合格率は1%を切るという剣道の最高段位「八段」に合格したのは中学校の教諭。日常的に稽古をする警察の特別訓練員OBの合格者が圧倒的に多い中、自宅に小さな道場をつくって稽古に励み、夢を実現した。

教諭では少ない剣道八段

どっしりとした佇(たたず)まいに圧倒される気迫と声。つわものぞろいの剣士たちに稽古をつけているのは、教士八段の北原哲也さん(52)。

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教士八段・北原哲也さん:
佐賀県に生まれ、これまで育ててもらったさまざまな剣道が求める人間形成の価値を少しでも伝えたい

2023年8月、最高位の八段審査に合格した。八段の域に達するのは、警察官で日常的に稽古をする特別訓練員のOBが圧倒的に多いが、北原さんは中学校教諭。2022年まで上峰中学校の校長を2年間勤めていた。

9月には、北原さんを含めた三養基高校出身者の祝賀会が開かれた。

三養基高校の同級生:
(北原さんは)キャプテンをやっていた、3年間。同級生・下級生を引っ張ってくれた

教え子:
すごく熱心な先生だった。最後まで諦めない気持ちを教えてもらった

今のみやき町で生まれた北原さんは小学3年から剣道を始めた。強豪の三養基高校、中央大学で研鑽を積み、大学4年生の時には団体日本一を経験。その後、神埼中学校で監督も務め、全国教職員大会・女子個人戦で日本一となった教え子もいる。

八段の合格率はわずか0.5%

北原さんの教え子・山村貴恵さん:
今回、735人受けて4人、0.5%の合格率。そこを突破することがすごい

初段から八段まである、剣道の六段・七段の合格率は10~20%台に対し、七段取得後10年の修行を経た46歳以上の者にだけ与えられる八段の合格率は、わずか0.5%。技術だけではなく、礼儀や姿勢・風格などを含めた全体を見て評価される。

佐賀県内には約1,000人の有段者のうち、八段は北原さん含め、7人しかいない。

現在、県の教育委員会で小中学校の校長などに助言をする指導監を務めている北原さん。

職場の部下:
日頃の修練とか剣道に対する思いとか、人間形成というところでも多くの人に認められないといけない

仕事が終わるとある場所へ…。

毎週火曜に開かれる稽古会だ。
六・七段に合格した時期は神埼中学校監督をしていたため、生徒に稽古を付けることが練習になっていた。

しかし教頭・校長となるにつれ、剣道をする機会が減っていた中、2021年、初めて挑戦した八段審査で衝撃を受けた。

北原哲也さん:
自分が精一杯打った技を見事にさばかれた

審査は1次と2次があり、あえなく1次で落ちた北原さんは、帰りの新幹線の中で動画を何回も繰り返し見た。

北原哲也さん:
生活もそうだが、やりっぱなしになっていたことが多々あった。1回1回振り返ることの大切さ学んだ

自宅の小さな道場で励んだ稽古

北原さんは剣道の稽古のため思い切って自宅の農機具小屋を改築し、小さな道場を作った。

北原哲也さん:
朝でも帰ってからの30分でも、道場でトレーニングや稽古ができる。時間を有効に使えた

剣道一筋43年の北原さんの背中を追うように、3人の子ども全員が剣道の道に。末っ子の隆磨さんは、2023年、強豪三養基高校の主将を務めた。

三養基高校・前主将北原隆磨さん(18):
お互いにいい活躍できたことはうれしい。自分も父の姿があったからここまで頑張れた

北原哲也さん:
息子が一生懸命、夜遅くまで電気が煌々(こうこう)と照らして頑張っている姿を見ると、お父さんも負けてられない

落ちて自分を見つけなおすため鏡に向かい、姿勢、構え、面打ちなどを日課にし、4回目で8段に合格した。

北原哲也さん:
負けなければいけないことがたくさんあるが、唯一、自分自身には負けたくない

「夢を実現できる環境つくりたい」

剣士として頂点の段位に達した北原さんは、剣道で得た経験を生かしながら、今後、日本や剣道界を担う若い世代や子どもたちに「諦めなければ夢はかなう」ことを伝えたいと意気込む。

北原哲也さん:
教員離れが叫ばれる中、教師の魅力は子どもたちを真剣に育てること。これからの子どもたちが、夢や希望を持って実現できるような環境を作ってあげる

(サガテレビ)

サガテレビ
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