昨シーズンの全日本選手権で2位に入り、スケート人生の大きな転機を迎えた島田高志郎(22)。
12月21日から開幕する全日本フィギュアスケート選手権に6年連続8回目の出場をする。
オフシーズンには精力的にアイスショーに出演し、充実した期間を過ごしていた。
今シーズンはフリーでダークな曲調のクラシックに挑戦している島田。スイスを拠点にしているため、シーズンを迎える前に話を聞けた。
全日本に向けて島田は「今年は戦いに行く」と意気込んだ。
アイスショーは「夢のような時間」
身長176センチ、長い手足を活かしたスタイルで魅せ、豊かな表現力に定評のある島田。
昨シーズンの全日本では、フリー演技後に天を仰ぎ、自身最高の全日本2位表彰台をかみしめた。
この記事の画像(8枚)その後、2月の四大陸選手権にも初選出された。
「去年のシーズンを通して、最後が良い形で終われたかというと、そうではないんですよね。
自分の目標は四大陸選手権だったのですが、その時点で終わってしまってはダメだったなと今は反省しています。
世界選手権でトップを狙うようなすばらしい選手たちに近づけるように、気持ちを高めながら日々を過ごしたい」と島田は昨シーズンを振り返り、気を引き締めていた。
オフシーズンは多くのアイスショーに出演し、充実した時間を過ごしたようだった。
中でも『ワンピース・オン・アイス』ではサンジ役を務め、多くのファンから高評価を得た。
例年と違うシーズンを過ごしたことに、島田は「自分にとっては夢のような時間で、『トップで戦ってアイスショーに出たい』と『アイスショーでみせられるようなスケーターになりたい』という思いが小さい頃からあったので、それが実現できたシーズンだったのですごく楽しかったです。充実していましたし、この活力がそのままシーズンに向かっていくなと思っています」と語る。
“憧れ”のステファン・ランビエールコーチに指導を受けるため、2017年に15歳で単身スイスに渡った島田は、アイスショーに出演していた期間、拠点のスイスと真夏の日本の違いに苦戦したようだった。
「めちゃくちゃ暑くて、汗っかきの僕にはきつかったですけど、その分幸せな時間を過ごしていました。
(アイスショーは)楽しさが勝っていました。もちろん、愛媛や岡山といった自分の出身地に近しい場所に帰りたかった思いもあったんですけど、それよりもいろんなイベントに参加させていただいて、ホームシックになる余裕もなく、時間が密に詰まっていた感じでした」
ステファンの熱こもる新フリー
新シーズンを迎え、島田はGPシリーズ2戦に出場した。
第3戦フランス大会では10位、第5戦フィンランド大会は6位という結果だった。
今季のフリーは『Danse Macabre(死の舞踏)』で、ダークな曲調のクラシックに挑戦している。
振付をしたステファンの熱を島田も感じ、プログラムを作り終えた後には、彼から「きついプログラムを作ってごめんね」と言われたという。
ただ「次のシーズンはこんなプログラムをやりたかったと思っていた思いが実現されていたので、難しい挑戦になると覚悟していますが、このプログラムを魅せられる日本人はレアなんじゃないかなと自分でも思っています」とプログラムへの自信を語る。
「(『死の舞踏会』が)今までと一番違うと思うのは、密度です。
“トランディション”はスケーターにとっては聞き馴染みのある言葉ではありますが、ジャンプとジャンプの間に詰め込まれる表現の要素、ステップの要素が今まで以上に多くなっているなと感じます。それによってジャンプのタイミングが変わってきたりします。
見どころとしては、今までのプログラム全部そうだったんですけど、一つのプログラムを通して、特別な世界観を作ることができるようなスケーターになりたいと思っていて、そこはずっと大事にしたいです」
島田は去年の全日本後に「自分の足りないピース」を探し、それを埋めるためには「クラシックの曲調」だと考え、今シーズンのプログラムにつながったと振り返る。
「新しい姿を見せたい思いはすごくあって、去年の全日本を終えてから、新たな自分のスタートというか、自分に足りないものを常に探してしまうタイプなので、その足りないピースを埋めるにはどうすればいいのだろうと考えて。
そのときに『クラシックな曲調を出したい』という願望があって、それが今実現できていることがすごくうれしいです」
自分の気持ちより技術や表現で挑戦
島田は“スケート愛”を表現していくことは、変わらず続けていきたいと話す。
「今までも“スケートが大好きなんだ”という気持ちをプログラムを通して伝えられたらと言っていたんですけど、今回はそれよりも、スケートの魅力を詰め込んだプログラムになっていると思っています。自分の気持ちが優先ではなく、技術や表現というもので挑戦していきたい」
現在22歳の島田は、今季大学ラストイヤーの節目のシーズンでもある。
同世代のスケーターが人生の進路を考える中、島田は「まだ長く頑張っていきたい」とうなずく。
「少し言い方が大げさになってしまうかもしれないですが、夢を諦めた瞬間、その夢を追い続けたいという瞬間がスケート人生でいくつかあって。
そのときの思いを重ねたときに、その夢を追い続ける、新たな夢を見つける瞬間はいろいろな感情がうごめいたり、自分の感情がすごく左右されると思います。
自分は社会人やスケートから離れて頑張っていくというマインドは持っていない。それでもみんな同じ時期に迷いと葛藤を経て頑張っていくと思うので、その姿を力の源として自分の背中も押し続けたい」
「僕はただただスケートとずっと寄り添いながら、ずっと歩いているだけです。覚悟というよりもただただ好きなことをやらせてもらって、続けさせてもらっているだけ。
良いことばかりではありませんが、それも含めてスケート人生。自分の人生にも一番必要な経験だと思っているので、結構今が一番のびのびした時期かもしれないです」
その島田は、去年躍進のきっかけとなった全日本に確かな目標を持って挑む。
「もちろん表彰台を目指して、世界選手権代表を目指して、今年は戦いにいきたいです」
全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
FODで全選手・全演技LIVE配信