大麻の有害成分に似せて作られた合成化合物「HHCH」が11月22日、指定薬物に追加された。12月2日からは販売や所持、使用が禁止となる。違法薬物に手を出す前の入り口「ゲートウェイドラッグ」ともいわれる“合法大麻”の実態を取材した。

「大麻が合法でできるなら興味ある」

「ニュースを聞いてびっくりしました」と、驚きを隠せないと話す大学生は、2023年11月20日に大麻取締法違反の疑いで逮捕された福岡大学スポーツ科学部3年・能見俊大容疑者(21)の同級生だ。

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警察によると、能見容疑者は自宅で大麻成分を含む植物片、約0.734グラムを所持した疑いが持たれていて、調べに対し「2023年4月頃から使っていた」などと容疑を認めているという。能見容疑者は、けがをきっかけに所属していた陸上部を辞めていた。

能見容疑者の同級生:
部活を辞めてからは学校に来ず、遊んでいることが多くなった。ここまで大麻に手を出すっていう印象はなかったんですけど…。いろいろ重なって踏み外しちゃったのかな

日大アメフト部や早稲田大学相撲部の部員など、大学生の逮捕が相次いでいる。広がり続ける若い世代の“大麻汚染”について福岡の街で話を聞いた。

学生(22):
高校生の時に友達がマリファナ(大麻)を吸って、かっこいいって言ってた

会社員(24):
体に良くないものなんですけど、それが合法でできるなら興味はある

若者が口にした「合法」という言葉。違法薬物に手を出す前の入り口、「ゲートウェイドラッグ」ともいわれる“合法大麻”の実態を取材した。

規制開始も…「HHCH」販売する店

11月21日に九州厚生局麻薬取締部が立ち入り検査に入ったのは、いずれも合成化合物「HHCH」を含むとみられる食品などを販売していた店だ。合成化合物「HHCH」は、大麻の有害成分に似せて作られたものである。

東京や大阪でHHCHが含まれるグミ、通称「大麻グミ」を食べた人が相次いで体調不良を訴えていて、11月22日にHHCHは指定薬物に追加された。12月2日からHHCHの販売や所持、使用は禁止となる。

立ち入り検査が入った福岡市内の店は検査を受け、HHCHなどを含む関連商品の販売を取りやめたという。
しかし、規制が決まった11月22日に、HHCHの取り扱いを堂々と掲げる店舗があった。福岡市中央区の通称、親不孝通りにあるカフェ。その入り口には「HHCH」という文字があった。
規制について話を聞こうと試みたが、現状はおろか、店の代表に連絡を取ることさえ拒否された。

店舗:
取材の対応を会社としてさせていただいていない

ーー「HHCH」の扱いがどうなるのか確認したい

店舗:
メディア対応を一切しないと一貫している

一方、規制がかかる前に、SNSで“大麻グミ”などHHCH商品のセールを行うと売り出していた店には、HHCH商品を求める客が来るという。

HHCH商品をセールしていた店の女性スタッフ:
12月1日までには全て処分していただく

HHCH商品をセールしていた店の男性スタッフ:
SNSで検索して来てくれた人が、こっち(HHCH)を求めてくる感じはある

「ふわふわして楽しい」危険認識なし

若者たちが求めるHHCHとはどんなものなのか。友人に誘われて、電子タバコを使ってHHCHを吸っていたという17歳の少女に聞いた。

ーーどこから手に入れた?

HHCHを吸ったことのある少女(17):
買った、業者から

ーーいくらで?

HHCHを吸ったことのある少女(17):
5,000円!(5,000円で)1カ月、持つ

ーーHHCHを吸った時ってどんな感じ?

HHCHを吸ったことのある少女(17):
なんか、ふわふわする。楽しい、ずっとニヤニヤしてる。タバコより害ないらしいから「いいんじゃない?」って思う

少女は、HHCHは体に合わずやめてしまったが、規制されていない別の大麻由来の成分を吸うこともあり、「危険なもの」という認識は薄いようだ。

未成年も…知人やSNSを通じて購入

さらに、取材班は「プッシャー」と呼ばれる、いわゆる「売人」をやっていたという男性と接触できた。

元売人の男性(22):
いろんな人が買うよ。「やりら系」の人でも買うし、いわゆる界隈民「警固界隈」とか「トー横界隈」みたいな人も買うし、普通に高校生とかも買うし。一番年齢が低い子だったら14歳とか15歳の子も買うし、中学生でも手を出しとる子は多い

店で買うと年齢確認をされる場合もあることから、特に未成年は知人やSNSを通じてプッシャー(売人)から購入することが多く、より効果が強い薬物を求めるようになるケースも少なくない。

元売人の男性(22):
コンビニとかで買うわけじゃないけん、防犯カメラで“足がつく”とかもないから、買いやすいけん、出回りは早いよね。1回吸うだけでは終わらないから。規制がかかってないものをまた作るから、結局それをまた回し始める。多分もう追いかけ追われの繰り返しだと思う

合成化合物は「得体の知れないもの」

薬物鑑定に詳しい法科学研究センターの雨宮正欣所長は、こうした合成化合物は大麻の数十倍の効力があるとして、その危険性は「未知数」だと警鐘を鳴らす。

法科学研究センター・雨宮正欣所長:
医薬品なんかと違いまして厳正な、いわゆる臨床検査とかそういうことは一切行われていないものですから、「得体の知れないもの」という表現が適切

こうした大麻由来の化合物について雨宮所長は、認識そのものを変える必要があると指摘する。

法科学研究センター・雨宮正欣所長:
人造物をグミに入れているので、“大麻グミ”ではなく“危険ドラッググミ”です。むしろ規制されていないものというのは、今まで知られていない未知のものなんだから、規制されているもの以上に危険な可能性がある

次から次に生まれる「新たな大麻」。暴力団など反社会勢力の資金源になっているとの指摘もあり、「違法ではない」「規制外」という甘い言葉に惑わされないよう、より実効的な規制が急務となっている。

(テレビ西日本)

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