に引き出すことができれば、結果がついてくると真面目に思いました。ずっと見てきたチームだったので、それだけ勇気をもらった感じです。まさか優勝するとはって」と話す。

リンクサイドにはクリスマスツリーが飾られていた
リンクサイドにはクリスマスツリーが飾られていた

そんな友野にとっての「アレ」について聞くと「優勝です」と語る。

「2位や3位が多いなって自分でも思っています。何が足りないって言われたら、突き抜けること、限界を決めずに1番を目指すことって大変ですけど大事。

そういう気持ちでやらないと2位にも3位にもなれない。メダルへの壁が何かって考えた時に、1位を目指すか目指さないかだと思う。本当に、本当に“アレ”しかないなって。

目指すことは悪いことじゃない。阪神は優勝を独自の考え方で目指していたのも面白かったです。あえて口にしないことによって、すごく集中してできていたのかなって。いいアプローチだなって思いましたし、自分のやり方を探していきたいですね」

「表彰台」ではなく「1番を目指す」と意気込む友野
「表彰台」ではなく「1番を目指す」と意気込む友野

去年のインタビューでは「表彰台を目指す」と口にすることが多かった友野だが、自力で手にした世界選手権の舞台での経験と阪神の勝利を受けて、心境の変化があったという。

「表彰台って言っていちゃダメだった。世界選手権もそれは感じて、結局表彰台を目指して5番、6番で。表彰台に立つ選手を見たときに、1番を目指しているか目指していないかの違いかなと思いました。

それぞれに競技の取り組み方は違いますが、メダルが欲しいなら1位を目指さなきゃいけない。人ぞれぞれの目指し方があるので、全員が全員1番を取りたいと言って突き進めるわけじゃないので、自分の目指し方を模索して、考えていければいいなと思っています」

今年の全日本は「アレ」を目指す
今年の全日本は「アレ」を目指す

勝利への捉え方が変わってきたという友野は、11回目の全日本で何を目指すのか。

「いやもう“アレ”1つ、優勝だと思います。去年3位だし、みんなそこを狙っていると思う。目指すのは自由だし、(宇野)昌磨くん、(鍵山)優真くん、(三浦)佳生くん、(佐藤)駿、(山本)草太、みんないますけど、みんな一緒。一緒というか、それぞれの持っているものをみんな出してくると思うので、その中で勝ち切ることを目指していきたい」

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班