11月5日、富山県内最大のマラソン「富山マラソン」が開催され、1万4,000人余りのランナーが、晩秋の富山路を駆け抜けた。参加者の中には、病気を乗り越え残された時間を大切にしようとフルマラソンに挑戦した親子がいた。

“今日が一番若い日”64歳の初挑戦

号砲が鳴り響き、富山県内最大のフルマラソンがスタートした。

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2023年で8回目となる「富山マラソン」には、マラソンと車いす、それにジョギングの部あわせて過去最多となる1万4,646人が参加した。

このマラソンに初挑戦したのは、富山市の杉森久美子さん(64)だ。長女の香織さん(39)にサポートしてもらい、フルマラソンに参加することを決めた。その理由は…。

杉森久美子さん:
「今日が一番若い日なんだよ」と知人に言われた。私たちの年齢になると、健康でどれだけいれるのか考える歳になってきたので、やりたいと思うことや行きたいと思うところなど、“今しないとだめなんだよ”って声かけをしてもらったのが1番のプッシュになった

母「今しないと…」決死の走り

久美子さんは19年前、がんと診断された。その後治療を受け、病気を克服した。

8年前、勤めていた会社を早期退職。日々を過ごす中で、何か、今しかできないことをやりたいという思いが沸いてきたという。

軽快な走りを見せる久美子さんと娘の香織さん
軽快な走りを見せる久美子さんと娘の香織さん

マラソンは、午前9時に高岡市役所前をスタート。杉森さん親子も快調に走り出した。

コースは、富山・射水市の新湊大橋を経由し、富山市の富岩運河環水公園までの42.195kmだ。この日の気温は、25度を超える夏日で、大会が始まって以来、最も暑い中でのレースに体力が消耗する。

マラソン初出場の杉森さんが変調をきたしたのが24km地点だった。娘の香織さんも「大丈夫?」と心配そうに声をかけた。

「大丈夫」と返した久美子さんだが、34km地点で、とうとう足が止まってしまった。

足が止まってしまった久美子さん
足が止まってしまった久美子さん

「今しないとだめなんだ」と心に決め、フルマラソンに出場した久美子さん。再び、少しずつでも前へ進んだ。

コース途中に声をかけられる場面も
コース途中に声をかけられる場面も

ゴールまで、あと2km。富山北大橋の沿道では、友人からの声援が走る力に…。

足が悲鳴を上げ膝に手をついてしまう久美子さん
足が悲鳴を上げ膝に手をついてしまう久美子さん

それでも、疲れ切った足が悲鳴を上げ、また立ち止まってしまった。伴走するボランティアのアドバイスでストレッチをして足の痛みが和らぎ、ゴールまで、ラスト500メートル。最後の力をふり絞る。

母と娘 感動のフィナーレへ

そしてついに…久美子さんと娘の香織さんが手をつなぎ、同時にゴールした。記録は5時間39分58秒。足の痛みに耐えながらもマラソンへの初挑戦をやり遂げたのだ。

ゴールでは、皆が出迎えてくれた。

杉森久美子さん:
途中途中で、友達がいてくれてうれしかった。こんなに苦しいものだとは…。でも娘が励ましてくれるし、声掛けしてもらって力になって頑張れた

杉森久美子さんの長女・杉森香織さん:
母と走れて良かった。いい経験ができた。また母に頑張ってもらいたい

前を向き、やりたいことを成し遂げる。そんな力を杉森さん親子から感じさせてもらった晩秋の富山マラソンだった。

(富山テレビ)

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富山テレビ
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