10代で妊娠・出産する割合は全国が1.1%に対し、沖縄は2.6%と2倍以上となっている。
沖縄県は、こうした若年の妊産婦が安心して出産に臨めるように一時的に保護し支援するシェルターを、2023年11月に設置した。

また、出産後もパートナーや家族から経済面を含めた支援が得られず、負の連鎖が断ち切れないこともこの問題の根深さだ。若い母親の自立に向けた新たな動きを取材した。

親が子どもに万引きを指示

2023年10月、沖縄県立博物館・美術館の講堂で開かれた意見交換会。
若年の妊娠から派生する問題に対し、いま何をすべきか話し合おうと多くの人が参加した。

この記事の画像(10枚)

きっかけは、2023年に公開された一本の映画だ。

映画「遠いところ」は、17歳で出産をした少女が、貧困や暴力の連鎖にもがく姿を描き、大きな反響を呼んでいる。

およそ200人で埋め尽くされた客席からは、沖縄の厳しい実情が報告された。

小売業を営む男性は、「20年前は中学生・高校生の万引きが目立ったが、いまは小学1・2年生のケースもある」「親が自分の子どもにスーパー・コンビニで商品を取ってきて食べるものを調達させるケースもあり、昭和・平成・令和と歩んできているが、この負の連鎖が全然止まらない」と指摘した。

また、若年の母親だけでなく、パートナーの男性をサポートする社会的枠組みも必要だという声も上がった。

沖縄市で若年妊産婦の居場所を営む県助産師会の女性は、「女性の皆さんは強い。子どもを育てながら、なんとか生活を豊かにしようとがんばっているが、そこにパートナーが出てこない。足をひっぱっていることが見受けられる」「パートナーをどうすればお互いレベルアップできるのか悩みの種」だと話した。

居住先のない妊産婦のための支援施設

意見交換会を主催した、「おきなわ子ども未来ネットワーク」の山内優子代表は、県庁職員として児童相談所など福祉の現場で30年勤務したあと、現在は若年妊産婦に寄り添い、支える活動を続けている。

2021年5月に開設した、居住先のない妊産婦のための宿泊型の居場所「まりやハウス風のいえ」は、これまで14人の出産を見守ってきた。

山内代表は、「家族もいない、いても見放されている」「すでに一人産んでいた子がいて、子どもを抱えておめでたして、子連れでまりやハウスで預かったこともあった」と話す。

「このような支援は行政が取り組むべき」だとして山内代表が県に働きかけた結果、若年妊産婦の保護施設は2023年10月から県の事業として実施されることになり、委託運営は別の団体が担っている。

運転免許を取得させて自立を踏み出させる支援

山内代表は「まりやハウス」の事業を終え、そこから見えてきた新たな課題に取り組むことを決めた。

おきなわ子ども未来ネットワーク 山内優子代表:                                子どもを産み、育てたいと思って地域に出るけど、そこで親子だけ取り残されてしまう。お母さんが自立するために支援する必要があるんじゃないか。まりやハウスを運営したことで次の新たな課題がみつかったため、そこに進むこととなった。

山内代表は、「運転免許がないためにどこにも行けない」「乳飲み子を抱えて、新生児を抱えて何もできない」「若年の母親の自立には運転免許取得に向けた支援が必要だ」と力説する

意見交換会をこども未来ネットワークとともに開催したのは、ホテルや観光施設を展開する企業だ。

KPGホテル&リゾート 田中正男 社長:
観光のひかりが皆さんに、本当に苦しんでいる皆さんに当たるように、私も一生懸命がんばります

田中社長は「若年妊産婦が教育、支援を受けて独り立ちできる施設を、沖縄市内、中部に作りたい」と長期的な事業の展開をみすえている。

おきなわ子ども未来ネットワークの山内代表は、観光業とタッグを組むことで、母親たちが若くても経済的に自立しながら、我が子を守り育てていく未来を描いている。

おきなわ子ども未来ネットワーク 山内優子 代表:
女の子たちが施設で学んで、新しい職場、観光業に就いていくことができる。最終的には自立して生きていく。いろんな業界の人たちとつながっていく方がいいのかなと思っています

資金だけでは不十分 人的な支援も必要

運転免許取得事業については2022年、県の補助金を活用して実施したところ、6人の枠に対し80人から問い合わせがあった。

山内代表は、資金を用意するだけでは不十分なため、教習中に子どもを預かったり、夜型の生活から抜け出すためのサポートも必須のため、マンパワーも不可欠な事業だとしている。

このほか、山内代表は、宿泊や食事の提供、子どもを預かるなどして、高卒の認定や資格取得を支援することも必要だとしている。また、KPGホテル&リゾートの田中社長は、若年妊産婦の自立支援施設を設置して20人から30人を受け入れるとともに、人手不足が深刻な観光業界で働ける人材育成にも繋げていきたいとしている。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
沖縄テレビ

沖縄の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。